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エピローグ
ある、春の日のこと。
俺は石碑の前に立ち止まった。
白い、よく手入れされた石碑だ。周りを見ると似たような石碑がいくつも連なっている。
「リョウ~」
「ん」
俺は振り返った。
「おー、カルマ。それから、えーっと……レイジとドロシーか?」
穏やかな紫色を宿した瞳が、二対あった。
「うーん、風が心地いいねぇ。トランプでもする?」
「レイジ、今日はお墓参りだよ」
ドロシーが諭すと、レイジは影に隠れた。
次に現れた時には、茶色い植物を手に持っている。柳系の花だ。
彼女はそれを、質素な墓に添えた。
やがて、横に立っていたカルマが口を開いた。
「人って、死んだらどこにいくのかな」
カルマらしくない、重苦しい口調だった。
まるで葬列のような沈黙が流れた。吹きゆく風は温かい。
『……地獄じゃないかな』
俺の口を通じて出た、———の声が沈黙を破った。
すると、安堵のため息が漏れた。
「……なら、よかった」