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雑学系エッセイ【雑学知識・ノウハウもの】

【初級者向け】インターネットで調べもの

 今年に入って、約7年ぶりに「小説」を書きました。その執筆作業の中で実感したのが「便利になったなぁ」という気持ちです。

 多くの書き手の皆さんも同様のはずですが、小説執筆においてはいろいろな事を調べ確認し、それを作品に反映させてゆきます。この「調べもの」が、自分が最も勢いよく(?)執筆活動していた頃(20世紀末……)に比べると、本当に「手軽」になりました。

 インターネットの黎明期から普及期を過ごしたあの頃、「調べもの」は原則として紙媒体。様々な辞書・事典類や図書、雑誌などから必要な情報を得るしか無かった頃です。

 それに比べ現代は、ちょっとしたことなら大概「インターネットで、ちょっとググる」だけで、多くの情報を得ることができます。これは執筆活動においては、非常に便利であり、かつコワイことでもあります。


 「小説家になろう」の書き手さん達には、学生さんを始めとするいわゆる「デジタルネイティヴ」「インターネットネイティヴ」世代(学齢期には既にコンピュータやインターネット利用環境が当たり前であった世代)が多いようですが、自分と同じような「紙からネットへ」の移行期世代もいらっしゃいますね。実体験や経験知識、既存の学習知識だけでは十分発揮できない創作活動。これを支える「調べものにちょっと便利なモノ」を、その特徴を中心に紹介したいと思います。


 なお、この文を記している土台は、仕事で作成した「初学者用・調べものガイド」で、それを応用しました。(業務で大学生などの初年次生向けに「基本の情報検索・リテラシー指導」を担当していたりする)

 若い皆さん(特に高校で「情報」の授業があったような世代)には当たり前すぎるものがほとんどだと思いますが、少しでも「へえ~~」と思っていただけたら、職業冥利にもつきます。




■「ことば」や「ものごと」を調べるツール■


 ちなみに発音では同じとなる『辞典(じてん)』と『事典(じてん)』の違いをご存じでしょうか?


 単純に『辞典』は「ことばの意味や用法」を、『事典』は「ことがらの意味」を調べるためのものです。

 (他に『字典(じてん)』もあります。これは「文字(漢字)の意味や用法」を調べるものです。私が生息する分野においては、発音上の誤りを避けるため『辞典』を「ことばてん」、『事典』を「ことてん」、『字典』を「もじてん」と発声します。『辞典』と『事典』を合わせて「辞事典類」とも称します。豆知識)


 ユーザページの右下にも「辞書」として複数のリンクがあります。現代では多くの辞事典類がデジタル化されており、紙の辞事典を利用する機会はずいぶん減りました。検索が早く確実なデジタル辞事典は、大変便利です。ですが、多くは「元」となる紙媒体のものがあり、それらが収録対象とする範囲や説明文の内容はそれぞれ異なります。

 以下では、代表的でありインターネット上で無料利用でき、かつ「小説執筆などの調べものに向く」ものをいくつか、その特徴を紹介します。



 まず「ことば」を調べるための『辞典類』。

 ユーザページにリンク紹介されているものは「goo」「Yahoo!」「エキサイト」、それぞれのサーチエンジンが提供する辞書機能ですね。ですが結果で示されるモノは、各サーチエンジンが作成するデータではなく、全て別の辞事典類データベースからの総合・横断検索です。

 例えば「goo辞書」における国語辞典は『デジタル大辞泉』(小学館)、「Yahoo!辞書」は『デジタル大辞泉』と「大辞林」(三省堂)、「エキサイト辞書」は『大辞林』です。


 ネットで無料利用できる辞事典類は、結構種類が少なく、これらを組み合わせたサービスが多様にある、という現状です。

 よって、小説執筆のように「様々な表現や語彙、語義を知りたい」場合には、複数の辞事典類の結果が表示されるサービスを使われることをおすすめします。


 そんな中での基本形となるのが、『コトバンク』と『Weblio』です。(Weblioはユーザページリンクにもありますね)

 これらはググったりした際にも上位に表示されるので、使いこなしている方も多いとは思います。

 この二つ、「辞典」だけでなく「事典」も含めた総合的な調べものツールですが、次のような特徴があります。


 まず『コトバンク』(https://kotobank.jp/) ※なお『Yahoo!辞書』は連携しています。

 朝日新聞社主体ですが、講談社、小学館などの出版社がデータの提供を行っています。

 『コトバンク』の強みは「提供される辞書の信頼性の高さとユニークさ」です。

 提供される辞事典類の種類は、後述する『Weblio』と比べると数は少ないです。ですが、長年「信頼性の高い、有用な辞事典」という評価を得ているものが多く、無料ではここでしか提供されていないデジタル事典もあります。特に「事典」の方は、信頼性の高いものが多いですね。

