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南国の魔法  作者: ありま氷炎
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サミー


 ふいに店内に光が溢れる。そして光が治まり二人の人間と二つの精霊が姿を現した。その人間の一人、ユリはケンジの姿を見ると開口一番、怒鳴り声をあげた。

「ケンジ、抜け駆けするのはひどいわよ!」

 ケンジはユリに叱られ、顔を曇らせる。ベノイはそんな二人の様子に構うことなく、自分が求める存在が見当たらず訝しげに首をひねる。

 しかし、周りの状況を見ると顔を引き締めた。

「なんだかおかしな連中に絡まれてるみたいだな」

 詮索は後だと金の剣を構える。その横でユリも火の弓を握り、矢を放つ準備をした。

「これで3つ目の精霊か……。今はこれで十分だ」

 男はナイフを腰に収めると、宙に手をかざす。すると他4人の若者が急に力を失い倒れこんだ。それから数秒遅れて主犯格のその男自身も意識を失った。



 ウェルザと別れた後、サミーはシランの町外れの古ぼけた家の地下に来ていた。

 地下を照らす明かりは蝋燭しかなく、サミーの目の前の男を照らすのみだった。

「サミー。土の精霊の石はどうだ?」

 男ーー浅黒い肌に金色の髪を持つ男は木の椅子から立ち上がり、サミーにそう尋ねる。

「あるところはわかっております」

 サミーは男にそう答え頭を垂れた。男はその手にある杖を振り回すと、サミーの首筋に当てる。

「今日は3つの精霊を見たぞ。残り2つの精霊も時期に現われるだろう。首尾は整ってるか?契約される前に、わしの元へ土の精霊の石を持ってくるのだ」

「今宵、石を手に入れてみせます」

 サミーは俯いたままそう答えた。男は杖を構えなおす。

「この日を長らく待っていたのだ。わかっておるな」

「わかっております。マスター」

 サミーは立ちあがると、男に一礼をしてその場を立ち去った。



 若者たちは意識を取り戻し精霊を連れるケンジ達を見ると、悲鳴を上げて店から逃げ出した。

「覚えてないみたいね?」

「そういうことだよね」

 ケンジとユリは顔を見合わせてそう言う

「まあ、逃げたならいいんじゃないか。それよりだ。なんでカナエがいないんだ?」

 ベノイの問いにケンジはため息をつくと話し始めた。



「くそ、あのやろう!」

 ケンジの話を聞くと、ベノイがそう吐き捨てた。

 人気のない店の中でベノイの声が響く。店にお客が戻ってくる様子はなかった。

「俺が行って、カナエを助けてくる!」

 ベノイは怒り心頭でそう言うと、カリンをつれて飛ぼうとした。

「ベノイ!今下手にいくと上杉さんは殺されるわよ」

 ユリはベノイの腕を掴んだ。

「あの上杉さんに似た火の精霊は、明らかに上杉さんを毛嫌いしてるわ。今行けば殺す動機を与えるようなものだわ」

「ユリの言うとおりよ。火はカナエが嫌いだから、この機会にどさくざに紛れて殺すはずよ」

 水の精霊アクアは腕を胸の前に組んで頷く。

「でも、後から行っても一緒だろうが!」

 ベノイは苛立ちを見せながらユリの手を振り払う。

「それはそうだけど……」

 べノイの言葉にユリは親指を噛むことしかできなかった。

「土には契約解除の力がありますわ」

 ふいに、それまで静かに見守っていた金の精霊カリンが口を開いた。

「どういうことだ?」

「土の精霊は土を扱う能力のほかに、魔法を無効にする能力があるのです。その力があればタケダに契約された風と火を解放し、こちら側につけることができるでしょう」

「なんか、反則技みたいな魔法だね」

 ケンジは驚いてそうつぶやいた。

「バルーの戦いでは使わなかったわよね?」

 アクアが疑わしい目でカリンを見た。カリンをはアクアに微笑みを向けた。

「必要なかったからです。貴方側の統制のとれてない攻撃にわたくし達は簡単に勝てましたので」

 カリンの言葉にアクアの顔が引きつった。


 やっぱり姉弟だ。あの銀の精霊と似てる気がする。


 ケンジは心の中で苦笑した。

「まあ、まあ。アクア!とりあえず、土の精霊と契約すれば勝ったも同然なんだよね」

 ケンジはアクアの機嫌をとるように笑顔を浮かべた。

「そうだよな。じゃあ、早速土の精霊の石のところへ行こうぜ。明日の夜までに契約しなきゃ、カナエが殺されちまう」

 ベノイは椅子から立ち上がると金の剣の柄を握る。

「そうね。早速探しに行きましょ。場所は分かってるんでしょ?」

 ユリはケンジの顔を覗き込んで聞いた。

「うん、でもそれが……」

 ケンジは至近距離でみる彼女の顔に一瞬見惚れた後、言いずらそうに口を開いた。

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