表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
南国の魔法  作者: ありま氷炎
失ったものの泉
120/151

あなたを救うために

 黒い水の中でカナエは自分が黒い長刀をタカオに振り下ろそうとしているのを見た。


 お願いだ!

 頼む。

 やめてくれ。

 私はどうなってもいいから。


 武田を助けて!

 私を止めて!


 カナエは咽喉が張り裂けそうな声で叫んだ。するとふと光が近づいてくるのが見えた。

 そしてそれは大きくなりカナエを包む。


 気がつくとカナエは白い空間にいた。天井も床も真っ白だった。

 目の前には銀の精霊がいつもの冷たい微笑を浮かべて立っていた。


「上杉様。あなたは武田様のために死ぬことができますか?」

 銀の精霊がその銀色の目をカナエに向けて静かに尋ねた。

「ああ」

 カナエは迷いなくうなずいた。

「亡者は魂の塊です。あなたが死ねば亡者も消滅するでしょう。この小剣であなた自身を刺してください。そうすればあなたと共に亡者も消えます。」

 銀の精霊は淡々とそう言うと小剣をカナエに渡し消えた。

 視界が再び暗くなり、黒い水の中に戻っていることに気づいた。


 しかし、その手には小剣が握られている。カナエは小剣を見つめた。そして自分の胸の近く、心臓の上当たりを目安に剣先を向ける。


 武田。

 ちゃんと会って伝えたかった。

 自分の気持ちに正直になればよかった。


 あの時、逃げてしまった。それからずっと忘れられなかった。


 武田、好きだ。

 愛してる。


 さようなら。


「やめろ!」

 ガルレンが黒い液体の中から現れた。そしてカナエから小剣を奪おうとする。

「私がついてる。悔しい思いも悲しい思いも私が一緒にいて聞くから。大丈夫」

 カナエをそう言ってガルレンに微笑み、自分の胸に小剣を刺した。


 光がカナエから放たれる。


「させるか!われらの思いをしれ!」

 亡者は自分の体から光が出るのがわかった。しかし渾身の力で黒い長刀を振り下ろした。自分が消滅する前にタカオを殺すつもりだった。光の中で真っ赤な血が飛び散る。


「このぉ!」

 火の精霊カーナが火の塊を作り、亡者に放った。しかし、火の塊は眩い光に消し飛ばされた。

 光と爆風がすべてを覆っていく。精霊達は光に溶けて、ケンジとユリは吹き飛ばされた。ルドゥルは光がカナエの体からはじけるように出ていくのを見たが、爆風によりそれ以上見えなかった。


 光はべノイ達のところまで届いた。


「なんだ?」

 金の剣を握るべノイ、ナイフを構えるナジブを光と風が襲い吹き飛ばす。ベノイは飛ばされながら金の精霊カリンが光の中に溶けていくのを見た。


「竜!」

 風に吹き飛ばされそうになりながらシャオシェンは竜にしがみついた。

 竜は光の中心に目を向けていた。

「銀め、よけいなことをしおって」

 竜がそう声を発した。しかし自分の愛する人の気を光の中心に感じ、愕然とした。

「まさか!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