ホワイトクリスマス2
「え~!クリスマスパーティ?!」
クリスマスの1週間前、ケンジの家に遊びに来ていたユリが素っ頓狂な声を上げた。
今日は日曜日でケンジの両親は祖母の墓参りに行っていた。2階にあるケンジの部屋で大声を出しても誰も咎めるものはいなかった。
「うん、そう。僕ってずっと家に籠っていたから。そういうの参加したことなくて。剣道の仲間でクリスマスパーティをするんだ。僕も参加したいんだ。もちろんユリも一緒に……」
そう言いかけてケンジの顔が強張る。真っ赤な顔で怒っているユリがケンジを見上げていた。
「勝手にいけば?私帰る!」
ユリは床から立ち上がると壁に掛けてあるコートをとった。そしてドアを開けようとノブに手をかける。
「ユリ!」
ケンジがユリの手首を掴んでいた。そして二人の視線が合わさる。
髪型を変え、ケンジの目に前髪がかからなくなり、そのきれいな二重瞼の瞳がよく見えるようになっていた。
ユリはふとケンジの瞳に見とれていたことに気がつく。
(こんなにカッコよくなっちゃって!)
「痛い、離して!」
ケンジはユリの声を聞くと慌てて手を離した。
「ごめん!」
彼は謝るが、ユリはケンジを見ることなくドアを開けると階段を一気に駆け降りる。
「ユリ~!」
「この鈍感ケンジ!1人でパーティでもなんでもいったらいいわ!」
ケンジがユリを追って1階に降りが、ユリは追ってきた彼へそう叫ぶとパンプスを履き玄関のドアを開けて出て行った。
「ユリ……」
ケンジはわけがわからないという表情を浮かべて開け放たれた玄関のドアを見つめていた。
駅に行く道を歩きながらユリはぶつぶつと独り言を漏らす。周りの人がユリを見るが構わなかった。彼女の怒りは燃えたぎり、それどころじゃなかったからだ。
「なによ。クリスマスは二人で過ごそうと思ったのに!剣道部仲間でパーティ!?きっとあの山中っていう女の仕業だわ!」
ユリが駅の構内に辿りつき、電車に乗るため階段を上っていると見覚えのある顔が見えた。向こうも気づいたようでユリに笑顔を向ける。
(山中さんだわ……。なんでここに!)
「ねぇ。ケンジくんの彼女さんでしょ」
無視しようかどうか迷ってるとエミが先に声をかけてきた。
「……そうですけど」
ユリは不機嫌な様子を隠さずに答え、その様子にエミは苦笑する。
「ねぇ。彼女さん。時間ある?ちょっとお茶でも飲んで話しない?誤解してるみたいだから誤解を解きたいのよ」
少し茶色かかった瞳に見つめられてユリは戸惑いながらもうなずいた。