 検索結果は、元の辞事典の種類ごとに表示されますが、「辞典」「事典」ごとにまとめられているので用途によっての使い分けがわかりやすいです。

 ただトップ画面はシンプルなのですが、検索結果が一覧画面はYahoo!のものなので、ちょっと広告などが多く、ごちゃごちゃした感じがあります。(辞事典の項目文の紹介ページはシンプルな方なんですが)


 もう一つの『Weblio』(http://www.weblio.jp/)

 ウェブリオ株式会社が提供する、無料のものとしては最大級の「総合的オンライン辞事典サービス」です。

 『Weblio』の強みは「提供される辞事典類データベースの豊富さ」です。これは、本当に他のサービスにひけをとりません。

 「登録辞書一覧」(http://www.weblio.jp/info/dict_list.jsp)に掲載されている、外部の辞事典・用語リストのジャンルだけでも19種類。実際の辞事典類の数は100近くに及びます。特に専門用語・業界用語に強いのがウリです。

 例えば登録されている辞事典には、官公庁が作成提供するもの(『外交関連用語集』(外務省作成)とか『農機具の種類』(農林水産省作成)とか『和英防衛略語集』(防衛省作成)とか『宮内庁用語』(宮内庁作成)などといった変わり種多数)、各分野の専門団体が作成する業界用語集(『酪農用語解説』(中央酪農会議作成)とか『スペース百科』(JAXA作成)とか)、民間企業などが作成するもの((『刀剣用語解説集』(銀座長州屋作成)とか『世界宗教用語大事典』(中経出版作成)とか)、などなど。様々なものが登録されています。


 その上でのおすすめが、直接『Weblio』を検索するだけでなく、この「登録辞書一覧」を「辞事典類のリンク集」として活用する方法です。

 先の『コトバンク』と比べると、民間作成のものを中心に「説明されている事項の信頼性」は決して高いとは言えません。自己責任で使うにしろ、直接作成者サイトの意図やイメージを掴みながら利用すると、情報の取捨選択にかかる判断材料が増えると思います。

 (辞事典サービスでの結果は、綺麗にまとめられているので、元情報の作成意図などが見えづらいのが残念ですね。その点、直接情報提供サイトから調べるのは、手間はかかりますが、「信用するか否か」の判断はしやすいと思います)


 あと『Weblio』は「類語検索」が強いです。(http://thesaurus.weblio.jp/)

 日本語で「類語」を調べる、といえば32万語を誇る『日本語大シソーラス』が基本ですが、残念ながら有料。『Weblio』は無料で利用できるにも関わらず40万語超の規模を誇ります。ただ『日本語大シソーラス』に比べると、語義定義などが甘いところはありますが、逆に「小説執筆」のように多様性を必要とするケースでは、こっちの方が便利なこともあります。文章表現に悩んでいる時、使ってみてはいかがでしょうか。

 (英語の場合は『Roget's Thesaurus of English Words and Phrases』 これは英文執筆の基本資料ですね。後は「WordNet」。日本語版はWeblioにも導入されています)



 さて、「インターネットで調べもの」といえば避けて通れないのが『Wikipedia』(https://ja.wikipedia.org)ですね。


 いわずと知れた、世界最大規模の「オンライン百科事典」です。特徴は、その仕組みとそれに伴う内容の豊富さと多様性です。

 『Wikipedia』の記載内容は全て「無償ボランティアによる、興味・関心・造詣の深い人々による作成・編集」によって成り立っています。よって、誰がどんなことを書いても掲載されます。当然、信頼性という意味では、他の有象無象の匿名ネット情報と同じところがありますが、『Wikipedia』の良い点として、第三者が「書き直し」できることがあります。一方的な主張ではなく、多方面からの意見や主張を反映させ、誤りを正す機会が誰にも平等に与えられています。

 あまりご覧になることはないかと思いますが、『Wikipedia』では各項目の表示画面右上に「履歴表示」の機能があり、誰(登録名)が、いつ、どのような部分を追記・編集・修正・削除したのか、を確認できます。

 ここで重要なのが「いつ(年月日)」ですね。『Wikipedia』の長所として「データ更新が早い」というものがありますが、書かれている情報がいつの時点のものなのかを項目単位できちんと確認できます。これは新規性を重要視するデータの場合、とても大切。


