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第二十八話 集結

ローザ・キャバリエーレに戻った一輝は、遠慮するブリジッタに命令して、医務室に行かせた。それから、艦を、司令官権限を使って自動航行モードに移行。艦隊の集結地点へと向かわせる。

 それを確認してから、改めて、医務室へ。

 魔法戦艦の医療システムは、地球軍が保有する宇宙戦艦に比較しても劣ることはない。むしろ、手厚いぐらいだ。

 それは、ブリジッタたち艦橋魔女が、魔法戦艦の一番の要であることを強く意識した設計思想といえるだろう。

 それでも、だからと言って、安心することはできない。

 先ほどの、黒い戦艦の中枢にあったものが何かわからない以上、用心しすぎるということはないだろう。

 通路を抜け、ドアを開けて医務室へ。

 医務室といっても、別に、薬品が並んでいるわけではない。部屋の中央に、ぽつんと医療用のポッドが置かれているだけだ。

 透明な医療ポッドは、なんだかガラスの棺桶のように見えてしまって、ついつい不吉な事を考えてしまう。

 頭に浮かんだ考えを否定するように、中のブリジッタへと目を移す。

 ポッドの中、一糸まとわぬブリジッタが瞳を閉じて、静かに横たわっていた。

 膨らみの見られない胸元、きめ細やかな少女の肌の上を、無骨な検査用のアームが這いまわっていた。

 見たところ、その動きは緩慢で、さほど急を要しているようには見えない。

 モニターに映し出される数値にも異常はない。心なしか、顔色も先ほどより良くなってきているようだ。

 やがて、ぷしゅ、っと空気が抜ける音がして、ポッドの蓋が開く。

「う……ん…………」

 起き上がったブリジッタが、両腕を大きく広げ伸びをして……、それから、ぼんやりとした瞳でこちらを見て……、

「きゃっ、は、鳩ノ巣司令!?」

「大丈夫かい? ブリジッタ」

 慌てて、胸元に手をやった彼女に、一輝は大きめのバスタオルを渡してから、モニターに目を移した。最終的な検査結果は軽傷。触手に絡みつかれた箇所にあざや擦り傷ができたぐらいで、その傷跡もすでに消えていた。

「ええ、ご心配をおかけしましたわ」

 その間に、立ち上がったブリジッタは、バスタオルを体に巻き付ける。ゴムの入ったタイプのタオルを胸元から垂らしたその姿は、スイミングスクールに通っている子どものようで……。だからこそ、その平和な雰囲気と、軍事用医療ポッドを必要とする不穏な事態とのギャップが悲しかった。

「鳩ノ巣司令?」

「いや、すまない。じゃあ、聞いても大丈夫かな、さっきなにがあったのか……」

 敵戦艦の中枢で見たもの、敵の正体、その危険度……。

 子どもたちに対する責任から、知っておくべき必要があるのだ。

「構いませんわ」

 頷き、ポッドのふちに腰を下ろすブリジッタ。バスタオルの裾から、両脚がすらりと伸びる。

「あれがなんなのかはわかりませんが、恐らく、わたくしの魔法力を吸っておりました」

「魔法力を吸う……か。だから、ブリジッタは消耗してた、ということになるのか」

「いえ、少し違いますわ。ご存じのように、魔法は感情をエネルギーとする技術です。ですから、体力を失うとか、そう言った類のものではございません」

「ああ、なるほど……。確かにそうだね、吸われたからって、感情がなくなるというわけではないのか」

 精神的にショックなことがあって、感情を失ってしまうという事はあるかもしれない。けれど、奪われたから感情がなくなるという事は考えづらい。

 既存のイメージにとらわれがちだが、魔法は生命エネルギーのようなものではないのだ。

「じゃあ……」

「先ほど、わたくしがダメージを受けたのは魔法回路に負荷がかかったからですわ」

 そう言って、ブリジッタは指先でバスタオルの裾をめくった。露わになる艶やかな太もも、幼い少女特有のきめ細やかな肌の上に浮かびあがる赤い魔法陣が、ところどころ崩れ、壊れていた。

