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南国の魔法  作者: ありま氷炎
金と銀
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復活したタカオ

「満足しましたか?」

 ふと声がしてタカオは目を覚ました。

 目の前には銀色の長い髪に冷たい銀色の瞳をもった男が立っていた。

 周りはただ白い空間で何もなかった。

「僕は死んだのか?」

 タカオの問いにその男―銀の精霊は笑った。

「死にたいですか?」

「まさか、まだ終わってない。この体にはまだ忌まわしい武田タカオの心が残ってるし、まだまだ壊し足りない」

 タカオは白いベッドから起き上がると男を見上げて目を猫のように細くして笑った。

「そう言うと思っていました。私はあなたに一度だけ借りがあります。それを返すために今日はやってきました。命を助けてあげましょう」

「借り?」

 タカオの記憶にこの男の存在はなかった。

「あなたが小さい頃のことです。覚えてないでしょう。まあ、これで借りは返しました。そろそろ目覚める時間です」

 銀の精霊がそう言って目を細くして微笑むと、タカオの視界が急に真っ暗になった。そして気が遠くなり、その場に倒れこんだ。銀の精霊はタカオをそっとその手に抱き抱えた。

「銀、これで最後だ。人間の世界への介入は」

 静かだが有無を言わせない威圧的な声が真っ白な空から降ってきた。

「わかっております。わが神よ」

 銀の精霊は声にそう答えるとタカオを抱え、白い空間から煙のように消えた。




 神の水をタカオに飲ませて、数時間が経過していた。

 目を覚ます気配はなく、ただ時間だけが過ぎていた。

 火の精霊カーナは親指を噛んで、ただじっと苦しんでいるタカオを見ていた。


 ふいに変化が起きた。


 タカオの呼吸が静かになり、苦しげにベッドでのたうちまわることがなくなった。

 そして汗が引いた。


「カーナ?」

 ベッドの上のタカオが目を開き、火の精霊カーナを見つめていた。その目にはいつもの強い光が宿っていた。

「タカオ!」

 カーナはベッドで横になるタカオに抱きついた。

 タカオは抱きついて来たカーナを抱えながら、体を起こした。

「僕はどれくらい寝ていたんだ?」

「一日半くらいかな」

 風の精霊フォンがあくびしなから答えた。

「オマエが寝てるおかげで自由に動けなかった。本当契約などしなければよかった」

 フォンの言葉にカーナは顔を上げ睨みつけた。

 タカオは笑って背伸びをした。そして体に巻きついている包帯を外していく。包帯を外された体に赤い火傷の後が無数に残っていた。

「なんだか、すっかり醜くなっちゃって。まあ、僕らしいけど」

 自分の体を見ながらタカオは微笑んだ。その頬にも刺青のような赤い火傷の後が見て取れる。

「さあて、回復祝いの挨拶でも行こうかな」

 タカオが目を輝かせてそう言うと、フォンが壁から身を起こした。

「でも、その前に」

 カーナはタカオに上着を羽織らせながら、その唇に深く口づけた。

「う~ん。タカオの精気はやっぱりおいしいわ」

 その唇から名残惜しそうに唇を離してカーナはそう言った。

 フォンはそれを見て、忌々しそうに舌打ちをした。

「うらやましい?アンタも力がないんでしょ。もらったら?」

「男とキスするのはごめんだ」

 フォンはカーナを睨みながらタカオの唇に手を当てた。

 そして手に集まった精気を自分の口に入れた。

「味は悪くないな」

 偉そうにそう言うフォンにカーナは鼻をならし、タカオを見つめた。

「じゃ、早速行きましょうよ。アイツラに思い知らせてやるわ!」

「カーナ。今回の目的は山元くんが持っている地図だからね。地図をもらったら帰るよ」

 いきり立つカーナにタカオは静かに言った。

「リベンジしないの?だってタカオの体をこんな風にしたのに!」

 カーナは不満そうな顔をタカオに見せた。

「カーナ。今の僕らは互角、もしくは負けるかもしれない。僕は負ける戦いはしない主義なんだ。地図さえあれば次の精霊の石を見つけるのは簡単だからね。」

 タカオはむくれるカーナにそう言った。

「ま、そういうことだ。オレも無駄に木と戦いたくはない。さっさと石を集めて、失ったものの泉を破壊し、石から解放させてやりたいしな。」

 フォンは皮肉気な笑みを浮かべてカーナを見た。

「ふん、わかったわよ。リベンジは次ね。じゃ、早く行きましょうよ」

 カーナは鼻を鳴らすと戦いが待ちきれないのかその手の平に炎を発生させ、くるくると器用に回した。

「フォン、水の精霊か、木の精霊の気を探れる?」

「だめだな。石の姿らしい」

 宙を少し睨んで気を探った後、フォンはため息交じりにそう言った。

「じゃあ、奇跡の星のかけらの気を探ったらいいわ。アタシ達の気が入ってるから簡単にさがせるはずよ」

 手の中の炎をもみ消し、腰に手を当てた偉そうな態度のカーナが気に食わなかったが、木の精霊に会えるのは嬉しいことなのでフォンは言われた通り気を探った。

「あった!飛ぶぞ」

 フォンはそう言うとタカオを掴み、宙に消えた。

「風!もうまったく。木のこととなるとせっかちなんだから。」

 カーナはため息をつくと、風の剣を握り、火の塊に変化して宙に消えた。


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