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軍属のツドラ  作者: いけしょー
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パトロール(1)

 「もー、次のシフト来週って言ってたじゃん」


 近未来的なデザインと設備の基地から出ると、そこは基地とは打って変わってスチームパンク的な街が広がる。技術力に資源と人材が追いついていないからだ。


 「うるせぇ!手柄を挙げろ手柄を!ま、お前の手柄は俺様の手柄だけどな!」


 やっぱその理論おかしいと思うんだよなぁ。


 「あ?なんか文句あんのか」


 口に出てたか。




 パトロールは基本的に四人一組になって街の外壁の外を見回る。

 この世界は地球とは大きく異なり、モンスターがいる。そのための軍だ。…もっとも、人間同士の戦争もあるけど。

 僕達のいるWW-O7都市は砂漠のオアシスに出来た都市で、外壁とガラスの天井に囲まれた安全地帯から飛び出せば過酷な環境が待っている。


 僕とジャン準一等とケイオス二等と僕の同期でもある親友のチャック二等の四人で組を作り、街の北の門に向かった。


 「ゴーグル、防塵服、防塵小銃、コンパス、携行食料、圧縮水。確認したです?」


 「「「おう」」」


 チャック二等が呼びかけた。


 「今日は嵐の日だ。4秒だけ門を開ける。出遅れるなよ」


 ギギギギギギギギィッ!!!


 耳障りな音がなり、ビュオウッと暴風と大量の砂が入り込んできた。


 「行け、行けっ!!!」


 ジャン準一等の掛け声で外に出る。

 高い気圧に耳がキーンとなるが、ジャン準一等の『総員警戒!』の超えに従って周囲を舐めるように見回し、何もいない事を確認した。

 すでに門は閉まっていた。


 「いいか、俺達はここから北に5キロ先、岩の森地点まで進み、そこから弧を描くようにして西門へと帰還する。油断はするな」


 ジャン準一等は仕事のときは本当に真面目になる。ま、映画版ジャイ○ンだ。

 この仕事なら今まで何度も経験している。岩の森だって2桁は行ってきた。

 岩の森周辺はWW-O7都市周辺でモンスターが多い地点だが、そいつらは殆どが弱い。一番強くてもロケットスコーピオンと呼ばれるただ速いだけのサソリだ。どうということはない。



 タタタンッ!!!


 ジャン準一等が小銃を点射した。30m先で眉間を貫かれて倒れているのは野ウサギだ。

 ただし、大きさは3メートルを超える。

 この中でジャン準一等は察知能力がずば抜けて高い。


 「一分で処理するぞ」


 腹を裂き、内臓をかき出し、毛皮を剥ぎ、心臓の横の魔石を取り出す。

 魔石は異能者が喰らうことで力を溜め、異能のグレードアップに繋がる。

 肉と内臓は大量にあるが食えたものじゃないので毒を振りかけて罠にし、毛皮は持ち帰る。

 あまり旨味のないモンスターだ。




 「おいツドラ、ちょっとあれ見てこいよ」


 なんで僕が………。まぁ、あんまり逆らえないしな。それに、ケイオス二等の勘は侮れない。見てこいと言うことは悪い勘では無いのだろう。


 ケイオス二等が指した砂から突き出ている謎の棒に近づくと、謎の棒が白骨化した足であることがわかった。

 昔、まだD2だった頃にも白骨化した死体を見たことがある。あの時は叫んでしまって、モンスターを呼び寄せて班長に怒られたっけな。


 「んー、使えそうなのはナイフと…拳銃に弾6発だけ…か。水も食料もないし、服もボロボロだし」


 2つとも防塵加工がしてあり、劣化はそんなに進んでいなかった。

 こういった死体は大抵旅人のもので、途中で力尽きてしまったのだろう。

 …都市まであと少しだったのにな。かわいそうに。


 死体は砂に埋め、ナイフと拳銃をもって戻る。こういった場合、使えそうなものは貰うのが普通だ。


 「ふーん、それだけか。ツドラが持っときなよ。僕は高級拳銃と高級ナイフがあるからね。」


 「わかった」


 と、そのとき、ジャン準一等から警告が飛んだ。


 「警戒!!2時の方向!」


 全員が揃った動作で2時の方向を向く。5mくらいの大きな影が砂嵐の向こうに見えている。

 人のようなシルエットから予想するに…ゴーレム、か?

 ゴーレムはキラースコーピオンよりは弱いが都市周辺でも上位の硬さだ。


 「距離100…80…50……ッ!なにか仕掛けてくるです!!」


 チャックが知らせた。


 「散開ッ!!」


 全員がその場を離れた瞬間、ゴーレムが投げた岩が着弾した。


 「ツドラは前に出て防御!少しずつ前進しろ!絶対に押し返されるなよ。

 ケイオスは牽制しつつ動きを封じろ!できるな?

 チャックは俺と一緒にアタックだ!かかれ!」


 「「「応!!」」」


 肩の関節から生やした二本の硬化させた触手をタワーシールドのように前面に展開する。

 俺が全力で硬化させた触手は戦車並だ。


 「これでもくらえ!」


 ケイオス二等は高速でゴーレムの足元を走りながら、脆い関節を狙って射撃する。

 ゴーレムに銃は効かないが、関節ならば多少効く。

 そしてケイオス二等の異能は高速移動だ。牽制にもってこいだろう。


 『グォオオオオオン………』


 腹のそこに響くような重低音を響かせ、ゴーレムが殴りかかる。


 「ぐっ…」


 押し返されるな!前に進むんだ!!

 その一心で攻撃を耐え、ジャン準一等とチャック二等の名を呼ぶ。


 「まかせろ!うぉおおおおおおお!!!」


 ジャン準一等の異能は巨大化。自分の身体だけでなく、身につけている物や装備なども一様に巨大化する。体積だけでなく密度も大きくなるためその攻撃力は爆発的に上昇する。


ドッゴォオオオオオオ……!!


 爆砕。その一言に尽きる攻撃だった。ケイオス二等の精確な射撃によって破壊されていた関節の部位を狙って行われたその攻撃は、見事ゴーレムの右腕を潰していた。


 ゴーレムが怯んだその隙に僕は触手を動かして自分を覆うように触手を展開する。外から見れば、地面に半球が置いてあるように見えるだろう。


 「チャック!!!」


 「まかせるです!おらーー!!」


 あいかわらず気の抜けるような声だな。

 チャック二等の投げたダーツはゴーレムに刺さると大爆発を引き起こした。


 「あーあ、お気に入りのダーツが……です」


 チャック二等の異能は価値爆破。自分に取って価値の高い物ほど威力の高い爆発を起こせるという物だ。

 ただし、注意点としては一般的に価値のある物だとしてもチャック二等にとってゴミ同然であれば手持ち花火くらいの爆発しか出ないことだ。


 ともあれ、チャック二等のお気に入りのダーツを代償にゴーレムはただの瓦礫となった。


 「うーん、これじゃあ魔石も取れそうにないね。行こ、ジャン」


 ゴーレムの瓦礫は爆発の威力が高すぎて高熱になっており、近づく事さえできないほどだった。


 「そうだな。岩の森地点まであと1キロだ。気を張っていくぞ」




 戦闘を終えて行軍を再開したが、気配を感じて後ろを振り返る。

 ………あのゴーレム、いま動いた?


 「どうしたです?そんなにゴーレムの死体なんか見て。…あ、もしかして魔石欲しかったです?無理ですよ、あっちくて触ったら大やけどするです」


 「いや、なんでもないよ」

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