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Act. 9-9

<<<< 栗子side >>>>

 

 コピー室を出て、喫茶室を出て、正門入ってすぐの東西に伸びる大通りを西に進む。

 

 朽木さんと祥子が導き出した、次なるチェックポイントの場所は『教職員用西駐車場』。

 

 大通りに沿っていけば辿り着ける所だ。大学の端っこの、あまり大きくない駐車場。

 

 凄いなこのレース。本当にあちこち歩き回される。体力のない人にはきついレースだ。

 

 喫茶店2階のラウンジには、その体力の無い人達か、ソファーにもたれて休んでる人達がぱらぱらといたのを思い出す。三枚のカードをテーブルに並べて頭を抱えてる人もいた。

 

 そんなに難しい連想クイズじゃないと思うんだけど、分からない人には分からないのかな。

 

 祥子と朽木さんは焦らずマイペースに歩く。

 

 あたし達の順位が今どれくらいかは分からないけど、研究室でもコピー室でも、ライバルをそれほど見かけなかったところをみると、かなり後ろの順位なんじゃないかと思う。

 

 いくら祥子と朽木さんの頭が良くても、このスピードじゃあ優勝なんかできそうにない。

 

「もっと早足で行こうよー」

 

 あたしはさっきまでもたもた歩いてたのを棚に上げてぶうたれた。

 

「疲れるから御免よ」

「そこまで頑張るつもりはない」

 

 祥子と朽木さんから順々に気の無い返事が返ってくる。

 

 ぶう。知能面では頼りになるんだけどこの二人。こうもやる気のなさを見せ付けられるとこっちのテンションも下がっちゃう。

 

「まぁまぁグリコちゃん。こういうのは参加することに意義があるんだぜ」

 

 くそう。高地さんに諭されるとなんかムカつく。

 

 そりゃ参加することに意義があるんだろうけどさ。出るからには勝ちたいじゃん。負けるにしても、一生懸命頑張った上で負けた方がスッキリするじゃん。

 

 みんな勝敗に無頓着すぎる! ぷんぷん!

 

 

 やがて見えてくる目的地。

 

 教職員用西駐車場は、レースのことを聞きつけた人達が徐々に見物に集まったのか、フェンスの外を囲む人垣ができていた。

 

 その人垣を掻き分けてフェンスの中に入る。番号札を着けたあたし達、レース参加者だとひと目で分かるためか、見物客の視線が集まった。

 

「注目浴びてるね、あたし達」

 

「……あんまり目立つことはしたくないんだけどな」

 

 朽木さんが表情を曇らせて呟く。

 

 そういえば、実のお父さんに目をつけられたくないから、平々凡々に生きるのが望みなんだっけ。

 

「でもプリンスとか呼ばれちゃって、既に十分目立ってたんじゃない。いまさらでしょ〜」

 

 笑い飛ばすように明るく言って、朽木さんの背中をバシッと叩いとく。

 

「冷静沈着な……ねぇ。ぷっ」

 

「喧嘩売ってんのかお前は」

 

 やべ。目の奥に剣呑な光が増してきた。

 

「あ、あれあれ! 次のチェックポイントはあそこだね!」

 

 こういう時は、とりあえず目を逸らして話を換えるべし!

 

 しかし無言で頬を引っ張られる。痛い。痛いです朽木ひゃん。

 

 やっぱ全然冷静じゃないと思ふ。

 

 

 次なるチェックポイントは非常にレースらしい雰囲気のある所だった。

 

 駐車場の一角に長机が置かれ、その上に箱が四つ並べられている。『A』、『B』、『C』、『D』とそれぞれ書かれた箱が。

 

 机の横には立て札が設置されている。そしてここでもまた中継のカメラがあたし達の姿をじっと映してた。

 

 拝島さんと真昼見てるかな。

 ピースサインとかしたら寒いかな。

 

 傍らに立つスタッフのジャケットを着た男性が一歩前に出て、事務的な口調であたし達を迎えてくれた。

 

「ここでは推理クイズに挑戦していただきます。立て札に書かれた問題を解いてください。正解だと思うアルファベットが書かれた箱から紙を一枚引いて、そこに記された場所にまた移動してください」

 

 は? ここはただクイズを解くだけ?

