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南国の魔法  作者: ありま氷炎
失ったものの泉
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不思議な少年シャオシェン

甘い花の香りの中で気がついた。体を起こすと自分が大きな花の中にいるのがわかった。

首と手首に違和感があった。見るとピンク色の鎖でつながれていた。

「信じられない!花の精霊!!」

ユリは怒りを含んでそう叫んだ。

「あれ、もう起きたの?」

のんびりした声が聞こえて花の精霊が現れた。その顔には満足そうな表情が浮かんでいる。

「その服も鎖もよく似合うよね。まさにオレの好み♪」

花の精霊の言葉を聞いてユリは眉をひそめて自分の服をみた。肩が露わになり胸を隠すように大きな花びらがついていた。そしてピンクの花びらで作られたふわふわしたスカートを穿かされていた。

「な、なんて悪趣味なものを着せるのよ!しかも勝手に服を着替えさせたね!この変態精霊!」

「変態……なんて言葉を使うんだ。キミにはまだ何もしてないよ。服を変えるなんて簡単なことさ」

 そう言ってウィンクするとユリの服が元の服に戻った。しかし、ユリが喜んだのも束の間、花の精霊はふっとユリに向かって息を吹きかけた。するとユリの服はまたあのピンクの花の服に変化した。そしてその首と手首には同じピンク色の鎖がついている。

「キミはもうオレのものなんだ。オレの好きなようにする」

 花のベッドの上で自分を睨みつけるユリに微笑んで花の精霊はそう言った。



「カリン、ここから失ったものの泉に飛ぶことできないのか?」

 ケンジ達と別れて少し歩き出した時に、ベノイは急にそう尋ねた。人間の世界でカリン達精霊はベノイ達を瞬間移動させていた。この世界でも可能であれば時間が短縮できるはずだった。

「ベノイ……。失ったものの泉は神が作りだしたものなのです。神殿同様わたくし達の力で見つけることは難しいのです。わたくし達が神に会えるのは通常神が望んだ時のみなのです。失ったものの泉にはこの白い道を歩いていくしか方法がありません」

 金の精霊カリンは人間のようにベノイの側を歩きながらそう説明した。

「そうか……」

 ベノイはため息交じりにそうつぶやいて、後ろを振り返った。タカオは少し遅れてベノイの後ろを歩いていた。顔色が悪かった。風の精霊フォンはその隣にいた。火の精霊カーナは石の姿に戻りタカオが携帯しているようだった。

「おい、人間達。何をもたもたしてる。先を急ぐぞ」

 ベノイより先を歩いていたルドゥルが振り返ってそう言った。その横に土の精霊ルガーがついていた。カリン同様普通に歩いているようだった。

「ルドゥル、悪いがちと休憩だ」

 ベノイはタカオから視線をルドゥルに向けると、腰を降ろした。ルドゥルはため息をつくと同じように木の幹に腰を降ろした。タカオは無言でその近くの木に寄りかかる。座ると逆に眩暈がしそうだった。

「タカオ、オレが背中を貸してやる。その調子じゃ時期に倒れる」

 フォンはタカオを見つめてそう言った。タカオの顔色は青白かった。

「大丈夫……」

 タカオはそう答えると空を見上げた。薄い青色の空が広がっている。頭痛が常にタカオを襲い、何度も人が死ぬ様子がフラッシュバックされた。

 自分が殺した人たちの怨念が感じられた。

「タカオ!」

 ふいに声がして、ポケットが光り、火の精霊カーナが現れた。

「アンタが罪悪感って奴を感じなくていいのよ。アタシが殺したんだから」

 カーナは腕を組んでぶっきらぼうにそう言った。その目はタカオを見ていなかった。でも心配してるのが伝わった

「カーナ……」

 タカオはカーナに微笑みを浮かべ、その姿に触れようと足を踏み出した。

すると突然世界が真っ暗になった。

「タカオ?タカオ!」

 カーナの声が遠くで聞こえた。そして何も聞こえなくなり、意識が途切れた。




「人間~。戻ってきたんだ!」

 シャオシェンが部屋に戻ったカナエの姿を見ると走ってきた。その笑顔は無邪気なものだった。

「上杉様、約束通り、シャオシェンと遊んでくださいね。よろしくお願いします」

 銀の精霊は淡々とそう言うと部屋を出て行った。

「人間~。ナイナイに怒られたの?怖いよね。ボクも時々怒られるよ」

シャオシェンはカナエの顔を覗き込みながらそう言った。

「人間、泣かないで。ボクがいるから。ボク、人間とずっと一緒にいるよ。だって人間とっても温かいんだもん」

 シャオシェンはカナエをその小さな体で抱きしめた。

「ボク、人間大好き」



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