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南国の魔法  作者: ありま氷炎
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襲われる村

「助けてくれぇ~」

 パレドの村は地獄と化していた。立ち並ぶ家は炎上し、血に塗れた死体や元は人間だったと思われる黒焦げになったものが転々と続いており、人々が悲鳴を上げながら逃げ惑っていた。

「もう、素直じゃないんだからさあ」

 カーナは目を爛々と輝かせてそう言う。

「この村の人は知らないのかな……」

 血で濡れた風の剣を携えて武田タカオはつまらなさそうにつぶやいた。


「あ、見っけ」

 カーナは騒ぎが収まり、無人と化した村の中で、燃えずに残る鉄の板を見つけた。目を凝らすとそれは扉に見えた。火の精霊が手をかざすと扉が弾き飛び、地下に隠れている家族3人の姿が顕になる。

「ねぇ。アンタ達、水の石の在り処って知ってる?知らないと燃やしちゃうわよ」

 カーナは炎の玉を作り、手の平の上でくるくるともてあそびそうたずねた。

「し、知ってる。だから妻と子供の命は助けてくれ!」

 男は妻子の前に立つと恐怖に震えながらそう答える。

「本当??案内してくれる?」

 カーナは目をきらきらさせると手を叩く。すると火の玉がパシンと消滅した。

「あんた、ダリン様とべノイ様には世話になったのに!」

 妻が男にしがみつき、そう叫ぶ。

「お前達の命を助けるためには仕方ないんだ!」

 しかし男はそう妻に答えると、その手を振り切り地下室から出てくる。

「じゃあ、案内よろしくね」

 タカオは地上に現れた男に満足そう微笑む。その笑みは返り血を浴びて美しく輝き、男は恐怖を感じ顔を強張らせた。



「むごいことだ……」

 ダリンを声を殺してそうつぶやく。水の巫女の力を使って村の様子が見え、その悲惨な現場に息を呑むしかなかった。

「パレドの村の者たちがかなり殺されてしまった……」

 ダリンは唇を噛むとナトゥを見る。

「やつらがここに近づいている。ここに入ることはできないがこれ以上パレドの者たちを殺させるわけにはいかない。ナトゥ、頼む」

「わかった。わしに任せるのじゃ」

 ダリンの言葉にナトゥは力強くうなずくと神殿を後にした。


「ここからが水の結界ね」

 男に案内されタカオ達は地下に続く洞窟の目の前まで来ていた。

 カーナが洞窟のほうへ手を出すと、パチパチッと音がして火花が出る。

「やっぱり、水の結界には入れないみたいだわ。ねぇ。アンタ。 巫女をここまで呼んできてくれない?

呼ばないとアンタの奥さん達を黒こげにしちゃうから」

 カーナは結界に触って傷ついた指先を舐めながらそう言う。

「そうだね。巫女を呼んできて。ついでに中にいるウエスギって奴もね」

 タカオはカーナの言葉にそう付け加える

「誰よ、ウエスギって」

「じゃ、よろしくね」

 カーナの問いを無視してタカオはにっこり微笑んで男の背中を洞窟の中に押しやった。

「ねえ。タカオ。ウエスギって誰?そいつはタカオの何なの?」

 カーナは不機嫌そうにタカオに再度聞く。火の精霊が人に執着することはないのだが、カーナはタカオをすっかり気に入っていた。

 タカオの注意を引く者は自分以外は許せなかった。

「昔なじみだよ」

 しかしタカオはそれだけを答え、男が消えた洞窟に視線を向けた。



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