ゆひきりげんまん
三作品目です。
少し切なさを感じられるような物を書かせていただきました。
どうぞ宜しくお願いします。
ゆびきりをして、
約束だよと。
無邪気な子供だった僕らはただそれは叶うのだと信じていた。
ゆびきりした約束は特別で、
絶対で。
それなのに桜が咲き乱れてた春、君とさよならも告げず離れ離れ。
それでもあのゆびきりした約束があったから寂しくはなかった。
少し大人になった今、約束を果たしに君に逢いにゆくから。
あの時笑い合ったあの場所でまた逢いたい。
────………
来るはずなんかない。
分かってる。
それでも“もしかしたら”が頭の片隅に過って勝手に加速する鼓動。
「…綺麗だな。」
あの時と一寸違わぬ景色。
ゆらゆらと儚く揺れるピンクにふっと頬が緩む。
さよならも告げずにいなくなった俺を君はどう思っただろうか?
身勝手だと怒った?
どうでもいいと思った?
それとも、悲しんで泣いてくれた?
「……仁奈…」
脳裏に浮かぶのは満面の笑みで俺の小指に己のそれを絡ませる愛しい仁奈。
俺の中の仁奈は幼いままで穢れのない瞳で見詰めて来る。
「約束、守りに来て…?」
あの頃よりも成長した自分の小指。
そこだけ熱を持ったように暖かくて。
見えない糸がこの小指から仁奈の小指へと繋がっているなんて今でも信じてる。
そして、その糸はきっと赤くて絶対に切れない。
手繰り寄せれば仁奈は来てくれるだろうか。
そんな風に考えて自嘲。
「ずっと待ってるから…」
小指にそっと口付けて、
愛しい仁奈を待ち続ける。
甘い過去のゆびきりを胸に。
ゆびきりげんまん
(早く約束を守りに来てくれ、)
(俺はずっと待ってる)
読んでいただいてありがとうございました。
この作品は、もう1話続編としてあります。
また続編でお会い出来ると嬉しいです。