表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
南国の魔法  作者: ありま氷炎
失ったものの泉
113/151

ユリの願い

 泣いてる?

 子供?


 ねえ。お姉ちゃん。

 なんで僕、死ななきゃならなかったの?

 教えて?


 血を流した少年がカナエにそう聞いた。

 少年は武田タカオに殺されたガルレンだった。


 僕は生きたかったんだ。


 ねぇ。僕を助けてよ。


 ねぇ?


 ガルレンはその血まみれの手でカナエを掴んだ。服が赤く染まる。


「ごめん、ごめんなさい」

 カナエはその言葉しか言えなかった。

 タカオを止めれなかった。


「もう、いいよ。僕たちは復讐する方法をみつけたから」

 突然ガルレン年の声質が変わった。そして不気味に微笑む。


「お姉さんの体借りるね。お姉さんならあいつも手を出せない」

 そう言うとガルレンの姿が解け始め、黒い液体になった。

「!」

 そしてそれはカナエの体を包んだ。



 カナエ!

 シャオシェンは泉の底に横たわるカナエの姿を見つけた。竜はその手を使ってカナエの体を掴み、水面に上がる。

「カナエ!カナエ!」

 竜はカナエの体を泉の近くの草原に下ろした。シャオシェンはカナエに呼びかける。カナエの顔色が青白く、その体は冷たかった。

「シャオ……シェン?」

 カナエはゆっくりと目を開いた。

「よかった!」

 シャオシェンは泣きそうになりながらカナエに抱きついた。カナエは胸にシャオシェンを抱きながら体を起こす。そして周りを見渡した。

「カナエ?大丈夫?」

 シャオシェンはカナエの腕の中からその顔を見上げた。カナエであったものはゆっくりと微笑を浮かべた。

「ねえ、シャオシェン。私と一緒にタケダって奴のところへ行かない?あいつにはひどいめにあったんだ。私のためにやっつけてよ」

 大好きなカナエにそう言われてシャオシェンは無邪気にうなずいた。

「カナエを悲しませる奴は嫌いだ。うん、行こう!」



 大きな花の蕾を開くとユリは横たわっていた。目を閉じて規則正しい寝息を立てて眠っていた。

「かわいいだろう?」

 花の精霊が性懲りもなくそう口を開いたのを水の精霊アクアと木の精霊レンが冷ややかな視線で見た。


 きれいだ……

 ケンジはユリに姿に見とれずにいられなかった。

 現実の世界にいたときは遠い存在だった。

 

 でも今はこんなに近い。

 

 ケンジは知らず知らずのうちにユリのつややかな唇に目を奪われていた。しかし、首を横に振り、ユリを抱き起こした。


「ユリ、ユリ!」

 ケンジはそう呼びかけた。

 ユリはゆっくりと目を開き、ケンジを見つめた。そしてケンジの名前を呼ぼうとしたが花の精霊の魔法により口が開けないことに気がついた。

 ケンジは何も話さないユリを心配そうに見ていた。そんなケンジにユリは笑いかけるとその唇にそっと口づけた。ケンジの顔が耳まで真っ赤になる。


 ケンジはやっぱりケンジだわ。

 でもケンジに会えてよかった。


 ユリは真っ赤になったケンジをじっと見つめると再度口づけた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