前編第1章 「開会直前 『メイドカフェ ビクトリア』の舞台裏」
ここから、通称「メイドカフェ編」こと、第2話前編が始まります。
※ 挿絵の画像を作成する際には、ももいろね様の「もっとももいろね式女美少女メーカー」を使用させて頂きました。
時は元化25年5月3日。
場所は、人類防衛機構極東支部近畿ブロック堺県第2支局。
通い慣れた支局ビルだけど、今日は少しばかり普段と趣が違うんだよね。
何と言っても今日は、第25回つつじ祭の初日だからさ。
つつじ祭というのは、毎年5月3日から5月5日までの3日間に渡って行われる、人類防衛機構極東支部近畿ブロック堺県第2支局主催の地域交流祭なの。
私達特命遊撃士や特命機動隊曹士の子達が、色々な催しや模擬店を運営して、人類防衛機構の素晴らしさをアピールするんだ。
その目的は、管轄地域住民との交流を通しての人類防衛機構のイメージアップだから、広義の公報活動の一環だね。
何しろ有事の際には、徴発動員や戒厳令が発令される事もあるからね。事態の早期解決と安全確保のためとは言え、住民の皆さんに不自由な思いをさせちゃうのは、私達としても心苦しいんだよ。
だからこそ、常日頃から良好な関係を構築していく事が大切なんだ。
それに、イメージが良い方が志願入隊者も集まりやすいし、特命遊撃士適性者の子達だって気分良く養成コース入り出来るしね。
そういう訳で、堺県第2支局創設の年でもある元化元年に始まったつつじ祭も、早い物で今年で25回目を迎えるんだ。
こうして無事に続けて来られたのも、地域住民の皆さんに支えられての事だよね。
まあ、平たく言えば自衛隊の駐屯地祭みたいな催しなんだけど、そこは女所帯の人類防衛機構。
女子大学とその付属女子校の合同学園祭に近い雰囲気が出ているのが、自衛隊の駐屯地祭との違いかな。
もっとも、特命遊撃士と特命機動隊のOGだけで構成された、所謂「特命自衛隊」の基地だったら、また話は変わって来るけどね。
こうして話した通り、つつじ祭には人類防衛機構と地域住民の友好関係が懸かっているの。
だから、地域住民をホスト役としてもてなす私達の意気込みは、生半可な物じゃないよ。
「いよいよ今日は、つつじ祭の当日です。今日という日を皆さんと共に迎えられた事を、私は誇りに思います。」
第2支局のビル内に多数設けられている研修用教室の1室に集まった私達は、つつじ祭開催直前の朝礼に参加していたの。
今こうして朝礼を担当されている東条湖東加大佐は、南海高野線の中百舌鳥駅と白鷺駅に程近い堺県立大学の経済学部2回生。
茶髪のストレートヘアーが似合う美人さんだね。
「管轄地域住民の方々との信頼関係や堺県第2支局の好感度が、皆さんの一挙一投足に懸かっている事を、決して忘れないようにして下さい。それでは皆さんの健闘を祈ります!」
気合いが入った上官の訓辞をこうして受けていると、ずらりと整列した私達の身も、自ずと引き締まるね。この私こと、吹田千里准佐だって例外じゃないよ。
「はっ!承知しました、東条湖東加大佐!」
とは言っても、こうして一斉に敬礼の姿勢を取る私達にしても、それに答礼する東条湖蘭子大佐にしても、普段の遊撃服や戦闘服じゃなくてメイド服姿なんだから、何とも珍妙な光景なんだよね。
それと言うのも、この第25回つつじ祭における私達の担当部署が、「メイドカフェ ビクトリア」なんだから仕方ないよね。
ちなみに、私を始めとする特命遊撃士は黒いメイド服、特命機動隊曹士の子達は紺色のメイド服に分けられているの。
そうした方が、指揮系統だって分かりやすいからね。