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南国の魔法  作者: ありま氷炎
金と銀
57/151

アドラン王センリャン

「レン、風の精霊の気が探れる?」

「そうですね………」

 木の姿から、少女の姿に戻った木の精霊レンはケンジの問いに宙を見上げた。

「わかりました。ここから北のアドランに飛んだようです」

「レン。ありがとう。それじゃあ、みんな準備はいい?」

 ケンジは皆の顔を見つめてそう言った。するとナトゥは眉間にしわを寄せて口を開いた。

「ケンジ、すまぬが………。わしはここに残る。やはりダリンを残してはいけないのじゃ………」

 ナトゥは神殿の方を心配気に見つめた。

「大丈夫です。僕達だけでなんとかなります。ナトゥはここでダリンさんと待っててください」

 ケンジはそう言ってナトゥを安心させるために笑った。側にいたユリもカナエも同意するように頷く。

「ナトゥ。悪いが、母を頼む。俺は皆と一緒に行きたい」

 ベノイは申し訳なさそうにナトゥを見た。その顔は父親に許しを請う子供のようだった。ナトゥは微笑みを浮かべた。

「心配ないぞ。わしがしっかりダリンを見とくからな。安心して戦ってくるのじゃ」

 そう言ってナトゥはベノイのたくましい肩を叩いた。ベノイはナトゥに嬉しそうに笑い返すと金の剣を鞘におさめた。

「じゃあ、早速行きましょ。ヤツラが金の精霊の石を見つける前に止めないと」

 水の精霊アクアはそう言うと宙を見上げ、皆を移動させるために水の姿になった。

「そうだね。行こう」

 ケンジのその言葉を合図に、液体になったアクアはナトゥを除く一同をその体で包んだ。そして宙に浮かぶと光と共に消える。

 ナトゥは眩しそうに消えた光を見つめると、急ぎ足でダリンの待つ神殿へ戻った。



「ここに金がいるの?」

 火の精霊カーナが光り輝く金の宮殿の中でぼやいた。悪趣味な宮殿だった。いたるところに金箔がはられたおり、置かれている犬や猫、亀の銅像なども似合わないのに金色に光っていた。

「主の趣味がわかるな」

 そう声がして風の精霊フォンが現れた。

「どんな人が王様か楽しみだね」

 武田タカオは楽しそうな笑みを浮かべると、地図を見ながら歩き出した。3人がしばらく歩いたところで声がした。

「誰だ?!」

 宮殿の近衛兵か制服を来た男がタカオの前方に現れた。男はどうみても人間ではなさそうな色彩をもつカーナとフォンを見ると顔を強張らせた。男の声を聞いて数人の男が集まった。皆同じ制服を着ていたが、金髪に青い眼の人形のような姿でとても兵士とは言えない面々だった。

「あー、気持ち悪い。みんな同じ顔に見えるわ。きっと王が嫌な趣味をしているのね」

 カーナは嫌そうな顔をして男達を見ながらそう言った。

「なんだと!」

 男の一人がその言葉に噛みつくように叫んだ。

「ふん」

 カーナは鼻を鳴らすと火の鞭を作り、男に振り下ろした。

「ぎゃああ!!」

 男の体が炎に包まれる。男は悲鳴をあげながら走りだし、その先で力尽き倒れた。嫌な匂いが周辺に漂う。

 他の男たちは男の黒焦げになった死体をみて、青白くなっている。しかし逃げ出すものはいなかった。

「まあ。逃げないのね。一応近衛兵だけはあるわね。どう?試してみる?」

 カーナは火の鞭を両手で握り、妖艶に笑いかけた。


 その時、ふいに眩い光が頭上に現れた。

「ちっ、意外に早かったわね。」

 カーナは舌打ちをして男達から光のほうへ目を向けた。


「追い付かれちゃったか。残念だね。」

 現れたケンジ達をみてタカオはつぶやいた。その顔は言葉とは裏腹に嬉々としている。フォンはレンの姿を見ると嬉しそうに微笑んだ。

「ま、いいわ。さっきは消化不良だったから、今度はぞんぶんに痛めつけてあげるわ」

 カーナはユリを見ながらそう言った。ユリはその視線を見つめ返すと弓を持つ手に力を込めた。ケンジはユリを守るようにその前に立ち水の剣を構える。

「今度は僕がそうはさせない。アクア」

 ケンジの呼び掛けにアクアはケンジの側で氷の槍を作り、カーナに向けた。


「上杉。今度こそ殺してあげるよ」

 タカオは風の剣の剣先をカナエに向けてそう言った。カナエは唇を噛むとタカオを見上げて、無言で構えを取った。

「残念だな。俺がカナエよりも先にお前の相手をしてやるぜ」

 ベノイはカナエの前に立ち、タカオを睨んだ。タカオはベノイに冷たい視線を向ける。

「嫌な男だ。あいつに似てる……」

 タカオはそうつぶやくと風の剣を両手で握り、ベノイに向かって振り下ろした。風が巻き起こるが、ベノイが金の剣を立てに構えるとシールドのようなものが発生し、風からベノイ、その後ろのカナエを守った。

「へぇ。金の剣ってこう使うのか」

 ベノイが嬉しそうな声をあげ、タカオは珍しく苛立った顔を見せた。


「木……。オレは本当にオマエと戦いたくないんだ。このままオレ達の石集めを黙って見ていることはできないのか」

 フォンは少女姿のレンに向かって優しく語りかけた。

「ごめんなさい。ワタシはどうしてもあの男、アナタの契約主が許せないのよ」

 そう言ってレンは木の姿に変化した。フォンはため息をつくと、構えを取った。


「あらあら、こんにちは。精霊さん達ですね」

 場にそぐわない呑気な声がして、王冠をかぶった男が現れた。

「私の宮殿で騒がないでくださいね。ほら、貴方達も何をぼさっと見ているのです。」

 その男は近衛兵達にそう言ったが、普通の人間に精霊達の戦いを止めることができるはずもなく、近衛兵はただその場に立つ竦むことしかできなかった。

「しょうがないですね。皆さん」

 男は手を叩いて、そうケンジ達に呼び掛けた。

「金の精霊の石をお探しですよね?」

 その言葉に一同の動きが止まる。

「やっぱりそうですね。皆さんが最近世界を騒がしている方々ですね。ジャラン、クラン、ロウランでの噂は聞いておりますよ。大変ご活躍されているようで……」

 男はケンジ達の視線に笑顔を見せながらそう続けた。

「私は伝説の戦士センミンの子孫で、センリャンと申します。この国、アドランの王でもあります」


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