「それは……?」

「大量の魔力を奪い取るために、回路を無理やりに広げられたせいで、過負荷で断裂してしまったようですわ」

ブリジッタは、そっと自らの太ももをなでながら言った。

「断裂って……、それは大丈夫なのか?」

「はい、別に命の危険がある、というものではありませんわ。怪我、というのとは少し違いますから。肉体的には問題ございませんわ。痛みは、かなりありましたけど……」

 そうつぶやいたブリジッタは、ほんの少し顔色が悪くなっていた。恐らく、先ほどの出来事を思い出したのだろう。

 普段、魔法戦艦と接続するだけでも痛みがあるのだ。それを無理やりに、回路が壊れるまでされたのだから、口で言う以上に痛みがあったのだろう。

「操船に関しても、今のところ大丈夫。ですが、魔力回路の修復は『さつまさん』まで戻らないと無理だと思いますわ」

「そうか……。すまない、無理させて」

「謝ってばかりですわね、鳩ノ巣司令」

 くす、っと小さく笑い声をあげて、ブリジッタが言った。

「わたくしも紗代たちのことは心配ですし、急いで帰るのは当然ですわ。別に無理をしているわけでもございませんから、そんなに心配なさらないでください」

「そうか……」

 強がるブリジッタの頭を軽く撫でてから、一輝は医務室を後にした。


 集結地点についたのは、二時間後だった。

 現在の旗艦であるローザ・キャバリエーレに移乗してきた艦橋魔女たち。先陣を切ってやってきた紗代が、突然、抱きついてきた。

「一輝さん、ブリジッタちゃん! 無事で、良かった……」

 はじめに一輝に抱きついてから、今度はブリジッタの方に走り寄る。

 勢いよく抱きついてきた紗代を受け止めきれずに、ブリジッタが尻もちをついた。

「きゃっ、わっ、ちょっ、さ、紗代、どうしたんですの?」

 戸惑いの声を上げつつも、紗代の頭を抱きしめて、撫でるブリジッタ。

「ちょっ、泣いてますの? 紗代。あなたらしくないですわよ、これしきのことで、オーバーな……」

 ――確かに、ちょっとオーバーな反応だな……。ん?

 ふと、視線を向けると、里香がこちらを見つめていた。彼女にしては珍しく、露骨に安堵の表情を浮かべている。いつも笑みを崩さないミシュリも、今はほんの少し元気がない。

「何かあったのか?」

「ちょっとした戦闘があったのでありょうす」

「ルーフィナさん?」

 さつまさんで待機中のはずのルーフィナまでが、この場所にいる。そのことが、否応なしに、一輝の脳内に警鐘を鳴らす。

「いったい何が……」

「私たちが遭遇した黒い艦隊と第三艦隊が交戦状態に入りました」

 一輝の質問を受けて、ようやくブリジッタから離れた紗代が、目元を指でぬぐってから、

「結果、四割近い損害を出して敗退しました。多数の重軽傷者を出したようです」

「なっ……」

 思わぬ事態に、一輝は言葉を失った。


注意:ここから先は、別に楽しくもないし、作者が書きたい無駄話を書き散らすだけのコーナーです。ということで、読んでも面白くないと思いますが、それでも時間を浪費したい方のみ、どうぞ。

……しかし、本編と同じぐらい長くなってしまった。反省。


SF好きの回顧録 その1


みなさんは、機動戦艦ナデシコという作品をご存じだろうか?

知る人ぞ知る名作だと、私個人は信じて疑わないところではあるのだけど、それでも放映からすでに20年近くがたってしまっていることを考えると、いささか不安を覚えないでもない。

詳しいストーリーなどはwikiを見ていただくのが早いのであるが、その機動戦艦ナデシコには絶大な人気を誇る美少女キャラクターがいた。

その名は、ホシノ・ルリ。

社会現象を巻き起こした、かのエヴァンゲリオンの人気キャラクター、綾波レイと双璧をなす(と個人的に信じる)無表情キャラにして(無表情キャラかは微妙だと思われるが)、カードキャプターさくらの木之本桜と双璧をなす(と個人的に 以下略)90年代後期を代表するロリキャラである。

実際、某雑誌の人気キャラクターランキング女性部門では、1996年から3年間、ベスト3の座を守り抜いていることからも、その人気ぶりはうかがえる(ちなみに、エヴァンゲリオン放映が95~96年春、ナデシコは96年秋~97年、カードキャプターさくらが98年~99年放映らしい。まさにアニメ黄金期!!)


