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南国の魔法  作者: ありま氷炎
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火の精霊カーナ

 西の村から東に2キロ離れた村―ジュネの村では悲鳴と人々が逃げ惑う足音が響きわたっていた。


 タカオは躊躇なくその剣を振り下ろす。すると目の前の男の体から血が勢いよく噴き出し、後ろに倒れた。


「風の剣ってすごい切れ味いいよね」

 タカオは歌うようにそう言って、死体の上を歩く。

 周りにはいくつもの死体が転がっていた。


「でも疲れちゃうなあ。風で一気に吹き飛ばすとかできればいいのに」

 タカオは血のついた顔を袖で拭うと、神殿と呼ばれる場所に入っていった。


「ひぃ」

 巫女姿の老婆は血まみれのタカオを見ると悲鳴を上げる。

 その足はがくがく震えており、神殿にはすでにその老婆しか残っていなかった。


 タカオはふと笑うと剣を横に振り切る。

 シュッと音がして、何か飛んでいく。


 タカオの目の前に首のない老婆の体が残される。しかし、その体は少し痙攣した後、前のめりに倒れた。


「あれが火の石だね。」

 建物の中央の机の上に、赤い石が置いてあった。

 その周りには結界を張るように5か所に小さな水瓶が置いてある。

「さあて、どうしようかな」

 タカオは楽しそうにつぶやいてその手に持ってる剣を石に近づけた。

 予想通り、ぱちぱちと弾けるような音がして剣を弾く。

「風の剣でもだめなんだ」

 タカオは眼を細めると床に落ちている老婆の頭を掴み、結界に投げ入れた。

 ガッシャンと5つの水瓶が割れる。

 同様に老婆の頭についていた赤色の宝石も割れていた。

「やっぱりね。結界を解く鍵はこのおばあちゃんがつけてたんだ」

 タカオは自分の予想があたったのが嬉しくて、口元に笑みを浮かべた。


「あ~。長かったわあ」

 ふいに、けだるそうな声がして、火の石が燃え上がる。

 次にタカオの目の前に現れたのは短い逆立った赤い髪に赤い瞳を持つ美女だった。

「アンタがアタシを開放したのね」

 美女はタカオに目を向けてそう言った。

「そうだよ。君は火の精霊って奴?」

 タカオの問いに美女、火の精霊は辺りに散ばる血や老婆の死体を見ながら笑う。

「そうよ。アンタの目的はなんなの?」

 火の精霊はその赤い目を輝かせながらタカオを見つめた。

「僕は5つの石をすべて揃えつもりなんだ。力を得て世界をすべてぶち壊すんだ。面白いだろう?」

 タカオはそう言って微笑む。

「楽しそう!アタシそういうの大好きだわ。協力してあげる。その代わり……」

 火の精霊はタカオの頬を両手で包むとその唇に噛み付くように口づける。

「アタシに名前をちょうだい。そうすればアンタはアタシの火の力を使えるし、アタシはアンタの精力をいただくことができるわ。アンタって面白そうだから楽しみだわ」

 タカオはそう言う火の精霊に今度は自分から唇を重ねた後、口を開いた。

「そうだね。カーナっていうのはどう?」

 火の精霊は一瞬考えた後、燃え上がり巨大な炎の固まりになった。

「いいわ」

 そう声でして、炎が人型に変化した。

 その姿は髪と目の色は赤いままだったが、先ほどとは異なり、スレンダーな体つきになっており、髪の毛はまっすぐで、背中あたりまで伸びていた。

「これでアンタはアタシの力を使えるわ」

 カーナはそれだけ言うと再び火の石の姿に戻る。


 タカオが石を掴むと、脳裏にカーナの声が聞こえた。


 さあて、お次はどこに行く?

 木?土?

 邪魔する奴は全部燃やしちゃいましょ。


 タカオはカーナの言葉に楽しそうな笑みを浮かべると神殿を後にした。


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