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南国の魔法  作者: ありま氷炎
金と銀
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金の精霊をかけた遊戯

「お母さん、あそこ!」

 金色の髪を二つに分けて結び、大きな緑色の目をした8歳前後の少女が遠くに見える街路樹を指差した。その隣にいた少女の母で、同じく金色の髪、緑色の瞳をもつ女性が少女の声に反応して、その方向を見た。すると何かが落ちているのが視界に入る。近くに行くとそれは鳥で、羽から血を流しており、泥にまみれて汚れていた。

「お母さん、鳥さん、怪我してる。家に連れ帰って手当てしてもいい?」

「そうね……。いいわ」

 母親のエンは少し考えた後、娘のメイに微笑んでそう答えた。メイは嬉しそうに笑うと自分の服が汚れるのも構わず、鳥を抱きかかえると家に向かって歩き出した。



「なんでワタシ達がアイツと仲良くテーブルを囲む必要があるの?!」

「タカオ!アイツ殺してもいい?」

 水の精霊アクアと火の精霊カーナがいがみ合う中、ケンジ達とタカオ達は長細いテーブルに顔を突き合わせて座っていた。

「お待たせしました。お茶をお持ちしましたよ。精霊さん方は何か飲まれますか?」

 アドラン王―センリャンはそう言ってにこやかに微笑む。


 金の精霊の石を見せる条件ということで一時休戦をしてお茶を飲むことになった。ケンジとユリは戸惑いながら、タカオはカナエを見つめながら楽しそうにお茶を飲んでいた。カナエはタカオの視線を避けながら出されたティーカップを掴み口につけ、ベノイはその横でタカオを睨んでいた。

風の精霊フォンは木の精霊レンを見つめて嬉しそうだった。


「タカオ、アタシ耐えられないわ!」

 カーナは苛立ち交じりにそう言うと石の姿に変化した。タカオはカナエに視線を向けたまま、その赤い石を手元に引き寄せる。カーナは石の姿のままでもタカオに抗議してるのか光を受けてきらきらと輝いていた。

「ケンジ、ワタシも無駄に体力消耗したくないから戻るわね」

 アクアもため息をつくと石の姿に戻り、ケンジはその青い石を素早く拾ってポケットに入れた。


 いったい、王様は何を考えてるんだろう。

 戦うよりはずっとましだけど……


「風……」

「何だ?木」

 フォンは少女姿のレンに笑いかける。傍から見たらかどわかしをする男と狙われる少女のように見えた。

「ごめんなさい。私も石に戻るわね。あの男の顔を見るだけでガルレンを思い出して気分が悪くなるの。風とゆっくり話したいのはやまやまなんだけど」

「木!」

 フォンが止めるのを聞かず、レンはそう言うと緑の石の姿に戻る。ケンジは慌てて、その石を回収し、フォンが舌打ちをしてケンジを見た。


 この精霊ってレンの恋人だったんだっけ。かっこいいけど怖いよな。

 って、いうか、こうしてテーブルを囲んで座ってると昨日までの緊張感がなんだったのかと思えてくる……


 ケンジが不可解な表情をしている隣でユリも同様に違和感を感じてるらしく、戸惑った表情を浮かべてお茶を飲んでいた。


「で、王様。石を早く見せてくれないか?」

 ベノイはおかしな状況にしびれを切らせて口を開いた。カナエがタカオを意識しているのを見るのがベノイは苛立たしかった。またタカオがカナエを見つめる視線にもベノイは頭に来ていた。


「わかりました。いいでしょう」

 センリャンはそう言うと席を立ち、奥の部屋から真っ黒だが黄金の装飾がされている小箱を持ってきた。

「これが金の精霊の石です」

 センリャンが小箱を開けると黄金に輝く石が現れた。

「ふん、こざかしい。魔法がかけてあるわね」

 カーナは人体化しながらそう言った。

「魔法、ガルレンの時と一緒か。王様、魔法をとく呪文を教えてもらえますか」

 ケンジがそう聞くとセンリャンはおかしそうに笑った。

「そう素直にお教えすることはできません。大事な精霊様なので」

 センリャンの言葉にタカオは目を細くする。

「ふん、もったいぶるわね。タカオ、こんな奴痛めつければ、きっと吐くわよ」

 カーナはいつものように火の鞭を作り出し、両手で握った。それを受けて、アクア、レンも人体化する。

「私は死んでも教える気はありません。殺しても無駄ですよ。私が死んだら魔法は永遠にとけることはないでしょう」

 センリャンの言葉にカーナは火の鞭を手から消滅させた。

「なにか条件があるんだね」

 タカオは猫のように目を細くしたままセンリャンに笑いかける。

「そうです。私の願いをかなえてくださった方に石と魔法を解く呪文を教えてあげましょう」

「願いとはなんだ?」

 それまで黙っていたカナエがセンリャンを睨みながら聞いた。

「私の逃げてしまった大事な鳥を探して連れてきてほしいのです」

「鳥?!」

 ベノイはセンリャンの言葉に口に含んだお茶を吐きそうになった。

「鳥と言っても特別な鳥です。この世に一つしかない黄金の鳥です。」

 センリャンはべノイに冷たい視線を向けながらそう続けた。

 そんな鳥どうやって探すんだ……。

 だいたい何のために??

 ケンジは訝しげな視線をセンリャンに投げかけたが、センリャンはただ笑みを浮かべるだけだった。

「ふ~ん。黄金の鳥ね。わかったわ。タカオ、さっさと行きましょ。鳥なんてその地図があればすぐ見つかるわ」

「そうだね。ぐずぐずしててもしょうがないし」

 タカオは名残惜しそうにカナエを見ながら立ちあがった。

「じゃ、上杉、山元くんたちも。またね」

「水、今度こそは追い付けないわよ」

 カーナはアクアに舌を出すと、タカオの首筋に抱きつき、火の塊になるとあっという間にその場から消えた。

「しょうがないな。じゃあ、木。またな」

 フォンは舌打ちするとカーナを追って宙に消えた。

「火!頭に来るわ。ケンジ。早く追いかけましょ!」

 アクアはケンジ達の返事を待たず、移動するためさっさと水の塊になった。

「ちょっとまっ」

「え、まだ、お茶もったまま!」

 戸惑うケンジ、ユリの言葉を聞かず、その水の塊はケンジ達を包み、光と共に宙に消えた。


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