前置きが長くなったが中学時代の私は、このキャラが好きだった。大好きだった。結婚したいとすら思っていたほどだ。

ラジオにルリ役の声優さんである南央美さんが出演して、名セリフ「バカばっか」を言ってくれた時にはしっかりテープで録音して、繰り返し聞いたぐらいには、好きだったのだ。

……えー、若干きもいと我ながら思わないでもないが、96年といえば、私が14歳、中学2年(あれ? 3年だったっけ?)の年……。お察しいただきたい。私も某中二病にかかっていたのだ。そもそもクリエイターって少なからずそう言う面があると思うのだけど、どうなのだろうか。


しかし、言い訳するようでなんなのだが、別にキャラクターだけが好きだっただけではない。

ちゃんと作品自体が…………いや、でもやっぱりキャラは好きだ。ルリルリが好きすぎて、ついつい文庫写真集なるものまで買ってしまったほどだ。資金力とオタク知識がなくって、ほかに自慢できるグッズといえば、ゲームセンターの景品のセル画ぐらいだが。

ともかくそれだけ魅力的なキャラだったのだが、しかし、あえて、そのキャラを考慮に入れなかったとしても、ナデシコには中二男子のスぺオペ心をくすぐるギミックがたくさんあったのだ。

戦艦のメインエンジンである相転移エンジンの仕組みは、よくわからないまでもワクワクしたし、母艦の近距離ならばエネルギー使い放題だが、一定以上離れるとエネルギー供給が切れるエステバリス(ロボット)というのは、万能すぎず、不便過ぎず、ほどほどのところを上手くついていたと今ならばわかる。

ディストーションフィールド(バリア)とか、グラビティブラスト(主砲)とか、もう、名称自体が格好いい。

ともかく、スぺオペっぽいギミックがふんだんに使われた戦艦ナデシコは、幼き日の心をときめかすに十分なものだったのだ。

ナデシコに乗ってルリルリと艦内デートしたいというのが、ラブコメを書く際の原点といっても過言ではないかもしれない――あれ? 戻ってる?

仕方ない。ルリルリは可愛いのだ。

さて、そんな私の夢をかなえるゲームが、実は存在している。

懐かしき名機セガサターンから出た「機動戦艦ナデシコ やっぱり「最後は愛が勝つ」?」である。当時、いろいろな兼ね合いからこのソフトを入手できずにいた私は、攻略本だけ買って、妄想を膨らませていたものである。

その後、ゲームを入手したのも、もはや昔の話なので、セガサターンが壊れてしまった今となっては、いまひとつイベントなどはうろ覚えなのだが、確か海水浴デートとか、温泉イベントとか、一通りイベント押さえてあったなぁ、という記憶がある。

とても、良いゲームだった。

ちなみに、同じナデシコのゲームで、DCから出た方のゲームはガチな戦略シミュレーションゲームで、こちらもやりごたえがあった。レールガンなどの遠距離武装が強かったような記憶がある。DCも壊れて久しい。

(もう一本ゲームが出ているけれど、そちらは未プレイ。でも、総じてナデシコのゲームはできが良かったようである)


そんなラブコメ的にもスペオペ的にも美味しいナデシコが放映されてからすでに20年も経つというのは、なかなか感慨深い話である。


とまぁ、そんなわけで、あとがきという名の無駄話でした。

次回は、せっかくラジオの話が少し出たので、ラジオと関係が深い「ヴェクトライダーズシリーズ、いつか重なり合う未来へ」の思い出とか書こうかな……、と思います。

知ってる人いますかね。。。いなくても書きますけど。

では。


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