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南国の魔法  作者: ありま氷炎
風と木
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木の精霊の石を探して

「やっぱり行くのか?」

 銀色の髪と白い象牙のような肌を持つ青年はたずねた。

「ええ。神の命令には逆らえないわ。でも心配しないで、ワタシって人間の世界が大好きなの。今から楽しみだわ」

 そう笑顔で答えたのは緑色の長い髪に、エメラルドの宝石のような瞳をもつ女性だ。


 彼らは神と精霊の世界に住む精霊だった。

 神の意志により5つの精霊が選ばれ、人間の世界に降りることになっていた。精霊達は神の許可なしに人間の世界に降りることは禁止されていた。


 緑の髪を持つ女性、木の精霊は選ばれたことが嬉しかった。

 彼女は何度か降り立った人間の世界に興味があり、そこで生きる人間達が好きだったのだ。


「役目が終わったら、すぐ帰って来いよな。オレは待ってるから」

 名残惜しそうに銀色の髪を持つ青年、風の精霊は自分の恋人を見つめた。

「ええ、すぐ戻ってくるから」

 木の精霊は恋人の悲しそうな顔に軽くキスをすると、微笑みを浮かべて、神のいる場所へ飛んでいく。


 彼らは人間の欲深さを知らなかった。

 そして神が怒りのあまり、人間の世界を見棄て、人間の世界と神と精霊の世界を、完全に切り離すことになるとは予想もしていなかった。



「ケンジ、早く来なさいよ!」

 ユリは道の真ん中できょろきょろしている元ケンジを呼んだ。

「本当どんくさいんだから。あの戦いでかっこいいと思ったのはやっぱり間違いだったかしら?」

「え?なに?」

 ケンジは慌ててユリの元に走り寄ったがユリの言葉がはっきり聞き取れなかった。

「なんでもないわよ。で、地図ではどうなってるの?」


 ケンジとユリは森の都――ロウランに来ていた。

 目的は木の精霊の石を探すことだった。

 カナエの腕の傷が思ったより深かったため、その傷の完治を待つことより、先に行動することになったのだ。

 そして選ばれたのがケンジとユリだった。

 ケンジは水の精霊の力を得ているし、しっかりもののユリが一緒なら大丈夫だろうとベノイの判断だったのだが、ケンジ達にはどうみてもベノイがカナエの世話を、したがっているような気がしてならなかった。


「え~っと地図上では……、動いてる?」

 ケンジは茶色の地図を広げてびっくりして声を上げた。いつもなら目的地を指すはずの矢印が絶え間なく動いていた。

 ケンジ達が止まっているのだから、目的地つまり木の石が動いているということになるのだ。

「ああ、きっと石の持ち主が移動してるのね」

 ケンジのポケットから声がして、水の精霊が現れた。

「え、ちょっと人体化しないでよ。目立つし、火の精霊に気配悟られたどうするの!」

 ユリは慌てて青色の髪に瞳をもつ美少女――水の精霊アクアに小声で注意した。

「はい、はい」

 アクアは面白くなさそうな顔をしながらも素直に石の姿に戻った。ケンジはすばやく青い石を拾うとそっとポケットに入れた。


 本当ユリは、がみがみうるさいわよね。ね?ケンジそう思わない?


 アクアは石の姿のまま、ケンジの脳裏にそう話しかけたので、ケンジは思わず苦笑せずにはいられなかった。


「何笑ってるのよ。ケンジ」

 ユリがきっとケンジを睨みつけた。

 あの戦闘の後から、ユリはケンジを名前で呼ぶようになった。

 ユリとの距離が短くなったようでケンジが嬉しかったが、なんだか怒られる回数が増してる気もしていた。


「それで石が動いてるって?」

 ケンジは自分のポケットに向かって小声で話しかけた。

「ワタシと火の奴以外は勇者の仲間によって管理されてるはずなのよ。その管理者が石をもって動いてるってことだと思うわ」

「石を持ってて。そんな物騒なことする人がいるの?」

 ユリは不可解な表情をして聞いた。

「人体化できないと力が発揮できないのよ、ワタシ達。石の姿だけなら意味がないわ。まあ、契約してれば違うけど」

 そう言って石のままのアクアは黙った。


 今だに精霊と石の関係がよくわからないよな。

 なんで神様は精霊を石に閉じ込めたんだろう。


「なるほどね。じゃあ、その管理者とやらを追わないといけないわね」

 ユリはそう呟くと考えことをしてるケンジの腕を掴み、歩き出した。

「そんなに早いスピードじゃないわ。この方向であってるみたい」

 ユリはケンジから地図を奪い取るとその腕を掴んだまま、速足で歩き続けた。



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