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第九話 寝起きの急襲

タイトル的にバトルを想定すると思うが、そうじゃないんだ……

 翌日。

 鳩ノ巣一輝は、定時に目をさました。

 士官学校での寮生活で染み付いてしまった生活習慣か、彼の寝ざめはそれほど悪くない。

 うん、と小さく伸びをして、頭の中を整理する。

「さて……、どうするかな……」

 昨日、リンカーン中佐から投げかけられた質問。その答えについては、ある程度の答えを出しているのだが、さて、どうやって、紗代たちに伝えたものだろうか?

「艦隊運用全体に関わる問題だし、早めにコンセンサスを得ておきたいが……。というか、この艦隊って、どんなスケジュールで動いてんだ?」

 ふいに、疑問が生まれる。

 宇宙艦隊の職務は、大まかに言って二つに分類される。

 一つは、宙域警備部隊としての役割。もう一つは、防衛部隊としての役割である。

 前者は航路の治安維持、いわゆるギャングや宇宙海賊などの犯罪者から航路を守る役割である。どちらかと言えば、軍というよりは、警察の仕事的側面が強い。

 後者は、外敵の侵攻から地球圏を守る、というのが大まかな目的となるが、宇宙軍の戦略構想的には、さらに二つの役割に分類することができる。

 緊急即応軍としての役割と、後詰めの緊急展開軍としての役割である。

 現在、地球が保有する宇宙艦隊は六つである。それぞれの艦隊は、普段、持ち場の宙域の警備にあたっているが、一度、侵攻に晒された際には、もっとも接敵ポイントに近い艦隊が即応軍として時間を稼ぎつつ、その間に近くにいる二艦隊が援軍である展開軍として駆けつけることになっている。

 すなわち、侵攻軍に対しては、即応軍一艦隊と展開軍の二艦隊、合計三艦隊で防衛任務にあたることを基本としているのだ。

 しかしながら、第七艦隊については、その二つは、恐らく当てはまらない。

 試作艦の実験運用艦隊なのだから、主な任務としては魔法戦艦の性能調査なのだろうが、そのための研究員がいない状態では、実際的に動きようがない状態なのだ。

「それはそれで望ましいことなのかもしれないけど……うんっ?」

 起きあがろうと、ベッドに置いた手に、ふにょり、という感触が走った。

柔らかい、けれど、どこか幼い硬さが残った感触、ほんのりとした温もりはまるで、体温のような温かさで……。

「……まさかとは思うけど」

 恐る恐る目をやると、そこには、

「ん……ふぁぅ」

 はじめに見えたのは、ふわふわした、まるで純金で作った綿菓子のような金髪だった。

 豪奢な金髪に彩られた白い肌は、さながら雪のように白く、すべすべしていた。ぷっくりした頬は、ほんのりと、健康的に色づいている。

「確か、ブリジッタ少尉……だったか」

 夢でも見ているのだろうか、長く美しいまつ毛がフルフル震える。

 可愛らしい鼻先を、こしこし、と手の平でこすって、体をギュッと丸める。

 幼い体を包むのは、フリルがふんだんに使われた子供っぽいパジャマだった。胸のすぐ下までシャツがめくれてしまい、白いお腹が露わになっている。

 ちょこん、とした可愛らしいおへそ、その上に薄っすらと、形の良いあばら骨が浮いていた。

 そして、一輝の手は、ちょうどその脇腹の辺りに当たっていた。

 すべすべとした手触り、きめ細やかな肌は幼い艶に溢れていた。

「健康状態は悪くない、ようだな」

 なるほど、確かに、ここの環境は、少なくとも身体面においては、悪くないようだ。有事が起きなければ良好な環境……。飢餓で苦しむ子供たちと比較してしまうと、恵まれているといっても良い環境になってしまうのかもしれないが……。

「にしても……、これは、昨日の続き、ってことなのか」

 一瞬、疑うが……、

「いや、それはないか」

 すぐに首を振る。

 紗代の性格を考えると、仲間を危険にさらしても、というのはあまり考えられない。

 とそこで、唐突にチャイムが鳴った。

「失礼します、一輝さん! ブリジッタちゃん、来てませんか!?」

 ドアの向こう側、少し焦った顔をした紗代の顔が、モニターに映し出される。

「あー、うん、とりあえず、入って」

 ドアを開けると、すぐに紗代が駆けこんできた。

 キャミソールとホットパンツという格好、昨日のパーティーに来ていた時と似たような格好だが、恐らくはこれが彼女の寝巻なのだろう。

「それで、えっと、ブリジッタちゃんが……」

「そこ、ベッドで寝てるよ。ていうか、一応、確認なんだけど、これって昨日の脅迫の続き……、とかじゃないよね?」

「違います! ブリジッタちゃんは、寝ぞうがちょっと悪いだけです!」

「寝ぞうか……」

 なかなか、ダイナミックな寝ぼけ方だな。

 苦笑いする一輝に、紗代が頭を下げる。

「すみません。失礼なことをしたこと、謝ります。ブリジッタちゃん、悪気があるわけじゃないんです」

「うん、まぁ、寝ぼけただけだしね。大したことじゃないから別にいいけど。ああ、そうだ、それより、八時に食堂に集合してもらっていいかな?」

「え? 集合、ですか?」

 不思議そうに、パチパチ、瞳を瞬かせる紗代。

「そう、今後の艦隊の方針について話がしたいと思って」

 その言葉で、紗代の顔に緊張が走る。

「司令は、やっぱり、この艦隊の解体を進言するおつもりなんですか?」

「んー、そうだなぁ。その辺りのことを君たちと交渉しようと思って」

「交渉、ですか?」

「そう。お互い納得できる妥協点があると思うんだけど、なにしろ、俺は君からしか話を聞いてないからさ。だから、みんなと話をしたいんだ。艦隊を解体するかどうかは、それ次第かな」

 息を呑んだのか、ほっそりとした、紗代の喉が小さく動いた。

 やがて、覚悟を決めたのか、真剣な瞳でこちらを見つめてくると、小さく頷いた。

「わかりました。八時に集合します」

「うん、よろしくね」


 紗代と寝ぼけ眼のブリジッタが出て行った後、ふと、一輝は首を傾げた。

「……あれ? だけど、ロックしてあるはずなんだけど、どうやって入ったんだろう……」

想定外に話が動き出すまでが長いな……。

一週間で一話上げようと思うと、推敲が甘くなるのがネックですね。

長編を一本あげるのと毎週少しずつ話を書いていくのは頭の使い方が全然違うんだなぁ、と思いますね。

これも修行か。

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