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南国の魔法  作者: ありま氷炎
はじまり
3/151

異世界トリップ!

 3回、回り終わった瞬間、強力な光が噴水から発生したように見えた。


 そして熱い光を感じた瞬間、爆風で体が吹き飛ばさる。


 次に気がつくとケンジは土の上に倒れていた。

 そして最初に見えたのはケンジの壊れたメガネだった。

 でも不思議とメガネなしでも周りがよく見えた。


 起き上がって周りを見渡すとそこは森の中だった。


「いたーい」

 甲高い女の子の声が聞こえた。

 振り返らなくてもケンジには誰だかわかった。

 ケンジのあこがれの橘ユリだ。

「ここは?あれ?山元くん?」

 ユリはケンジを見つけるとそう尋ねる。

「いたたっつ」

 今度は低い男の声がした。

 それは係長のタカオの声とも違う声で、ケンジは声の方向を見る。するとそこには主任のカナエに似た青年がいた。

「あ、橘さんに、山元くん?」

 青年はケンジ達を見てそう口を開く。

 ケンジたちがきょとんとした顔をしてるとその青年が不思議な行動を取り始めた。

 立ち上がり、自分の胸をさわったり、髪を触ったり、しまいには大事な部分を触っていた。

 その作業が済むと、青年の顔がさーと青白くなった。

「私、男になってる?!どうして?だいたいここはどこ?」

 青年は少しパニックを起こしてるようで、道の真ん中を行ったり来たりしていた。


 この人って、もしかして上杉主任??


 ケンジはユリを窺うようにして見る。

 するとユリもそう思ったらしく、静かに頷いた。


「あの、もしかしてあなたは、上杉さん?」

 ユリは恐る恐る、その青年に話しかけた。

 するとその青年、カナエはその問いに静かに頷く。


「嬉しい!私の願いがかなったのね!」

 ユリの言葉は予想を反するものだった。

「あの噴水、本当に効果あるのね。私が理想の男性と出会えるようにと願ったら本当にかなったわ!」

 ユリは唖然とするケンジとカナエを無視して一人で飛び上がりそうに喜んでいた。


「あの上杉主任、ここはどこなんでしょうか。どうして僕たちはここに?しかもなんで上杉主任が男になっちゃたんですか??」


 ケンジがすがるようにカナエをみてそう聞いた。


「その質問には私が答えましょう!」

 聞いたような声がして、細身の男が現れた。

「ガイド?!」

 それはケンジたちを噴水に案内したツアーガイドだった。

「皆さんのお願いごとを光の噴水が叶えてくださったのです。橘様の理想の男性に会いたいという願い、山元様の魔法の世界に住みたいという願い、上杉様の男になりたいという願い、すべては願いどおりになったはずです。」

 ガイドの淡々とした言葉が森の中で響く。


 そんな僕の願いのせいでこんな世界にきてしまうとは……


「願い事をキャンセルしてもとの世界に戻してください!」

「山元くんのせいでこんなところに来てしまったね!」

「もうサービスはいいから、早く元の姿に戻せ」


 ケンジ達が口々に言うのをガイドは営業スマイルを浮かべて、ただ聞いていた。


「どうしてですか?皆さん、願ったことが叶ったじゃないですか。武田様など大喜びでしたよ」

「武田?武田も来てるのか」

「ええ、それはそれは満足そうにしてましたよ」

 ガイドはカナエの問いに奇妙な笑みを浮かべて答える。

「元の世界に、元の姿に戻る手段があるはずだ。それはなんだ?」

 カナエが強い口調で言うと、ガイドはやれやれと首を振った。

「わがままなお客様ですねぇ。あることはありますよ。この世界の光の噴水である失ったものの泉で願い事をキャンセルすることを願えばいいのです。」

 ガイドの答えにケンジたちは安堵の表情を浮かべた。

「しかし、4名様が一緒でなければ意味がありません。4名様がご一緒に失ったものの泉で願うことが条件です。」

「それで失ったものの泉はどこにあるんだ?武田は?」

 ガイドはため息をつくと手を宙にかざす。すると光が発生して、手の中に茶色の紙が現れた。

「これが失ったものの泉への地図です。武田様は皆様でお探しください。すぐ近くにいらしゃいますので」

 ガイドは茶色の紙をカナエに渡してにっこりと笑う。

「あ、そうそう。サービスで皆さんに旅の装備をお渡ししましょう」

 ガイドが手を叩くと宙から茶色の布袋がどすんと二つ降ってきた。

「それでは皆さん。助けが必要でしたら呼んでください。暇でしたら飛んできますから。それでは~」

 ガイドはしゃきっと姿勢を正すと、来たときと同じように宙に消える。


 残されたケンジ達は呆然として、茶色の布袋を見つめるしかなかった。




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