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南国の魔法  作者: ありま氷炎
後日談
141/151

ホワイトクリスマス1

「南国の魔法」から半年後のケンジとユリの話です。

 体育館に気合の声が響く。

 黒い防具をきた二人が体育館の中央でにらみ合っていた。

 壁際でユリはその様子をじっと見ていた。

 戦っているうちの一人はケンジだ。


 剣道を習って半年、練習試合をすることになり、ケンジも出ることになった。ユリはケンジが剣道している姿をまだ見たことがなかったので、応援に来ていたのだ。


「きえぇえ!」


 ケンジはそう言うと足を踏み出した。

 パカンといい音がしてケンジの竹刀が相手の頭に当たる。


「面あり」


 審判の声が体育館に響き、歓声が上がった。


「ケンジ、かっこよかったわよ!」


 ユリは着替え終わったケンジにそう声をかける。彼は照れたように笑った。その笑顔がなんだかまぶしく、ユリは視線をそらしてしまった。

 剣道を始め、ケンジの姿勢がよくなり少し背が高く見えるようになった。そしてユリに言われてコンタクトレンズをつけるようになり、髪形もユリの行きつけの美容室で切ってもらうになっていた。

 服もユリが選ぶことも多くて、ケンジの外見は垢抜けつつあった。


「ケンジくん~。一緒に山田先生のところへ戻りましょうよ」


 体育館から女性の声が聞こえ、ショートカットの20代後半のさわやかな女性が歩いてきた。

それはケンジと同じく剣道を習っている山中エミだった。


「あ、彼女も一緒だったのね」


 エミは自分をにらみつけるユリを見ると苦笑する。


「じゃあ、彼女さんも一緒に山田先生のところへ戻りましょう。防具とかあるからみんな一緒に帰ったほうがいいでしょ?」

「ああ、そうですね。お願いします」

「じゃ、10分後に正門でね?」


 ケンジは機嫌の悪いユリをなだめるようにしながらそう答え、エミはさやかな微笑を浮かべるとまた体育館へ戻っていった。


「……あの女、なんなのよ」

「え?山中さんのこと?」

「山中さん?!あの人が山中さん?」


 ケンジの外見が見違えるようになり、ユリは不安になることが多くなった。自分だけを見つめてくれるはずの彼が急に遠くになったような気がしていた。会社ではタカオたちのことがあり社内恋愛禁止になった。おおっぴらに付き合いができなくなっていたのだが、ここ最近女子社員がケンジを見る目が変わったのを感じていた。以前なら恋愛対象外として彼に視線が向くことがなかったのだが、最近ケンジをちらちらと見る視線にユリは気がついていた。


「ねぇ。ケンジ。剣道の教室変えることできないの?」

「どうして突然?」


 ユリの言葉にケンジは飲んでいたコーヒーを吐き出しそうになった。

 山田先生のもとへエミたちと車に乗り防具を返してから、二人は喫茶店にきていた。


「だって……」


 ユリはエミのことが気になっていた。剣道の教室に通うようになり、ケンジが山中さんという名前を出すようになった。話からいつも一緒に稽古をしているようだったのでいい友達かと思っていた。

しかし今日会ってみて山中さんが女性でしかもケンジに気があることわかってしまった。今日は自分がいるから良かったものの、普段は剣道の教室でケンジとエミが親しくしてると思うとイライラした。


「どうしたの?ユリ?」


言葉を詰まらせて黙り込んだユリをケンジが心配げに見つめた。

いつもの優しい眼差し。

ずっと自分だけがその魅力を知っていると思っていた。


あーずっと眼鏡君のままにしておけばよかった……


ユリは自分を見つめるケンジに視線を返しながら後悔していた。


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