Act. 8-1 とんでも腐敵な回復祝い♪
長らくお休みしてすみません!(汗)
ようやく連載再開できるようになりました。
待っててくださった方。どうもありがとうございます。
頑張って執筆していきます。
そして連載再開と同時にいきなり催促ですが。(笑)
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連載は、感覚を取り戻すため、とりあえず水曜と日曜の週ニ回更新でいきます。
ペースを掴んだら、週三回更新になると思います。
またよろしくお願いしますね、読者の皆様。m(_ _)m
長いお付き合い、本当に大感謝です♪
<<<< 栗子side >>>>
今日は土曜日。
午前で講義終了となるあたしは、午後のバイトをお休みし、気乗りしなさそうな祥子と真昼の背中を押して朽木さんの大学へと移動した。
正門入って車道と歩道とに区分されてる真っ直ぐな大通りを行き、掲示板の並ぶ人だかりのできやすい場所を通り過ぎると、売店と待合所が合体した一面ガラス張りの建物が見えてくる。
学生が休憩したり待ち合わせに使用したりする場所だ。中は自動販売機があり、長椅子が幾つか置かれてる。
その椅子のひとつに目立つ金色のツンツン頭と肩まで下りたさらさらの茶髪が並んでるのが目に入る。誰かなんて説明するまでもなく高地さんと拝島さんだ。
「たっかちさぁーん! はいじまさぁーん! やっほー!」
建物の中に入り、こちらの姿を見つけて腰を浮かした二人に、手を振りながら近付いていく。高地さんはあたしの背後の人物が真っ先に目に入ったようで。
「しょうこちゃぁーん! 久しぶりーっ!」
短距離ランナーのような瞬発力で真っ直ぐ祥子の前まで飛んできた。
「はいはい、久しぶり。そこでストップ、『バカ地』」
けど高地さんの顔面は祥子の手前数十センチで、祥子が突き出した鞄と仲良くキスして停止。相変わらず軽くあしらわれてマス。
ちなみにいつからか祥子は高地さんを「バカ地」と呼ぶようになった。なかなかどうしてピッタリなあだ名だとは思うけど、さすがにあたしは使ってない。
「ああ、この冷たさが癖になる……」
「分かる! その気持ち分かるよ高地さん!」
高地さんがうっとりと漏らした呟きに力強く同意する。高地さんがあたしの同族名簿に名を連ねた瞬間でもあった。
「阿呆は放っといて行くわよ」
くるりと背を向けて今入ってきたばかりの扉に歩き出す祥子。真昼がくすりと笑いながら肩をすくめて後に続いた。
「あぁ〜〜待ってぇ、祥子ぉ!」
「待って〜祥子ちゃぁ〜ん!」
「なんか兄妹みたいだね、栗子ちゃんと高地って」
慌てて二人の後を追うあたしの横に並んだ拝島さんがいつもの楽しそうな笑みを浮かべて言った。今日もステキな爽やかスマイル。
「えぇ〜こんなお兄さんはいりません」
「グリコちゃん……それって、どう反応すればいいのオレ?」
複雑そうな顔で振り返る高地さんはいつもの如く軽くスルーして建物の外に出る。俄然、ワクワクしてきた足は道端の小石をピョン、と飛び越えてもまだ足りない。ニ、三歩スキップを踏んで顔を上げるとニコニコ顔の拝島さんと目が合い、テヘヘと笑ってみせる。
まぁ、そんなこんなで出発とあいなったのだ。
さて、この五人が集まってどこに行くのかというと。
ずばり、朽木さんのうちなのだ。
