表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
南国の魔法  作者: ありま氷炎
失ったものの泉
105/151

神と精霊の世界

 タカオは木に寄りかかり空を見上げていた。

 夢のような美しい世界……

 常に思い起こされる断末魔の叫びを上げて死んでいく人々の姿とは正反対なものだった。

 意識をしっかりしてないとその感情に飲まれそうだった。


 上杉に会うまでは……


 タカオは息を吐くと空を再び見上げた。



「火、どうしたの?」

 水の精霊アクアは珍しくぼんやりしている火の精霊カーナに話しかけた。アクアは久々に神と精霊の世界に戻ってきて気分が高揚していた。石に縛られるため自由にはなれないがケンジ達の側で楽しそうに動き回っていた。しかしカーナはただじっとタカオを見つめていた。

「アナタにしてはめずらしいわよね」

 アクアはそう言うと空へ飛び上がった。



「木、いい加減、機嫌なおしてくれ」

 少女の姿の木の精霊レンはちょこんと木の枝の上に座り空をみていた。

「だってアナタはあのタケダの味方をして、ケンジを殺そうとしたわ。ワタシはそういうアナタのことを許せないの」

「悪かった。でも仕方がなかったんだ」

 風の精霊フォンはそう言ってレンにキスをしようと近づいた。レンはふいと顔をそらす木の枝から飛び降りた。

 関係修復にはもう少し時間がかかりそうだった。



「神と精霊の世界か……」

 魔族のルドゥルは美しい森の中を見渡しながらそう呟いた。その近くには座禅を組んで座る土の精霊ルガーの姿が見える。人狐のナジブは森の中に咲く美しい花々を眺めていた。

「マスター。この花は人間の世界に持って帰れるのでしょうか?」

 ナジブは以前よりも態度を軟化させてそう尋ねた。

「さあな。わしもこの世界に来たのは始めてなのだ。あの娘に持って帰りたいのか?」

「はい」

 ナジブはルドゥルの問いにうなずいた。

「よかろう。わしが力を貸してやろう」

 ルドゥルは木の杖を美しい花々に向けた。

「リーム」

 そう唱えると花々が球体に包まれ、小さくなる。それはまるでガラスドームに入れられた小さな花畑のようだった。ナジブはそれを嬉しそうに掴むと腰のベルトにかかっている皮袋の中に入れた。



「カリン、銀の精霊の気配を感じられるか?」

 ベノイはカリンにそう尋ねた。この世界に来てから何度も繰り返してきた問いかけただった。

「申し訳ありません。神殿にいるらしく、まったく気配が読めませんわ」

 金の精霊カリンは首を横にふって答えた。

 ベノイはふとタカオを見つめた。タカオは眉をひそめて空を見ていた。数日前までは敵だった。しかし今は一緒に旅をしている。ベノイはタカオが何度も辛そうにしている姿を見た。心が戻ったタカオは以前のようにこちらを逆なでするような態度は見せなかった。何も話さずただ黙々と前に向かって歩いていた。

「カリン……。みんな十分に休んだはずだ。先を急ごう」

 ベノイはそう言うと腰を上げた。そしてケンジのところへ歩き出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