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南国の魔法  作者: ありま氷炎
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奇跡の星のかけら

「これでわしは3つの精霊を得たわけだな。あのひとつもいただくぞ。ディーア、水の精霊を捕まえろ」

 ルドゥルの言葉に木の精霊ディーアは水の精霊アクアを捕まえるため、その枝を蔦のように伸ばした。

「捕まるもんですか!」

 アクアは氷の槍をディーアに向かって投げるとケンジのところに飛んだ。

「ケンジ、ワタシに力を!」

 そう言ってアクアはケンジに口づけた。ユリはそれを横目で見ながらも唇を噛むと火の弓矢を構える。

「絶対絶命って奴か」

 べノイはその表情に焦りの色を浮かべたまま、金の剣を握り直した。

 ケンジは隣の立つアクアを見た後、ユリを見た。ユリはぎこちない笑みをケンジに向ける。


 僕らに残ったのはアクアのみ……

 魔族が持つ精霊は3つ。

 そして武田係長が2つか……

 圧倒的に不利だ。


 ケンジは水の剣を構えながら、正面を見つめた。

 金の精霊フィーナはルドゥルに近づき、その怪我を癒していた。その横でルガーはこちらを静かに見つめていた。大木のディーアは氷の槍に切られた枝を再生していた。


 そうだ!

 あれがあった。

 精霊の力を増大させるという奇跡の星のかけら!


 ケンジはポケットから小さな石のかけらを取り出した。


「ケンジ!いいものもってるんじゃない。ちょうだい!」

 アクアは嬉しそうに微笑むとケンジの手の平からそれを奪い、一気に飲み込んだ。


 次の瞬間、その体から白い光が放たれた。ケンジは眩しさのため目を閉じる。


「水の奴っつ!」

 地面に降り立とうとしていた火の精霊カーナは悔しそうに叫んだ。

 アクアを中心に光が森全体に広がる。森のすべてのものが光の中に飲みこまれた。


 数秒後、強烈な光が弱まったのを感じで、ケンジはゆっくりと目を開けた。

 森は元の暗さを取り戻していた。ただ隣に白い光を放つ精霊がいて、ケンジに向かって微笑みを浮かべていた。

「アクア…?」

 瞬きしながらケンジは自分の側の精霊にそう呼びかけた。

「そうよ。驚いた?今のワタシなら5つの精霊の力すべて使えるわ。木も金も取り返してあげる」

 白い精霊アクアは妖艶に微笑むとその手の平に黒い炎を作りだした。

「行くわよ!」

 アクアはそう言うと黒い炎をルドゥル達に投げた。

「くそっつ」

 ルドゥルは木の杖で地面に叩き、木の根を使ってその炎を消そうとするが、魔法の力を無効にするので伸ばされた木の根は黒い炎に触れると消滅した。ルガーはその手に黒い炎を作り投げつけ、炎を相殺する。しかしアクアは間髪いれず、次の黒い炎が放った。炎がディーアに当たる。そして黒い炎の中でディーアは大木の姿から本来の精霊の姿に戻った。

「今よ!ケンジ!」

「木の精霊レン、僕の元に戻って!」

 ケンジは誰よりも早く、そう叫んだ。すると木の精霊は緑色の光を放ち少女の姿、レンになった。

「ありがとう!」

 少女の姿になったレンはガルレンに似たその顔に満面の笑顔を浮かべた。


「アタシが使ったらもっとすごかったのに」

 カーナは白い精霊となったアクアの力を見せ付けられ悔しげにつぶやいた。

 タカオは風の剣を構えて攻撃に備え、風の精霊フォンは目前の戦いをじっと見ていた。


「ケンジ、火も側にいるみたいだわ。全部ケンジのものにしましょ」

 アクアは力を使いたくてたまらないようで楽しげにそう言うとタカオ達に向けて黒い炎を放った。タカオをそれを剣で叩き切る。

「カーナは誰にも渡さないよ」

 タカオは目を猫のように細くして笑った。


「ルガー!今だ。あの白い精霊を狙うのだ!」

 ルドゥルの言葉にルガーは黒い炎をアクアに向けた放った。しかしそれをべノイが真っ二つに割る。

「カリンを返してもらうぜ。アクア、火の精霊は後でいいから。カリンのことを頼む」

「わかったわ」

 アクアは視線をカーナから金の精霊フィーナに戻してそう答えた。

「いくわよ!」

 そして黒い炎を少女の姿のフィーナに向けた放った。

「ルガー!」

 ルガーはフィーナの前に立つと、黒い炎を発生させ相殺した。アクアは残念そうな表情をみせたがすぐさま、次の黒い炎を投げはじめた。

 ルガーは両手で黒い炎の壁を作り、アクアの炎を必死で受け止めていた。

「今しかないぜ」

 べノイは金の剣を握るとルガーに向かって跳んだ。

「わしがいることを忘れているようだな」

 ルドゥルはべノイの剣を木の杖で受け止めた。

「フィーナはやらぬ」

 べノイを睨みながらルドゥルはそう言った。


「山元くん、君が死ねば、水も木も僕のものになるよね」

 タカオはケンジに対峙して風の剣を構えた。その横ではカーナが火の球を手の平に作りだし、いつでも放てるようにしている。

「そんなこと、ワタシがさせません」

 レンはケンジの前に立つと大木に変化した。

「風、ほらアンタのお出ましよ。」

 カーナがため息をつくと、後ろに控えるフォンに顔を向けた。

「フォン、君の恋人のことを頼むね」

 タカオはそう言うと、ケンジ達を見つめた。


 フォンはゆっくりと大木になったレンの前に舞い降り、対峙した。

「木、結局オレは何もできなかった。そしてこうしてまたオマエと戦わないといけない」

「そんなことないわ。風。アナタが来てくれたおかげでワタシはケンジの元へ帰ることができた。でもワタシはあなたの契約主が許せないの」

 レンは木の姿のままフォンに語りかけた。

「石が集まり、泉が破壊されればこんな馬鹿げた戦は終わる」

「そうね……」

 レンはその枝を伸ばし攻撃に備え、フォンは攻撃を避けるために構えをとった。


「武田係長……。どうしても戦わないといけないんですか。」

 ケンジは水の剣を構えながらそう聞いた。これまで何度も戦ってきた、今さら馬鹿な質問だと思ったがケンジが聞かずにはいられなかった。

「僕はこのタカオっていう心にうんざりなんだ。わずらわしい。失ったものの泉を破壊して、タカオの心を消し去るつもりだ」

 タカオはそう答えると、風の剣を両手で握った。

「おしゃべりは時間の無駄よ。タカオ、水が土と遊んでるうちにさっさとやっつけましょうよ」

 カーナはつまらないそうにそう言って、火の鞭を作り出した。

「そうだね。時間の無駄だ」

 タカオは目を猫のように細くして微笑むと風の剣をケンジ達に向けて振り切った。剣から竜巻が発生してケンジ達を襲う。




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