 『Wikipedia』の情報を活用することについては一長一短があります。

 学生さんならば先生などから「使うな」と厳命されることも多いのではないでしょうか。理由は色々ありますが、一番の欠点としては「情報の信頼性が弱い」ということですので、学術の分野では避ける傾向がありますね。


<閑話>

 『Wikipedia』の情報が信頼できるか?については、真面目に研究や討論も行われています。最も有名なものは2005年の『Nature』記事から始まったものでしょう。これは世界有数の科学誌『Nature』が、世界で最も権威の高い『Encyclopaedia Britannica(ブリタニカ百科事典)』の項目記事と『Wikipedia』の記事内容を比較してみた結果、記載された情報の誤りの割合があまり変わらないとする報告に端を発したものです。当然『ブリタニカ』の方は反論し(20ページ以上の反論記事でした……さすがイギリス)、当時は結構面白く話題になりました。『Nature』も記事撤回をしなかったので、最終的には灰色の決着です。

 いずれにせよ、ある特定の範囲や制限の元において『Wikipedia』の情報は、紙媒体の伝統ある辞事典類同等もしくはそれ以上の有用性がある、との認識が固定化された出来事でもあります。

 よって私個人は『Wikipedia』の情報は、「使えるなら使えばいいんじゃない? 使い方次第でしょう」というスタンスですね。実際、業務でも多用しますし。

<閑話終わり>


 さて『Wikipedia』を使う場合の工夫点。一つは先に挙げた「変更履歴」のチェックです。それに関連して、外部リンクの有無や「出典・脚注」の有無。

 特に「出典・脚注」は、情報の信頼性の確認にも役立ちますが、より詳しい情報をえるための情報源としてとても有効です。これが無い場合、どうしても「主観による情報」としての疑いが避けきれません。

 もう一つ、頑張って試していただきたいのが「他言語での表示」を確認すること。分野にも寄りますが、最低限「英語(English)」の同じ項目ページを見てみると、情報の違いなどがよく分かります。

 『Wikipedia』では同じ項目でも言語ごとに執筆者・編集者は異なります。よって、海外の事項や世界史的な物事の場合、英語版の方が詳しいです。またテンプレートがきちんと適応されていて、英語が苦手でも大まかな項目立ては迷わないことが多いです。後はネットの翻訳機能などを活用してもいいでしょう。

 加えて。

 英語版と日本語版で情報が異なることがあります。これ、意外と多い。なぜか本来違うはずのないようなファクトデータ(計測値などの事実事項)でも多く見られます。

(私がこの10年来使っている事例の一つが「ニュージーランドの面積」です。

 これ、日本語版『Wikipedia』の「ニュージーランド」では【268,680km2(世界73位)】ですが、英語版では【268,021 km2 (75th)】で載っています。ちなみに日本の外務省作成の「ニュージーランド基礎データ」では【27万534平方キロメートル】、さらにニュージーランド政府統計局作成の『New Zealand in profile:2015』では【268,107 km2】というバラバラさ。この10年ばかり誰も修正しないのは、ある意味見事です……)


 日本語版『Wikipedia』は一説によると項目範囲の多様性は類をみないらしいですが、各項目事項や書かれている内容の詳細さ、信頼性の高さなどは英語版の方が詳しいことが多いですね。ちょっと頑張ってみたい方には、ぜひとも英語版との比較を試していただきたいです。


<学生さん向け>

 あなたが大学生なら。ぜひ図書館や学内PC環境で『JapanKnowledge(ジャパンナレッジ)』というデータベースが利用できないか、確認してみて下さい。

 『JapanKnowledge』(http://japanknowledge.com)

 これは有料のデータベースですが、「基本的な調べもの」に最適なツールです。多くの大学図書館が導入しているので、使える環境にある方も多いのではないでしょうか。個人利用も可能です。(月払いと年払いがありますが、結構高価……)

 利用可能なコンテンツ(辞事典類など)が、無料サービスでは利用できないものが多く、また信頼性が高いものがほとんどなので、学術や仕事でも大変有用です。使い方などは、新年度などに図書館がオリエンテーションやガイダンスをしてくれることもあるでしょうから、機会があったら使ってみましょう。

 他に、「日外アソシエーツ」という会社が提供するデータベースコンテンツも有用です。

 有料のものを自由に利用できる環境。大いに活用しないと損ですよ。

※社会人の方の場合、都道府県立図書館や大きめの市区立図書館でも利用できることがあります。一度確認してみてはいかがでしょうか。




■専門家を頼るツール■


 「インターネットでググって調べる」際に、検索結果に頻出するのが、いわゆる「質問サイト/Q&Aサイト」ですね。『Yahoo!知恵袋』『教えて!goo』(『OKWAVE』)『はてな』などが有名です。

