第21話〜物語はまるで鎖のように
今回は短めです。
『…君、ねえ、………』
『ってほんと……みたいだ…ね』
『……、…………』
長い夢を見ていた気がした。
思い出の走馬灯のようなものだったかもしれないし、なんの意味もない記憶の断片だったかもしれない。
この世界に来てからは生きるのに必死で、ほとんど思い出すこともなかった、日常の記憶。
家族との思い出、学校の友達、これまでの人生。
ユウキという人格を作り上げてきた記憶。
ユウキという存在を形作るもの。
追憶はどこまでも遡り、立ち戻り、浮かんでは消えていく。
一度は深く深く沈み込んでいく感覚があった。
まるで自分の存在が消えていくかのような冷たい絶望感。
仄暗い海の底へと沈み込んでいくような…
だが、もう大丈夫だとなぜか分かった。
そして今はゆっくりと意識が浮上していくのを感じている。
最後に見た記憶の断片はなぜかオウルだった。
いくつか見えた断片に映る彼はどこまでも白く、人間味のないほど透き通っていた。
真っ白な灰から生まれ出て、空虚なままに地を這う不死鳥。
そんな漠然としたイメージが、宙を舞う白雪の映像とともに浮かんでは消えた。
あの傷だらけでありながら痛ましさなど一切ない、むしろ年月を重ねた大樹を彷彿とさせる男。
そんな彼の過去には一体どれ程の苦難があったのだろう。
平和な世界をほんの十数年生きただけのユウキには計り知れない。
少しずつ浮上していく意識の中、彼と彼を取り巻く存在に思いを果てた。
ユウキは彼との確かな繋がりを感じていた。
それは混沌の女神に交換された瞳によるものか、それとも……。
彼は目を覚ます。
異世界の地で。
なぜ異世界に転生、いや、転移したのか、その理由も知らず。
これから待ち受ける未来のことなど想像すら出来ないままに。
そしてユウキはいずれ知ることになる。
とっくに物語は始まっていたことを。
そして彼もまた登場人物であり、主人公の一人であったということに。
彼の二つの瞳がこれから何を映していくのか。
それは混沌の女神はおろか、神々ですら確たる答えを出すことはないだろう。
しかし、
幾重にも絡まった鎖の行き着く果て。
バラバラだった物語は再び鎖で繋がれて一つになる。
あくまでこの物語は続きであり、始まりであり、終わりではないのだ。
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