表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/171

Act. 3-1 とんでも腐敵な友情編!?

<<<< 栗子side >>>>

 

「うふふふふふふ…………」

 

「キモイよグリコ」

 

 さっきからニヤニヤ笑いが止まらないあたしに、親友の池上真昼いけがみまひるが言った。

 

「さっきからなに見てんのよアンタ」

 

 もう一人の親友、立倉祥子たてくらしょうこも呆れ顔で訊いてくる。

 

「お宝写真」

 

 言った瞬間、にやにやは、でへっにまで昇格した。

 

 だって何度見ても嬉しいんだもん。

 

 あたし達三人は今、大学構内のカフェテリアでランチタイムを楽しんでいる。

 

 ここは、木のテーブルや椅子が置かれた、ロッジ風のお洒落なオープンテラスもあり、女学生に人気の場所だ。

 

 と言っても、あたしの大学は女子大だから女学生しかいないんだけど。

 

 丁度店内の冷気がいい感じに漂ってくる屋外席を取れて、あたし達は食事をしながらまったり過ごしていた。

 

 

「それってこないだ言ってたイケメンカップルの?」

 

 巻き髪お嬢様ヘアの真昼は清楚な見た目とは裏腹に俗っぽい言葉を使う。だけど男の前ではブリッコというわけでもない。

 

「うん、隠し撮りした写真ができたから」

 

 あたしのにやにや笑いの理由はそれだった。

 

「ふぅ〜ん、どれだけイケメンか見てあげるわよ」

 

 眼鏡をかけたボブカットの知的美人、祥子があたしから写真を取り上げた。

 

「あっ。汚しちゃダメだからね!」

「アンタの涎の方が危険だわよ」

 

 びしっと厳しいことを言う。真実を突いてるだけに言い返す言葉もない。

 

「どれどれあたしにも見せて。へぇ〜確かにかっこいいじゃん」

 

 星の数ほどの男と付き合ってきた真昼の審美眼は確かだ。

 

 あたしは子供を自慢する母親の如く舞い上がった。

 

「でしょっ、でしょっ! あぁ〜早くカップル成立しないかなぁ〜」

 

「アンタのその気持ちは分からない」

 

 祥子の呆れ目がますます細められた。

 

「普通、こんだけかっこいい男が身近にいれば自分が付き合いたいって思うよね。いい加減ノーマルに戻らないのグリコ」

 

 写真をあたしに返しながら言う真昼。

 

「腐道は一度堕ちたら二度と戻れないのよ……」

 

 ふっと自嘲気味に哂うあたしを祥子は「バッカじゃないの」と斬り捨てる。ああ、その冷たいところが萌え〜なんだけど、女なのが残念。妄想のネタにはならない。

 

「それにしてもコレ、全然隠し撮りになってないじゃない。朽木さんだっけ? こっちの黒髪。思いっきりアンタを睨んでるよ」

 

「うん、何故だかいつも感づかれちゃうんだよね」

 

 祥子の指摘通りだった。

 

 何故だか、いつも隠れてる場所がばれて追い返されるんだよね。

 

 朽木さんって千里眼?

 

「隠れるのヘタなのよグリコは」

「邪念が溢れ出てんじゃないの」

 

 我が親友は二人とも言うことがキツイ。

 あたしはぶーっと膨れてまだ手付かずだったサンドイッチに噛り付いた。

 

 と。

 

「ん? この写真はアンタが一緒に写ってるじゃない」

 

 そう言って祥子が目を止めた写真は、一週間前、朽木さんちで撮ったやつだった。

 

 あの時は確かあたしが鼻血出して朽木さんが介抱してくれて。

 

 その後「お願い! 記念に一枚!」「なんの記念だ!」「出血大サービス記念!」なんてやり取りして。結局朽木さんが折れて一緒に写ってくれたんだっけ。

 

 意外と優しくて結構驚いた。

 女は嫌いだけどフェミニストってタイプかもしれない。

 

「鼻血出したら一緒に写ってくれたんだ」

 

 正直に告白すると、

 

「アンタ……女として、いや、人として終わってる」

 

 祥子に生ゴミでも見るかのような目で見られてしまった。

 

「まぁまぁ、でもグリコが男んちに行くなんて青天の霹靂へきれきだよね。これも一応進歩じゃない?」

 

 フォローありがとう真昼。なんか微妙にバカにされてる気もするけど。

 

 あたし達三人はそんな風にいつものランチタイムを終了した。

 

 二人は食べ終えた食器を下げに行き、あたしは最後のサンドイッチをお腹に収めて一息ついていた。

 

 そんな時、同じ英文科の女の子があたしを見つけて道の向こうから手を振りながらやって来たのだ。

 

 名前は……確か相田さんだったかもしれない。あたしは人の名前を覚えるのが苦手なのだ。

 

 

「桑名さん、今夜空いてる?」

 

 彼女は開口一番そう言った。

 

「空いてるけどどうしたの?」

 

「今日、合コンするんだけど、女の子が一人欠けちゃったのよ。頼んでた子が風邪ひいて」

 

「ふぅん、それであたしが代理?」

 

「そう、代わりにお願い! 桑名さん!」

 

 相田さん(多分)は両手を合わせて懇願してきた。

 

「真昼か祥子のが適役じゃない?」

 

 あたしは興味なさげに返す。

 

「あの二人だと全部持ってかれちゃうじゃない」

 

 それはどういう意味なのか。

 

 突っ込みたいところだけど彼女とそれほど親しいわけじゃない。

 

 自分の失言に全く気付かない彼女はとにかく焦りまくっていた。こないだ車を止めようとパニクった自分を思い返して、あたしはなんとなくOKの返事を返した。

 

 幹事役も楽じゃないんだろう。

 

「ありがとう桑名さん!」 

 

 晴れやかな笑顔になって喜ぶ相田さん。

 

 本当は合コンとか苦手なんだけど、適当に座ってるだけでもいいだろう。所詮人数合わせだもんね。

 

「じゃあ18時に駅で待ち合わせってことで。ホントにありがとう! よろしくね、桑名さん」

 

 何度もありがとうを繰り返しながら、相田さんは席を離れていった。

 

「うん、じゃあまたね相田さん」

 

 感謝されるのは悪い気分じゃない。あたしも軽く手を振って笑顔で返すと、相田さんはちょっと面食らった顔になって言った。

 

「あの……あたし、寺尾なんだけど」

 

 

 訂正。相田さんは寺尾さんだった。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