 ここでの質問は気軽にできることもあり、「なろう」利用者とおぼしき方々の質問を目にすることも多いですね。

 「ちょっとした疑問」について、簡単に質問できて答えが得られる質問サイト。便利です。そして他人の質問内容やその回答を誰もが閲覧できますので、自分と同じような疑問や質問に対する回答を、手早く入手することもできます。

 ただ、この手の質問サイトにおける問題点は、回答者の質が不定なことと、回答情報の信頼性が弱いこと、確認しづらいことがあります。『Wikipedia』同様に、誰でも知識の有無にかかわらず回答を提供できますので、その回答が正しいかどうかの判断は自分自身に任されます。そのため、場合によっては複数の回答者が異なる答えを提示することもありますし、提示された回答が誤りであることも数多くあります。


 「分からないから、誰かに訊く」という行動。場合によっては「教えて君/ちゃん」などと卑称されて嫌われることもありますが、これは人間の行動としては不思議ではないんですよね。

 認知心理学などでは、人間の知的行動の一つに「情報探索行動」と呼ばれるものがあります。これはおおざっぱに言うと、人間が何か「問題」に直面した際にはまず「自己知識」(既存の知識・記憶)を頼り、回答が得られない場合「外部知識」(記録された過去の知識・経験、他者の記憶・知識・判断など)を頼り、回答となる情報を得ようとする行動を指します。

 つまり、自分が分からないなら、他人に訊く。非常に人間らしい行動なのです。

 要は、その相手が「記録された人間の知識(辞事典類やデジタル情報)」なのか「記録されていない人間の知識(判断などを含む)」なのか、の違いです。


 じゃあ「効果的に他人に訊く」には?

 こんな時、便利なのが「専門家に訊く」という行動。とは言っても、普通の生活ではなかなか各分野の専門家に話を訊く機会も伝手もありません。

 (大きな事件などが起きた際、各マスメディアは即座に「有識者」「専門家」のコメントをとってきますが、あの情報源リスト(人的リソースリスト)はある意味マスメディア各社の「虎の子」です。過去に一度見たことがありますが、分野毎、対象ごとに順位付けされていて、いざ事が起きると順番に電話してゆくそうです。今はどうなんでしょうね?)


 ですが、皆さんには大きな味方がいます。

 それは【図書館】の「レファレンス・サービス」「レフェラル・サービス」です。

 専門的にはまとめて「情報サービス」と称しますが、これはどんな図書館でもやっている利用者向けのサービスの一つです。


 「レファレンス・サービス」は、簡単に言えば「質問したら答えを提供する」サービス。20世紀頃までは回答は直接提供せずに、回答が記された本などを提供することが基準とされていましたが、現代では「必要に応じて、答えとなる情報・データを直接提供」する方向に変化しています。

 図書館の司書資格を有する職員なら、誰でも資格取得のためにこれらの「調べもの」のノウハウを身につけてきています。それこそ日常的なものから研究者に対する回答提示が可能なレベルまで、文系理系関係なしに多様な分野の情報検索はお手の物(のはず……)

 その知識と技能を活かして「あなたの代わりに調べものをしてくれる」。これが「レファレンス・サービス」です。

 最近は、図書館のホームページからのフォームやメールでも受け付けてくれる図書館が増えましたので、忙しい社会人でも利用しやすいですね。


 「図書館の人に代わりに調べてもらう」という行動。単なる時間の節約という有効性だけではありません。

 図書館のレファレンス・サービスでは、「回答情報には出典を付けること」が厳命されます。つまり図書館の人が知っていること、ではなくて「誰かが記録情報として残したもの」が、回答として提供されます。誰がその情報の責任者なのかがはっきりしています。

 ということは、信頼性の高い情報が多いわけですね。図書館も回答作成の際には、必ず複数の情報源・資料での記述を確認し、信頼性を精査してから「それぞれの情報」を提供することを意識します。

 ここで重要なのが「それぞれ」という点。つまり「複数の答え」などがある場合、ある程度信頼性のあるものならば、全ての候補を教えてくれます。(○○については、『A』では××と言われていますが、『B』では△△と言われています、のように回答されるはずです。多分)