先日、予想外に長引いた風邪(なんでだろう?)が完治した朽木さん、少しやつれた顔で授業に復活した。といってもあたしはその姿を見てない訳だけど、高地さんが、「しっかり栄養つけないとな! 全快祝いに鍋でもやるか!」と言った言葉が引き金となり、あたし達三人が呼ばれる運びとなった。
高地さんの目的が朽木さんの全快祝いなどではないのは明らかだ。「絶対祥子ちゃんを連れてきて!」というお願いのセリフからしてもうバレバレだ。
だけどお祭り騒ぎ好きのあたし、朽木さんのうちに皆で遊びに行くなどという面白イベント、断る筈がない。高地さんと結託して拝島さんを味方に引き込んで、嫌がる朽木さんをこないだ寝込んだ時こっそり撮った寝姿写真をネタに半分脅しをかけて黙らせた。
どんな黙らせ方をしたのかは……ふふふふふ。ヒ・ミ・ツ☆
暑苦しそうに寝乱れる、かなりセクシーな写真だったということだけ言っておく。
「朽木のうちに近いスーパーで、一番品揃えがいい所はね……こっちかな」
大学から朽木さんのうちまでは歩いて二十分ほど。途中、拝島さんの案内で鍋の材料やらを買うスーパーに寄り、色んな物を買い込んだうえで、朽木さんのマンションに辿り着いた。
「高級そうなマンションね」
真昼が1階の、やたら天井の高いホールを見上げて言う。
「部屋もすんごい広いんだよ! リビングだけで18畳もあるんだって!」
「学生のくせに贅沢だなあいつ〜」
「お坊ちゃん育ちなんじゃない?」
祥子の言葉にぎくっとするあたし。す、鋭い。お坊ちゃん育ちというかもろお坊ちゃんなんだな、朽木さんは。
こないだ章くんの一件で朽木さんの過去を教えてもらったあたし。朽木さんが実は四大企業と言われる神薙グループの会長の隠し子で、ハードな中学時代を過ごしたことを知った。
正直、何といえばいいのか、何か感想を言った方がいいのかもよくわかんないので、「ふーん」と適当に相槌を打っておいたのだけど。
さすがにさらりと聞き流すなんてできない重さだ。
でも朽木さんの中では既に終わったことで、多分朽木さんのトラウマになったに違いないけど、もう関係ないと思い込もうとしてるようだった。だから、しばらくはあたしも知らないふりしといた方がいい。
朽木さんの心の傷は、きっと拝島さんが癒してくれるのだろう。
朽木さんが拝島さんを必要としてる理由はそれなのだ。確信をもって言える。
「朽木の部屋は7階だよ」
皆に説明しつつエレベータのボタンを押す拝島さん。すぐに開いた扉の中に、全員乗り込む。
新築の最新式エレベータは、すっと音もなく上に滑り出した。
それにしても……。
うーん、と思い悩むあたし。
同人誌の方のキャラ設定はどうしよう?
財界の大物の隠し子ってそのまま使ったら間違いなく朽木さんに殺される予感だ。こないだ同人誌の話をした時に見せた胡乱な目つきは、本気で殺るぞ、という目だった。海にでも流すつもりだよあれは。
仕方ない。極道の息子とでも変えておこう。
そんな暇人なことを考えてるうちに目的地に到着した。
ピーンポーン♪
こんなセキュリティもエレベーターも最新式で、内装、建物の構造も洒落てる新築マンションなのに、ドアホンの音はありきたりなのが笑える。押し慣れたボタンを押して待つこと数秒、ガチャッと重い扉が開いて朽木さんが現れた。
「どうぞ。あがってくれ」
どうぞだって! かつてそんな言葉、言われたことあったかしらん!
一週間ぶりくらいに見る朽木さんは確かに少し頬がこけて血色悪そうな顔してる。でもそれが儚い色気をプラスしてて、セクシー度アップ!
