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南国の魔法  作者: ありま氷炎
失ったものの泉
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精霊たちとの別れ

「ガルレン、これからどうするの?」


 木の精霊と遊んでいるガルレンにケンジは問いかけた。


「う~ん。どうしようかな」


 空を見上げて眉をひそめたガルレンに木の精霊は微笑んだ。


「ここでワタシと一緒に暮らしましょう」


 その言葉にその横にいた風の精霊はびっくりして木の精霊を見る。


「いいの?シティ!」

「ええ、もちろんです」

「だめだ。人間は暮らせないだろう!」


 風の精霊が抗議の声を上げると木の精霊は風の精霊をにらみつけた。


「可能よ。風、反対するのではあればアナタとはもう口をきかないわ」

「そんな子供のようなことを!この世界には人間の食べ物もないし、遊び相手もいないじゃないか。人間の子供にとっては厳しい場所だぞ?」

「食べ物はワタシが調達するわ。天神だってシュエのためにそうしているじゃないの。遊び相手はワタシがいるし、シャオシェンだっているわ」

「しかし!」


 風の精霊は木の精霊のまくしたてるような説明に反対の声を上げた。


「いいわ。風、アナタとは一緒に暮さないから。ワタシはガルレンと人間の世界で暮らすわ」

「なに?!」


 風の精霊は思いがけない木の精霊の言葉にさらに不満そうな声を上げた。

 ケンジ達は繰り広げられる痴話喧嘩をあきれた顔で見ており、ガルレンは木の精霊の腕の中で二人のやり取りを不安そうに聞いている。


「ガルレンは俺が預かるよ」


 痴話げんかに終止符を打ったのはベノイだった。


「やっぱり人間の世界で暮らすのが一番だろう。俺がいろいろ教えてやるぜ。レンも来たければくればいいしな」

「ああ、それはいい考えだな。世界がひとつになった今、人間の世界にも自由に出入りができるからな。そうしろ。な。木?」


 風の精霊はベノイの提案に嬉しそうな声を上げて木の精霊を見た。木の精霊は腕の中のガルレンを心配げに見た。


「ガルレンはどうしたいのですか?」

「う~ん。神と精霊の世界は面白そうだけど、やっぱり人間の世界で暮らしたい。ベノイさんのところに行く」

「そう。わかりました。ワタシもちょくちょく様子を見に行きますから」


 木の精霊は心配げにそう言った。


「じゃ、決まりだな」


 ベノイはガルレンに笑いかけた。


「ガルレン、よろしくな。俺はベノイだ」


 ベノイは木の精霊のところまで歩いていき、ガルレンに視線を合わせるために屈むとそう言った。


「僕はガルレンです。よろしくお願いします」


 ガルレンはベノイに笑顔でそう答え、差しだされた手を握り返した。その隣で風の精霊はほっとした顔を見せ、木の精霊はそんな風の精霊をあきれた様子で見ていた。


「アクア?」


 痴話喧嘩が収まり、ガルレンの預かり先も決まってほっとしているとケンジは水の精霊がめずらしく輪から離れて森のほうを見ていることに気がついた。


「どうしたの?」

「うん。火が珍しく元気なさそうだから。気になってね」


 水の精霊は心配げなケンジに笑顔を見せた。


「アイツとはずっと喧嘩してきたけど。アイツのことを一番わかるのはワタシなのよね。今回は珍しくあいつは人間に肩入れしすぎたみたいだから」


 水の精霊の言葉にケンジは火の精霊のタカオに向けていた表情や言葉を思い出した。


 確かに武田係長のこと必死に守っていたよな。

 あの火の精霊……

 上杉主任のこと毛嫌いしていたのもきっと嫉妬のせいなんだろうな。


「ケンジ、ワタシ心配だからアイツの様子見てくるわ。ケンジと旅ができて楽しかったわ。またね」


 水の精霊はケンジの口に軽く口付けると光になり空に消えた。


「アクアの奴っ~」


 突然のことで呆然としているケンジの後ろでユリの怒りの声が聞こえた。


 ちょっとした悪戯よ。怒らないでよね。ユリ。

 バイバイ、またね。


 光の消えた空からアクアの楽しげなそんな声が聞こえた気がして、ケンジは空を見上げた。ユリも同じように声が聞こえたようでケンジの側で苦笑すると、どこまでも青く澄み切った空を見た。



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