 最終的に活用する情報判断は自分自身で、ということなのですが、これって小説執筆のように多様性が欲しい場合には、かなり役立ちます。

 加えて情報の信頼性を、予め専門的な知識を持っている(はずの)図書館の人が精査してくれていますので、誤った情報に振り回されることが少なくなります。


 さらに近年盛んなのが「過去の質問事例とその回答を、他の人にも公開する」という流れ。いわゆる「レファレンス事例」と呼ばれるものです。

 誰かから受け付けて図書館が調べた結果を、同じような疑問や質問を持っているけれど質問する機会がない人々に紹介する、という引っ込み思案の人々に大変優しいサービス(?)です。

 各図書館でもホームページなどで公開していますが、複数の図書館での質問をまとめて見ることができるサイトもあります。


 一番規模が大きいのが、国立国会図書館が運営している『レファレンス協同データベース』(http://crd.ndl.go.jp/reference/)です。


 国内の様々な図書館(市立や県立の公共図書館だけでなく、大学図書館や企業の専門図書館なども参加しています)が、自分たちが受け付けて回答した質問の内容と答えを、同じフォーマットで提供しており、キーワードや分類による検索と閲覧が可能です。

 回答内容そのものは、各図書館が自分たちの利用者に対して行ったものがそのままなので、回答として示されている資料やデータベースなどが利用できないこともありますが、「答え」が直接載っているものも多いので、大変便利です。


<一例>千葉市中央図書館の事例(未解決)

質問「中世ヨーロッパで貴族に飼われていた猫で、最も高価な猫およびその値段(価値。何と同等値か等)を知りたい。また、ペルシャ猫のおおよその価値もわかれば知りたい。」

(http://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000176289)


 『レファレンス協同データベース』では質問内容と回答だけでなく、調べる際に図書館の人が用いた方法(多くの場合、失敗したプロセスも含めて)や検索の際に役立つキーワード、参考資料などが挙げられているので、自分で調べる場合にも役立ちますよ。


 またここでは「調べ方マニュアル」と呼ばれる「自分で調べる時に使うと便利なツールと、その特徴の紹介」も提供されています。これも図書館が普通に行っているサービスの一つですね。図書館では「調べ方案内」や「パスファインダー」などと呼ばれます。


<一例>国立教育政策研究所教育研究情報センター教育図書館作成

「教科書で習った教材の探し方(国語)」

(http://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=man_view&id=2000004421)


 これらを使うことで、図書館を訪れることはなくても図書館のサービスを活用して、自分の調べものを効果的にこなすことができますね。


 なお「レフェラル・サービス」というのは、良い意味での「たらい回し」サービスです。有能な図書館員であったとしても人の子。知らないことはたくさんあります。そんなときどうするか。

 図書館では「図書館で調べてみましたが、わかりませんでした」の前に、「分かる人に訊きます」の行動をとります。これが「レフェラル・サービス」。

 自分たちの図書館の機能や人員では分からないことを、より専門的な知識を持っている人々や資料が存在する他の機関に訊ねて回答を得るのです。質問する人からすると、「自分の代わりに、もっと詳しい人に訊いてくれる」ということですね。

 図書館は他の図書館はもとより、各種の専門機関との協力体制を築いています。よって、分からないことを、本当の専門家から直接聞くことが可能なことも多いのです。

(レフェラル・サービスは図書館によっては、やっていないこともあります。ですが、少なくとも各地の図書館で手に負えなかった質問は、国立国会図書館の超スペシャリスト達に持ち込む事が可能です。彼らは調べものに対するプロ中のプロです……)




 そんなこんなで。「インターネットで調べもの」初級編、お役にたてたでしょうか?

 自らの執筆活動を支える「調べもの」という行動。これを便利に効果的に行うヒントとなれば幸いです。


 今回示した情報は、本当の基礎編というか入門編で、多くの人々にとっては既知の事項かも知れません。ですが、一人でも「知ることができてよかった」と思っていただけたら、書いた甲斐があります。普段は自分の仕事の一環でしかありませんが、少しでも誰かの役に立てたら、職業人として嬉しいこと極まりありません。

 また、業務で作成するこの手の文章は、どうしても固く面白味がないものになりがちなので、自分自身にとってもちょっとは「ライトに読める」ものを作成してゆくための練習になればいいなと思って書きました。記述内容はかなりダイジェスト化していますし、表現も大幅に緩くしています。

 異論や他の意見もあるでしょうが、参考資料の一つとして受け止めていただければ幸いです。

(多分いらっしゃるであろう同業者の方。非常に甘い資料ですが、もしご覧になっても生暖かい目で見てやって下さい……)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 大変、有意義な内容でした。自分の調べ方の幅が広がることで創作だけでなく、生活に便利になると思う内容でした。 [気になる点] 初級編でも長かった。 章ごとに分けて、howtoの形で書かれた方…
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