着てる服も襟ぐりが広いダークブラウンの長袖シャツで、くっきりと浮かぶ鎖骨のラインが艶めかしいことといったら……じゅる。ああ涎が……。
「来て早々トリップかお前は」
はっと気付けばあたし一人扉の前に取り残されていた。既に部屋にあがってどやどやと廊下を進む皆の背中が奥に見える。
ずっと扉を開けて待っててくれてたらしい朽木さんが冷たい目であたしを見下ろしてた。
「え、えへへ。朽木さんたらセクシーなもんだから、夢の世界に旅立っちゃったよ」
「もう現実の世界に戻ってこなくていいぞ。そこでいくらでも妄想してろ」
意地悪なセリフを言い残して扉を閉めようとする。あたしは慌てて中に滑り込んだ。
「ホンットに贅沢だな朽木んちは!」
さっきから語尾に感嘆符つけまくりの高地さんが、あちこち探検しながらもう何度言ったか分からない感想を洩らす。
「でしょでしょっ!? あっちの部屋にある本の数も、タダゴトじゃないですよね!」
ついあたしも一緒になってはしゃいでしまう。盛り上がってくるあたし達二人。
「よっしゃ! ためしに本の数、数えてみっか!」
「らじゃー! 高地隊長!」
ファイティングポーズをとる高地さんに、ノリノリなあたしも敬礼してみせた。
「ものども続け! 突撃じゃあぁぁ〜〜っ!」
「おーっ!」
「……なんなんだあいつらは」
「さっきからかなり意気投合してるみたいだよ……」
背後から呆れ混じりの朽木さんと拝島さんのそんな会話が聞こえてきた。
それから一通りはしゃぎ終わったあたしと高地さんが疲れてリビングに戻ってくると、祥子と拝島さんがソファーに座ってお茶してた。
二人は文学系の本の話をしてるらしく、祥子の幾分和らいだ表情から、拝島さんと話が合ってる様子が見てとれる。
「こ、こら拝島! 祥子ちゃんに馴れ馴れしく話しかけんな!」
ぷっ。高地さん、慌ててる慌ててる。
「アンタよりよっぽど拝島さんと話す方が有意義だわ」
「そりゃないよ祥子ちゃぁ〜〜ん」
相変わらず進展なさそうな祥子と高地さん。拝島さんも苦笑してる。さりげなく祥子の隣を譲ってあげるあたり、拝島さんってば少年のような顔に似合わずオトナだなぁ。
って、そういえば朽木さんと真昼はどこへ?
あたしはキョロキョロと周囲を見回し、二人の姿を探した。すぐに居場所は分かった。キッチンの方から声がする。
「このセラミック包丁、凄い切れ味。朽木さんてどれもいい物使ってるんですね」
「道具はいい物を使った方が長持ちするからな。手入れも簡単でいい」
「ふふっ。いい主夫になれますね」
「そう言われて喜ぶ男はあんまりいないだろ……」
な、なんかいいムードじゃない?
調理道具や料理の話で盛り上がってる。二人とも料理上手だから納得ではあるのだけど。
朽木さん、女嫌いのくせに、真昼には普通に接してる。ドーユーコトデスカ? 他の女には爽やか笑顔バリアで寄せ付けないようにしてるのに、真昼には妙に優しくナイデスカ?
見た目がいいなら男でも女でもいいんじゃないの実は。単なる面食いだよ朽木さん!
「栗子ちゃん、どうしたの?」
背後から声をかけられてぎくっと強張った。は、拝島さん、なんちゅータイミングでっ。
朽木さんと真昼がこちらに気付いて振り返る。
だ、大丈夫。盗み聞きなんかしてないもん。たまたま居合わせただけだもん。平常心平常心。
キッチンとリビングの境目で立ち尽くしてたあたしは背後の拝島さんを振り返り、さも今来た風を装って言った。
「あたしもお茶欲しいな〜と思って」
「ちゃんとテーブルに人数分出しておいただろう」
朽木さんに即ツッコミされる。そ、そうだったっけ? そう言われてみればリビングのテーブルにティーカップがいっぱい出てたような気もするけど。
「コ、コーヒーが飲みたいの!」
「我がままな奴だなまったく」
顔を不機嫌そうにしかめてぶちぶち言いながらコーヒー豆を棚から取り出す朽木さん。あたしに背を向け、コーヒーミルで豆を挽き始める。
ほっと息をつくと、こっちに顔を向けたままの真昼と目が合った。
くすり、と意味深な笑みを浮かべられる。
な、なんでそんな目で見るのかなっ。あたしは朽木さんのストーカーなんだから、朽木さんの後をつけ回すのはいつものことだもん。
なんだか落ち着かなくなってリビングの方に足を向けた。
「もしかして俺、悪いときに声かけちゃった……?」
拝島さんが小声で話しかけてくる。
「いーえ全然っ!」
ホントに全然、これっぽっちもやましいコトなんてしてませんから!