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南国の魔法  作者: ありま氷炎
後日談
147/151

南国のクリスマス3

「シャオシェン!」


 先月入社したばかりのメイリン・タンがタカオをそう呼んだ。

 タカオは苦笑を浮かべながら振り返る。

 大陸から来たメイリンは英語ができず、現地の香港人から冷たい目で見られていた。またスタッフの日本人ともなかなかコミュニケーションが取れていなかった。タカオは中国語ができ、同僚の香港人のように冷たい態度をとらないのでメイリンは何かとタカオを頼っていた。


 直属の上司の藤宮ノボルはそんなタカオに本気にも取れる忠告をしていた。


「寝るなら覚悟しろ。大陸の女は一度寝ると大変だぞ。」

「言われなくてもそんな関係になるわけがないですよ」


 そんなノボルにタカオは苦笑しながらそう答えていた。


 メイリンは小柄な中国人女性だった。目が大きく、かわいらしかった。しかし感情の起伏が激しく、そのかわいい顔を台無しにしている。

 タカオはメイリンを見るたびに火の精霊カーナを思い出し、苦笑いをしていた。


「シ、シンガポールですか?1週間も、しかもメイリンと一緒に…」


 タカオは上司のノボルの言葉に詰まった。

 出張といわれた時期はクリスマスだった。

 カナエと付き合ってからの初めてのクリスマスだった。


 高校の時は一緒に祝うことなど考えられなかった。

 だから今度のクリスマスはカナエと過ごしたかった。


 タカオが黙っているとノボルが笑って口を開いた。


「お前、彼女がいるんだったよな。だったらクリスマスに彼女をシンガポールに呼んだらいいじゃないか。南国のクリスマスもなかなか楽しいぞ」


 ノボルの言葉にタカオは断れないものを感じた。彼には香港に来てから色々世話になっていた。


(恩を返さないといけないだろうな……)


「…色々考えていただきありがとうございます。そうさせていただきます」


 タカオがそう答えるとノボルは意地の悪い顔をした。


「メイリンも一緒だから。楽しいクリスマスになるかもな。まあ、会社としてはぜひ武田に行ってもらいたいからな。よろしく頼む」


 ノボルはタカオの肩を叩くと笑いながら昼食をとるために部屋を出て行った。

 部屋に残されたタカオはシンガポール出張に嫌な予感を感じながら、カナエに出張のことを伝えるために携帯電話をポケットから取り出す。


「あ、上杉?今大丈夫?」


 カナエが電話口に出たのを確認してタカオはそう言った。


「ごめん、またシンガポールに出張なんだ。今度は少し長くて1週間。断れなくてごめん。でもクリスマスは一緒に過ごそう。南国のクリスマスだ」

「シャオシェン~」


 そう話していると甘えた声がすぐ側で聞こえた。メイリンはタカオが携帯電話で話し中だと分かると、その電話を奪い取った。


「ワタシ、シャオシェン ト イッショ、シンジャポーイク。ジャマシナイデ」


 そして携帯電話を両手で抱えると覚えたての拙い日本語で叫んだ。


「メイリン!」


 タカオは舌打ちをすると慌ててメイリンから携帯電話を奪い返す。


「上杉ごめん、会社の子。日本語覚えたばかりなんだ。後でまた電話するね」



そしてそう言うと電話を切り、タカオは鋭い視線をメイリンに向けた。


「为什么你做这个?(どうしてそんなことするんだ?)」


 その問いにメイリンは動じることなくタカオを見つめ返した。


「因为我爱你!(だってワタシはあなたを愛してるの!)」




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