 

「知力と体力のバランスを調整してるってことね」

 

 おぉ〜なるほど。言われてみれば、なにやら苦悩してる参加者達の群れが長机の向こうに……。

 

 ズルできないようにか、皆こっちに背中を向け、パートナーとひそひそ相談し合ってる。

 

 かなりの人数がたむろしてるところを見ると、このクイズ、結構難易度高いのかも。参加者の半数くらいいそうだ。

 

「ここで頑張れば一気に順位上げられるよ!」

 

「おう! 上位七位以内に入れそうだな!」

 

 あたしと高地さんは俄然はりきって立て札の問題に目を凝らした。

 

 えーと、どれどれ。

 

問題:

 

バイトに行くと言って家を出た佐藤君。しかしそのバイト先から、彼が出勤してこないとの電話がありました。佐藤君は、友人に送った以下のメールを最後に連絡が途絶えています。さて、佐藤君は今どこにいるのでしょう?

 

『5時であがるよ。

 

 浴衣着て後ろと前の絵が反対の父怒る。』

 

 

解答:

 

 A.呉服店 

 B.デパート 

 C.遊園地

 D.郵便局

 

 

「…………」

 

 なんだこりゃ。

 

 ハテナマークが頭の中を飛びまくる。

 

「えーと……替えの浴衣探してんのかな? 呉服店かな?」

 

 あたしと同様にハテナマークを飛ばしてる顔の高地さん。たらりと汗が流れる。

 

 シールをスタッフから受け取った朽木さんと祥子が、続いてあたし達の後ろから立て札を覗き込んだ。

 

「父親の機嫌取るために、デパートで買い物してるのかもしんねぇぞ」

 

「アホかお前ら」

「アンタらもう少し脳味噌使えないの?」

 

 朽木さんと祥子はあたし達を呆れ目で見た後、すたすたと解答の箱に移動した。

 

 二人ほぼ同時に手を突っ込んだ箱は『C』。

 

「へ? 遊園地……?」

 

 箱から取り出した紙に目を通し、即座に二人の足は駐車場の入り口に向けられる。

 

「行くぞ」

 

 振り返って一言、なんとも素っ気無く移動を開始する二人。

 

 慌ててあたしと高地さんも後を追いかけた。

 

「次の場所は情報科学センターのコンピュータ室だ」

 

「ここからわりと近いわね。南西部が工学部のゾーンになってるってわけね」

 

 二人は箱から取った紙をあたし達に見せ、歩きながら説明してくれるけど。

 

「そ、それはいいんだけど祥子ちゃん」

 

「さっきの問題、なんで答えが遊園地なの!?」

 

 あたしと高地さんの最大の疑問は晴れない。

 

 もう答えの理由が知りたくてウズウズなのだ。

 

「ちょっと考えりゃ分かるでしょ」

 

「えぇ〜〜。分かんないよう!」

 

「5時にあがるとあっただろ? あれは5文字で上がれってことだ」

 

 ため息混じりに解説してくれる朽木さん。

 

「その下にあった文章を全部平仮名にして、5文字で区切ってみな」

 

 ふむ。祥子の言う通り、メモ用紙にさっきの文章を平仮名で書いてみる。

 

『ゆかたきて 

 うしろとま 

 えのえがは 

 んたいのち

 ちいかる。』

 

「5文字ずつ並べた先頭の文字をつなげて読んだら何になる?」

 

「ゆ、う、え、ん、ち……」

 

 

『遊園地!!』

 

 

 ようやく答えに行き着いたあたしと高地さん。興奮して思わず大声で叫んでしまった。

 

 祥子は呆れ顔で肩をすくめ、朽木さんは苦笑してあたし達を見やる。

 

「そういうことだ」

 

 

 

 

いつも投票や拍手、ありがとうございます!

嬉しい拍手コメントに、にへにへしております♪

 

ところでグリコが人前では朽木に対して敬語使うようにしてたのは、もう消えちゃってたり。

使い分けるのが面倒になったもので。作者もグリコも。(笑)

 

レースの事件の情報量、多くてすみません!

あと一人分だけ、『関係者への聞き込み』が続きます。

その後はスピーディに進みますので!

 

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