決戦2
「ところで、このナイフ投げたのは誰かしら」
火の精霊カーナは手からナイフを抜きながらそう言った。
その顔は怒りで醜くゆがんでる。
この人が火の精霊か??
きれいな人だ。
どことなく上杉主任が女性だったころに似てる気がするけど……
「おい、火の化け物。俺のナイフを返しやがれ。パレドの人をたくさん殺しやがって!」
べノイは剣を構えながらそう叫ぶ。
「化け物!失礼ね。アンタ。ナイフもアンタの仕業ね。頭にくるからたっぷりいたぶってから殺してあげるわ。ねぇ、タカオ。この馬鹿、私が殺しちゃってもいいでしょ」
カーナは傷ついた手の甲を舐めながら聞いた。
「どうぞ。僕は元同僚達にあいさつでもしているから。ごゆっくり」
タカオは視線をまっすぐカナエに向けながらそう答える。
カーナはそれを面白くなさそうに見ながらもべノイに向かって飛んだ。
火の鞭がべノイに振り下ろされる。
べノイはそれを剣で受け止めた。
しかし、剣にヒビが入る。
「ちっ、もろい剣だぜ。」
「べノイ、この剣を使うのじゃ!」
瀕死の重傷を負って体を伏していたナトゥは辛うじて体を起こして、金の剣をべノイに投げた。
「金の剣か。ありがてぇ」
べノイはうれしそうに金の剣を受け取ると不敵に笑って構えた。
「ふん。金の剣があったって、普通の人間であることには変わらないのよ!」
カーナはそう言って再び火の鞭をべノイに振り下ろす。
「さあて。君達。水の石はまだ手にいれていないようだけど。この僕たちに勝つつもりがあるのかい?」
タカオは風の剣を腰から抜いて振りまわしながらそう言った。
カナエは無言で構え、ユリはいつでも矢を放てるように準備をした。
しかしケンジは手が震え、そこに立っているだけでも精一杯だった。
「戦う気なんだ。そうか。君達もあのガイドから素敵な贈り物があったんだね」
タカオはケンジ達を見ながら楽しげに笑みを浮かべると、風の剣を構えた。
「橘さん。ここは私一人で十分だ。べノイのほうの加勢をしてくれ。山元くんはナトゥと神殿の中に逃げろ」
カナエは弓を構えているユリと足が竦んで動けないケンジにそう言った。
「でも、上杉さん……」
「大丈夫だから。ほら、べノイのほうがやばい」
ユリがベノイの方向を向くと、火の鞭によって苦戦している姿が見えた。
「わかりました」
ユリはそう言って、べノイの方へ走っていく。
ケンジもユリの後ろ姿を見ながらナトゥの倒れている場所へ走った。
情けないけど僕はみんなみたいに戦えない。
「二人っきりになったね」
ケンジとユリが去ったのを黙って見送り、タカオは目を猫のように細くした。
「さて、僕から行くよ」
タカオは風の剣を構えると、カナエに切りかかった。