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南国の魔法  作者: ありま氷炎
失ったものの泉
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悲しい戦い

 タカオを消滅させる。


 天神はそのために動いていた。


 シュエと過ごすうちにシュエを手放せなくなった。自分を恐れない真っ直ぐな瞳を持つものを天神はシュエ以外知らなかった。


 愛のために天神はシュエに神の力を与えた。自分は失ったものの泉を守り、シュエと共に永遠に生きていくつもりだった。


 数日前、シュエの世界で唯一の魔法の力―光の噴水により人間達がこの世界に来た。

誰が来ようと構わなかった。


 しかしタカオが来るとは予想外だった。


 銀の精霊の仕業だとわかった時はすでに遅かった。


 シュエに会わさずにタカオ達を元の世界へ戻したかった。

 もし会うようなことになればシュエが元の世界に戻りたがるかもしれない。


 それは耐えられなかった。


 そのためにタカオを消したかった。自分の力ではシュエに影響を与える。

 タカオの存在を知らしめてしまう。


 シュエはタカオをシャオシェンとまだ認識していなかった。

 認識してしまうとシュエはタカオと共に帰ってしまうかもしれない。

 その前にタカオを消したかった。


 天神―竜は視線をべノイとルドゥル、そして金の精霊カリンと土の精霊ルガーに向けた。

 カリンは竜の目に懐かしさを感じていた。数百年前に最後に会った神の目と同じ色だった。

 土の精霊ルガーも同様な思いらしく竜の瞳を見つめていた。

 竜の炎が襲う。カリンが光の壁を作り防いだ。べノイは金の剣をルドゥルは木の杖を構え、竜に向かって跳んだ。

「ホンエン!」

 ルドゥルは木の杖から炎を発生させるが、竜の白い鱗に阻まれ消えた。べノイの金の剣は鈍い音を立てただけで、竜に何もダメージを与えられなかった。ルガーが石の礫を放つが竜の翼がそれを防いだ。

「これはどうだ!」

 戦いの場に到着したナジブが竜の瞳の部分を狙ってナイフを投げた。それはシャオシェンが矢を使って撃ち落とした。


「ケンジ、行きましょう。ここで見ていてもしょうがないもの」

 ユリはケンジの手をそっと握るとそう言った。ケンジがその手を握り返してうなずいた。

「そうだね。行こう。アクア」

 ケンジの言葉に水の精霊アクアは二人の手を掴むと戦いの場へ飛んだ。木の精霊レンは亡者の気の中に懐かしい誰かの気配を感じ、眉をひそめた。しかしアクア達の後ろ姿を見るとその後を追った。

 銀の精霊はケンジ達を追おうとせずただ竜と亡者の動きを見ていた。



「カーナ!」

 火の鞭を振り下ろそうとした火の精霊カーナをタカオが止めた。その後カナエの長刀が振り下ろされ、タカオは風の剣でそれを受け止めた。

 タカオは、カーナとフォンにカナエとの戦いに参加することを許さなかった。通常のタカオであればカナエに勝てた。そしてカナエが通常のカナエであればタカオに勝つことはなかった。しかしタカオは体力を消耗しており、カナエは通常でなかった。

「火、カナエは何かに操られてるようだ」

 親指を噛んで悔しそうにしているカーナにフォンは話しかけた。

「今のままじゃやられるぞ」

 フォンの言葉にカーナは唇を噛んだ。唇から血が出るのが見えた。


 ケンジ達がタカオ達のすぐ側に降り立つと、予想した通り、タカオとカナエが二人だけで戦っていた。上空でカーナとフォンが戦いを見ているのがわかり、少し遠くの森の中で竜と戦ってるベノイ達の姿が見えた。


 やっぱり武田係長は精霊の力を借りない気だ。

 でもそれじゃ殺されてしまう。


「武田係長、その人は上杉主任ではありません」

 ケンジはタカオの背中に向けてそう叫んだ。

 ケンジの言葉を聞いてカナエー亡者は微笑んだ。その笑みはこちらを嫌な気分にさせる笑みだった。

「ケンジさん、よくわかったね」

 亡者から発せられた声にケンジとユリは顔を強張らせた。レンは目を見開いて亡者を見つめる。フォンはレンの驚きを見て声の主がレンの契約主だった少年だということに気がついた。そしてカナエが発してる嫌な気の正体がわかった。

「キサマは亡者か」

 フォンは上空からカナエの姿の亡者を睨みつけた。

「ふふ。そうだよ。まあ、ガルレンをベースに生まれたんだけど。ガルレンは本当に可哀想な子だよ。そんな可哀想な子をタケダは殺してしまった。そしてシティ、大事な木の精霊は誰かのものになって自分を戦おうとしてる」

 亡者の言葉にレンの顔が青ざめた。

「木、そいつはあのガキではない。亡者だ。話を聞くな」

 フォンが上空からレンの元に降りてきて守るようにそっと肩を抱いた。



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