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南国の魔法  作者: ありま氷炎
後日談
143/151

ホワイトクリスマス3

「やっぱりね。思った通り」


 エミはブラックコーヒーの入ったカップを手に持って窓の外を見ながらそう言った。

 そしてコーヒーを一口飲み、ソーサーにカップを戻す。


「ケンジくんは私の亡くなった弟に似てるの。だから構いたくなっちゃうのよね。ケンジくんもそれを知ってるから私に優しいの。他意はないのよ」


 彼女はユリの顔を見た後、再び窓の外を見つめた。

 ユリは何も言えなかった。嫉妬していた自分が馬鹿みたいだった。


「そうそう。クリスマスパーティ、私の実家がやっている喫茶店で開こうと思ってるの。うちの両親にケンジくんを見せたいなあと思って……。変な誤解与えてごめんね」


 エミは苦笑しながらテーブルの上のコーヒーカップを手に持った。


(ああ、本当、私って馬鹿だわ。ケンジのことをわかってない)


 ユリは浅はかな自分が嫌だった。


「エミさん。そのパーティ。私もぜひケンジと参加したいです。いいですか?」

「ええ。もちろんよ」


 エミは彼女の言葉を聞くとパッと笑顔を浮かべる。その笑顔はなんだかケンジに似ていた。


「メグミさん。私、色々すみませんでした」

「ああ、いいのよ。私があなたの立場だったら多分同じ行動とっていたはずだし。ケンジくんもかわいい彼女持って幸せね」


 エミはコーヒーを一気に飲みして、その顔が熱さで真っ赤になる。ユリは思わず噴き出した。


「咽喉が痛い。熱い物を一気に飲むものじゃないわね」


 水を慌てて飲む彼女を見ながらユリは笑いが止まらなかった。



 ドアフォンのボタンを押すと、呼び鈴の音がしてケンジの顔が小さい画面に映し出された。


「ユリ?!」


 ケンジはびっくりした顔を見せるとドアを開ける。


「どうしたの?忘れ物?」

「ケンジ、ごめん!」


 ユリは頭を下げてそう言った。


「なに?どうしたの?とりあえず中に入って」


 ケンジは眉をひそめながらもとりあえずユリの背中を抱き、家に招き入れる。


「ユリ、どうしたの?」


 ケンジは俯いたままのユリの顔を見ようとしゃがみこみ、尋ねた。


「本当、私って馬鹿だわ」

「意味わからないけど、ユリはユリだろう。なんか最近おかしいよ。何かあったの?」


 ケンジはしゃがみこんだままの姿勢でユリの顔を覗き込む。泣いているのがわかった。


「言わないとわからないよ。僕また何かした?」


 ケンジは立ちあがるとユリを抱きしめる。甘い香りがした。


「いつも1人で怒ってごめん。誤解ばかりして」

「そんなの。いまさら……わかってるよ」


 ケンジはユリの背中をさすりながら苦笑した。ユリの性格は分かっていた。そういうわかりやすいユリだからケンジは好きだった。自分と違って自己主張をはっきりとするユリ。対極の存在だからこそ惹かれたに違いなかった。


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