ユリの願い
泣いてる?
子供?
ねえ。お姉ちゃん。
なんで僕、死ななきゃならなかったの?
教えて?
血を流した少年がカナエにそう聞いた。
少年は武田タカオに殺されたガルレンだった。
僕は生きたかったんだ。
ねぇ。僕を助けてよ。
ねぇ?
ガルレンはその血まみれの手でカナエを掴んだ。服が赤く染まる。
「ごめん、ごめんなさい」
カナエはその言葉しか言えなかった。
タカオを止めれなかった。
「もう、いいよ。僕たちは復讐する方法をみつけたから」
突然ガルレン年の声質が変わった。そして不気味に微笑む。
「お姉さんの体借りるね。お姉さんならあいつも手を出せない」
そう言うとガルレンの姿が解け始め、黒い液体になった。
「!」
そしてそれはカナエの体を包んだ。
カナエ!
シャオシェンは泉の底に横たわるカナエの姿を見つけた。竜はその手を使ってカナエの体を掴み、水面に上がる。
「カナエ!カナエ!」
竜はカナエの体を泉の近くの草原に下ろした。シャオシェンはカナエに呼びかける。カナエの顔色が青白く、その体は冷たかった。
「シャオ……シェン?」
カナエはゆっくりと目を開いた。
「よかった!」
シャオシェンは泣きそうになりながらカナエに抱きついた。カナエは胸にシャオシェンを抱きながら体を起こす。そして周りを見渡した。
「カナエ?大丈夫?」
シャオシェンはカナエの腕の中からその顔を見上げた。カナエであったものはゆっくりと微笑を浮かべた。
「ねえ、シャオシェン。私と一緒にタケダって奴のところへ行かない?あいつにはひどいめにあったんだ。私のためにやっつけてよ」
大好きなカナエにそう言われてシャオシェンは無邪気にうなずいた。
「カナエを悲しませる奴は嫌いだ。うん、行こう!」
大きな花の蕾を開くとユリは横たわっていた。目を閉じて規則正しい寝息を立てて眠っていた。
「かわいいだろう?」
花の精霊が性懲りもなくそう口を開いたのを水の精霊アクアと木の精霊レンが冷ややかな視線で見た。
きれいだ……
ケンジはユリに姿に見とれずにいられなかった。
現実の世界にいたときは遠い存在だった。
でも今はこんなに近い。
ケンジは知らず知らずのうちにユリのつややかな唇に目を奪われていた。しかし、首を横に振り、ユリを抱き起こした。
「ユリ、ユリ!」
ケンジはそう呼びかけた。
ユリはゆっくりと目を開き、ケンジを見つめた。そしてケンジの名前を呼ぼうとしたが花の精霊の魔法により口が開けないことに気がついた。
ケンジは何も話さないユリを心配そうに見ていた。そんなケンジにユリは笑いかけるとその唇にそっと口づけた。ケンジの顔が耳まで真っ赤になる。
ケンジはやっぱりケンジだわ。
でもケンジに会えてよかった。
ユリは真っ赤になったケンジをじっと見つめると再度口づけた。