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南国の魔法  作者: ありま氷炎
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奇跡の星の力

風で木々は吹き飛ばされ、土や石が空を舞う。

「ケンジ!」

白い精霊アクアは金の光の壁をケンジとユリの前に作った。竜巻は光の壁に当たり、別の場所にいたナジブ達に向かって飛んでいった。ナジブはウェルザを守るようにぎゅっと抱きしめた。竜巻が二人を襲い、ウェルザを抱いたナジブの体がゆっくりと宙を舞う。

「レン!」

 ケンジは慌ててそう叫ぶが風の精霊フォンと対峙してる木の精霊レンの反応は遅かった。しかしナジブ達が地面に激突することはなかった。木々が優しく彼らの体を受け止めていた。その木々の側には木の杖を持ったルドゥルがいた。

「マスター……」

 ナジブは驚いてルドゥルを木々の上から見た。ルドゥルは鼻を鳴らすと踵を返して、戦いの方に目を向けた。


 ルドゥルがウェルザを助けた?


 ケンジはルドゥルを見つめた。しかしその表情から何も読み取ることはできなかった。

「山元くん、戦闘中によそ見をしてるとは余裕だね」

 タカオの声がすぐ側で聞こえた。反射的に体をそらすと風の剣が宙を切った。

 ケンジは水の剣を握り直した。


 考えごとをしてる暇はない。

 武田係長は僕を殺す気だ。


 ユリはタカオに向かって火の矢を放った。

「2度と同じことはさせないわ!」

 矢がタカオに届く前に火の精霊カーナがその火の鞭で矢を破壊する。

「丁度いい機会だわ。アンタを焼き殺してあげる」

 カーナは火の鞭を両手で握ると微笑みを浮かべた。

「ユリ!」

「山元くん、君の相手は僕だよ」

 ケンジはユリの元へ行こうとしたが、風の剣を持ったタカオがそれを阻む。

「行くわよ」

 カーナはユリに火の鞭を振り下ろす。

「?!」

 しかしその鞭は別の火の鞭によってからめとられた。カーナは驚いて鞭の主を探した。その先にはアクアによく似た橙色の精霊がいた。

「火、ワタシが相手になるわ」

 橙色の精霊は微笑を浮かべると火の鞭を捨てた。

「水?!」

 カーナは自分の目が信じられなかった。そして驚いたことにルガー達の側にはもう一人の精霊がいた。それは黒い炎を身にまとう黒の精霊アクアだった。

「驚いた?奇跡の星のかけらでワタシはアナタ達の力をすべて使えるし、分離することもできるの。火、自分の力を試してみる?」

 橙色のアクアはそう言うと手の平に炎の塊を作りだした。


 ベノイは自分の側に先ほどまでいた白い精霊アクアが光を放ったかと思うと黒の炎を纏う姿に変化したのに驚いていた。しかもケンジ達の側にはもう一人の橙色のアクアがいた。

「ま。いいか。これで完全に互角というわけか」

 ベノイのつぶやきを聞いて黒のアクアは不敵に笑った。

「いいえ、互角じゃなくて。上なのよ」

 黒のアクアは黒の炎を作り、別の手で氷の槍を持った。その横でベノイも金の剣を構える。

「面白い。上とはな。魔族のわしを見くびっているようだな」

 ルドゥルはそう言いながら木の杖を構え、ルガーはその手に黒い炎を作り出した。金の精霊フィーナは珍しく顔を強張らせて、戦局を見ていた。

「だめよ……」

 ナジブはウェルザを木の上から降ろしながらそんなつぶやきを聞いたような気がした。ウェルザは地面に降り立つと戦いの場へ走り出した。

「ウェルザ!」

 ナジブがその後は追いかける。黒い炎がルドゥルの前に立ちふさがったウェルザを襲うのが見えた。ナジブは咄嗟に跳び、ウェルザを炎からかばった。

「ナジブ!!」

 ナジブの体が黒い炎に包まれた。そして黒い炎の中からサミーの姿と一匹の狐が姿を現した。

「う、うわああ!!」

 サミーは近くにいるルドゥルや精霊達の姿を見ると悲鳴を上げて森の中へ逃げ出した。残された狐はその茶色の瞳をウェルザに静かに向けた。

「ナジブ……」

 ウェルザは元の狐の姿に戻ったナジブをそっと抱きしめる。

「一体……なんなんだ」

 ベノイは突然のことに驚きを隠せなかった。

「わしの魔法が黒い炎で解けたか」

 ルドゥルはそう言うとベノイ達に目を向けた。

「まあ、いい。元に戻っただけだ。ルガー、フィーナ、行くぞ」

 ルドゥルはそう声をかけると木の杖を構えた。



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