表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
南国の魔法  作者: ありま氷炎
失ったものの泉
131/151

最後の戦い2

「ユリ、池だ!」


ケンジとユリは池へ辿りついた。そして中を覗き込むようにして見る。すると大きな水しぶきが上がり、何かが出てきたのがわかった。


「何か用か?」


水の中から現われたのは巨大な黒蛇で、ケンジ達を見下ろしていた。


「うっ、上杉主任とガルレン、武田係長たちに殺された人の魂を返してください」


ケンジは少しうろたえながら黒蛇を見上げてそう言った。


「残念ながらできない相談だ。彼らの魂は浄化されようとしている。あとは富の噴水に送るのみだ。あきらめろ」

「あきらめません!お願いです。渡してください!」


黒蛇はそういい募るケンジを見た。そしてすこし笑ったように見えた。


「そうだな。わしを倒せたら渡してやろう」


黒蛇はそう言うとケンジとユリに襲いかかった。ケンジは足元に落ちていた木の枝を掴み、もう片方の手でユリを守るように自分の背中に押しやった。


こんなもの武器にならないけど、無いよりはましだ!


ケンジは歯を食いしばり、近づいてくる黒蛇をにらみつけた。


「ごめん、お待たせ!」


ふいに元気な声がしてケンジの前に青色の髪を持つ女性が現われた。そしてその女性――水の精霊は驚くケンジの前で氷の槍を作りだし、黒蛇に投げつけた。槍は黒蛇に刺さり、その体を池に沈めた。


「アクア?!」


 ケンジは驚いて水の精霊を見つめた。


「水だけではありません。ワタシ達もいます」


 そう声がして木の精霊と土の精霊が空から舞い降りてきた。


「レンにルガーも!」


 姿は本来の姿に戻って変わっていたが見知った精霊の姿にケンジはほっとして木の枝を握る手を緩めた。ユリも安堵の表情を浮かべてケンジの背中から顔をのぞかせる。


 みんなにもう一度会えるなんて思ってもみなかった。


 ケンジは目頭が熱くなるのを感じた。


「どうやってここに来れたの?ここは外の人間しか入れないって聞いたけど」


 ユリの問いに水の精霊はいたずらな笑みを浮かべた。


「龍に変化した金の精霊に乗ってきたの。金と銀は特別だから入れるのよ」


 水の精霊がそう答えていると池が爆発したような音がして水しぶきが上がった。そして池の中から巨大は黒蛇がその全身の姿を現した。


「まさか精霊がここに来るとは思わなかった。さっきは油断したが今度はそうは行かないぞ!」

「そう?油断?ワタシ達に敵うとは思わないけど」


 水の精霊は不敵に笑いながら剣を、木の精霊は弓矢を作り出すと、ケンジとユリに向かって投げた。


「これはアナタ達の武器よ。とりあえず持っていてね!」


 そう言い終わらないうちに黒蛇が水の精霊に襲い掛かった。木の精霊は瞬時木に変化すると黒蛇に向かってその枝を槍のように伸ばし、土の精霊は石の礫を放った。


「うおおおお!」


 黒蛇は痛みで退いた。水の精霊は止めとばかりに氷の槍を投げつける。

 しかし槍が黒蛇に刺さることはなかった。


「げ、気持ち悪い……」


 ユリは思わずそうつぶやいた。黒蛇の頭がぱっくりと5つに割れ、それぞれが5つの頭を形成した。そしてその一つが氷の槍を口で受け止めていた。それは氷の槍をばりばりと口の中で割り、飲み込んだ。


「冷たくてうまいぞ。もっと欲しいな」


 その言葉に水の精霊は舌打ちをすると水の塊を手の平に作り、木の精霊は木の枝を鞭のように変化させ、土の精霊は土の斧を出現させた。その後ろでケンジも水の剣を握り締め、ユリも木の弓の弦に矢をかけた。



「銀!」


 そう声がして銀の精霊―ー銀の龍の頭上に金の龍が見えた。


「姉君?!」


 驚く銀の龍の頭上で、金の龍の背中に乗った精霊達が次々と空に消えて行くのが見えた。


「もうあなたは……いつもわたくしに隠し事ばかりするのだから」


 精霊達を見送った後、金の龍は銀の龍の側に降り立った。黒の妖精が後ずさるのがわかった。銀の龍一体でも苦戦していた。さらにもう一体加わり、戦闘は完全に不利だった。


「姉君、どうしてここへ?」

「あなたの気を感じたのですよ。あなたが龍の姿になるなんでおかしいと思ったので気を追って来たのです。まさか他の精霊を乗せて来ることになるとは思いもしなかったのですが……」


 金の龍はそう答えながら、逃げようとしている黒い妖精の長いドレスの裾をその足で踏んだ。


「さて、黒の妖精。遊びはこの辺にいたしましょう。今度はわたくしがお相手しますわ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