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南国の魔法  作者: ありま氷炎
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火の石

「おい、聞いたかよ。昨日西の村で村人が惨殺されたみたいだぜ」

 男はハムを口いっぱいに頬張りながらそう言った。


 汚い……


 ユリはそう思いながらもその男の話に耳を傾けた。


「殺人者を目撃したものによると若い男だったみたいだぜ。悪魔のように容赦なく殺していったらしい」

「まじかよ。西の村っていったら結構ここから近いぜ。夜は出歩かないほうがいいかもな」

 もう一人のひょろ長い男が寒気を覚えたように腕をさすりながらそう答えた。


 西の村、近い、悪魔……


 ユリの脳裏にあの時のタカオの様子が浮かぶ。


「おい、その男って何かを探してたんだろう?」

 別の浅黒い肌の男がそう言って話に加わった。

 その手には血が滴りそうな肉を掴んでいた。


 人殺しの話してるときによくそんなものが食べれるわね。


「なんでも火の石を探していたらしいぜ。」

「そう言えば西の村には火の精霊が宿るそんな石があるって話を聞いたことがあったな……」

 男は突然話に加わった男と知り合いなのだろう。その男の皿にあるジャガイモをつまみながらそうつぶやく。

「そんな噂があるせいで、殺されたら報われないなあ。俺はそんな殺された方、簡便だな」

 ひょろ長い男はそう言いながら席を立った。

 どうやらこの男は物騒な話は苦手らしい。


 火の石ね……

 奇跡の星とは関係ないわね。

 きっと。


「あ、そこの別嬪なお嬢さん。俺に一杯、水ちょうだい」

 浅黒い肌を持つ男がユリにそう声をかける。


 めんどくさいわね。


 ユリはそう思いながらもうるさいマーラの姿を思い浮かべて黙って水をその男に届けた。


「やっと、ご飯だ~。いただきます!」

 ケンジは嬉しそうに机に並ぶハムやパン、フルーツを見つめ、食べ始めた。

「どうだ。働いた後のご飯は格別だろう」

 口いっぱいに食べ物を頬張るケンジにマーラはそう言う。

 それを横目にみながらユリはパンをかじっていた。

「あら。カナエさんは下りてこないのかい?」

 マーラが思い出したようにケンジに尋ねる。

「食欲ないみたいですよ」

「困ったねぇ。悪い奴が来た時のためにたんと食べてもらわないといけないのに。そうだ、ケンジ。お前の分、残しといてカナエさんにあげな」

「え~?!」

 お腹ぺこぺこなのに~。

「私の分、上杉さんにあげるから。山元くんは好きなだけ食べればいいわ」

 ユリはそう言うと、お皿にハムやパンを乗せて、席を立つ。

「あ、ありがとう」

 複雑な思いでケンジはそうお礼を言って、また食べ始めた。


 やっぱり、橘さんにとっては上杉主任は特別か。

 ま、いいや。

 勝ち目がない。

 今のハンサムな上杉主任には……


 ケンジは口に頬張ってるパンを水で流しこむと、ハムを手に取る。


 マーラはそんなケンジの心中を悟ってか、優しい微笑みを浮かべてみていた。



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