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南国の魔法  作者: ありま氷炎
失ったものの泉
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戻る魂

「上杉カナエという魂と武田タカオ達に殺された者達の魂だな」


 地神はケンジ達の願いを聞くと池の前に立ち、呪文のような言葉を唱え始めた。


「山元様、絹の袋を!」


 ふいに声がして龍から元の姿に戻った銀の精霊と金の精霊が満身創痍のぐったりしてる黒の妖精を連れて現れた。


「池から魂が上がってくるはずです。それを袋の中にいれるのです」


 ケンジは銀の精霊の言葉を聞くと袋の口を開けた。それと同時に池から淡い光が浮かび上がってくる。そしてそれは次々にケンジの持つ袋の中に入っていった。


「これで全部のはずだ」


 数百個の光の球が袋に入ったのを確かめて、地神はケンジに目を向けてそう言った。


「ありがとうございます」


 ケンジはお礼を言うと袋の口を縛った。


 これで後は地上に戻るだけだ。


「銀と金、久しぶりだな」


 地神はケンジ達の後ろに控える金の精霊と銀の精霊の姿を確認すると微笑んだ。


「お久しぶりです。兄君」

「久しぶりね。銅」


 銀の精霊と金の精霊は微笑を返しながらそう言った。


「え?兄弟??」


 なんなら戦わすに済んだんじゃ??

 ケンジは唖然として3人の姿を見つめ、ユリは眉をひそめた。


「そう言えば銅の精霊がいると聞いたことがありました」


 木の精霊は思い出したようにポロリと言った。


「だから金と銀はここに自由に来れたのね!だったら初めから素直に魂を渡すように頼めばよかったじゃないの!」


 水の精霊は3人の精霊を睨みながらそう言った。黒蛇との戦いは力が思うように出せず水の精霊としては満足できていなかった。


「わたくし達も銅が地神と知っていれば初めからそうしましたわ。まさか銅が泉の底で地神をしているとは思わなかったものですもの」


 金の精霊は悪気のない微笑を水の精霊に向けた。


「な、なんか無駄な努力をした感じだ……」


 ケンジはふと体の力が抜けその場に座り込んだ。その横にユリが屈む。そしてケンジに笑いかけた。


「私はケンジの魅力が再確認できてよかったわよ」



 ユリは耳元でケンジにそう囁くと少し顔を赤くして立ちあがった。


 ユリ!


 ケンジはその言葉に嬉しくなって立ちあがった。


「でもあの幻で現実のケンジのだめっぷりも再確認した感じだけど」


 ユリは隣に立ったケンジを見てそうつぶやいた。しかし口元に笑みを浮かべるとその頬に軽くキスをした。


「ま、最初から期待してないし。ケンジはケンジだからいいわ」


 その言葉にケンジはどう返していいかわからなかった。でもユリとこうしてまた一緒にいられることが嬉しかった。



「タカオ、アタシはもうアンタと契約する気はないわ。これがアタシの本当の姿なの」


 池の側でがやがやと話しているケンジ達を見ながら火の精霊はそう言った。


「わかってる。今までありがとう。そしてごめん」


 タカオはそう言うとカーナの時とは異なる火の精霊の顔を見つめた。カナエの代わりに火の精霊をカーナとして側に置いていた。その結果火の精霊を傷つけていたのをタカオは知っていた。自分の思いのために多くの人を傷つけた。タカオが視線を火の精霊から池のケンジ達の方へ向けると火の精霊が口を開いた。


「ねぇ。最後にもう一度キスしていい?」


 火の精霊はタカオをじっと見つめた。その表情は今まで見たことがない悲しいものだった。しかし美しい顔だった。タカオは微笑を浮かべると火の精霊の頬にそっと口づけた。

 火の精霊はタカオの唇が口ではなく、頬に触れたことに驚いたが、すぐさま表情をいつもの強気なものに戻した。


「タカオ、こんなにアタシに気に入られた人間はアンタだけよ。覚えておいてよね」


 火の精霊はそう言うとタカオに背を向けた。


「わかってるよ。ありがとう。覚えておくよ」


 タカオは背後から火の精霊を抱きしめるとつぶやいた。



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