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南国の魔法  作者: ありま氷炎
失ったものの泉
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タカオの苦しみ

「あー水か、それにみんなも。来ちゃったか」

 ふいに現れたケンジ達をみて花の精霊は動じずそう言った。

「ユリ??」

 花の精霊の後ろに大きな花が見えた。そしてその中にいるユリを見てケンジは目を丸くした。


 かわいい……

 状況を忘れてケンジはぽかんとユリを見つめた。

 大きな花の中でユリは囚われた蝶々のように美しかった。


「ケンジくん。どうだ!かわいいだろう?」

 ケンジの表情を見て花の精霊はにやっと笑った。

「っつ、そんなことよりユリを離せ!」

 見惚れた自分を恥ずかしく思いながらケンジは叫んだ。

「だめだよ。もうオレのものだから。キミには渡さない」

 花の精霊は人差し指を左右に動かしながらそう答えた。

「ケンジ!この変態やっつけてよ。あんたなら簡単に倒せるはずよ!」

 首と手首に巻かれたピンク色の鎖をしゃらしゃらと鳴らしてユリは叫んだ。

「そう簡単にいくかな?オレだって、こう見えてもAクラスの精霊なんだから」

 花の精霊がそう言って微笑を浮かべた。それと同時に花びらがケンジ達に向かって飛ぶ。

 木の精霊レンがとっさに木に変化して、花びらの攻撃からケンジ達を守った。その後ろでケンジは水の剣を構え、ナジブは腰に差してあるナイフを掴む。水の精霊アクアは氷の槍を作り出し、攻撃態勢を整えた。

 数秒後、花びらの攻撃がやみ、視界が開けた。

 しかしそこには花の精霊の姿も、ユリの姿もなかった。



 夢の中のタカオは楽しそうに人を殺していた。

 たくさんの血、他人の血がタカオに降りかかる。

 それでもタカオはやめようとしなかった。

「武田!」

 声がしてカナエが胸に飛び込んできたのがわかった。

 しかしタカオは猫のように目を細めて笑うとカナエに向かって剣を振り下ろした。


 血がタカオにかかる。

 カナエの血が全身に振りかかかった。


「タカオ!」

「タケダ!」

 目を開けるとほっとしたカーナの顔、そしてベノイの姿見えた。

急に夢からさめてタカオは混乱していた。

「カリン、タケダの傷は癒せないのか?」

「傷が見当たりませんので癒しようがありません。しかし肉体的な疲労なら癒せますわ」

 そう言ってカリンはタカオの側に来て、頭に手を乗せた。頭痛が少し止み、体が軽くなったような気がした。

「ありがとう」

 タカオはカリンに笑顔を向けると腰を上げた。

「十分休んだ。行こう」

「タカオ!まだ休んだほうが」

 カーナは驚いた顔を見せた。

「大丈夫。ベノイ、ルドゥル、待たせてごめん。先を急ごう」

 タカオは止めるカーナを振り切るようにしてそう言った。

「もう、知らないわよ」

 カーナは唇を尖らせると石の姿になった。

 ベノイはタカオの顔を一瞬見つめると背を向け歩き出した。

「カリン、行くぞ」

 カリンはべノイの言葉にうなずくとその後を追い、ルドゥルはタカオを一瞥した後、腰をあげて歩き出した。その後をゆっくりと土の精霊ルガーが追う。

「タカオ。オレの背中に乗れ」

 風の精霊フォンがそう言ったがタカオは首を横に振った。そして火の石を拾いベノイとルドゥルを追う。フォンはため息をつくとタカオを追った。フォンの心配そうな視線にタカオは笑みを返す。


 ゆっくりしている暇はない。

 僕の精神が持つうちに着かないと……


 上杉……

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