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南国の魔法  作者: ありま氷炎
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戦いたくないけど

 戦うべきじゃないのに……


 ウェルザが金の精霊フィーナによって癒されていくのを見ながらケンジはそう思わずにいられなかった。


 あの魔族は僕達に殺されたいのだろうか……


 ルドゥルはウィルザの傷が癒されると、再び戦うためにケンジ達に向かって構えを取った。


 アクアが元の水の精霊に戻り、後方にカーナと共に控えている。


 精霊4人に精霊の力を持つ武器を持つ人間が4人。

 土の精霊が黒い炎を使えるとしても勝機がないのはわかってるはずだ。


 それでも戦おうとしている。

 どうしてだ?


「私は戦えない……」

 ユリはそうつぶやいて悲しげな顔をケンジに向けた。


「行くぞ!」

 ルドゥルはそう声をかけると跳び上がった。木の杖をケンジ達に向ける。

「ホンエン!」

 杖から炎が放たれる。それを火の精霊カーナが手の平で受けとめ、水の精霊アクアが水の球をルドゥルに向かって放った。しかし、金の精霊フィーナが金の光の壁を作り水の球からルドゥルを守る。

「これはどうだ!」

 風の精霊フォンは間髪入れず、小さな竜巻をいくつかフィーナの壁に当てた。その隙に木の精霊レンがその枝を蔦のように伸ばす。土の精霊ルガーが黒の炎で枝を破壊しながら、土の礫を放った。

 ケンジはユリの前に立ち、礫を水の剣で弾き飛ばす。べノイとタカオが同時にルガーに向かって跳ぶ。ルガーはその腕で二人の剣を受け止めた。

「今だ!ケンジ!」

 べノイがそう言った。しかしケンジは動かなかった。ルガーは二人の剣を跳ね返す。二人は宙を舞うと地面に着地した。

「ふん。チャンスを逃したようだな」

 ルドゥルはフィーナの壁の向こうからそうつぶやいた。

「どうしたんだ?ケンジ!」

 べノイは視線をルドゥルに向けたまま責めるように聞いた。ケンジは何も答えなかった。ただ戦うべきじゃないという気持ちがケンジの動きを止めていた。タカオはケンジを一瞥した後、ルドゥルに目を向けた。そして風の剣を握った。

「カーナ!フォン!僕を援護して」

 タカオはそう言うとルドゥルに向かった。カーナとフォンはそれぞれの手の平に力を集中させる。そして同時に力を放った。火の塊はルドゥルに、風の球がルガーに向かって飛ぶ。フィーナは金の光の壁でルドゥルを守る。ルガーは黒の炎で風の球を消滅させた。タカオは金の光の壁に向かって風の剣を振り切った。カーナの力と風の竜巻によって壁にヒビが入る。フィーナの顔が苦痛にゆがむ。

「俺がやる!」

 べノイはケンジを一度見つめた後、金の剣を握りしめた。べノイの剣が光の壁を破壊し、ルドゥルに届く。

「残念だな」

 ルドゥルは木の杖でべノイを剣を受け止め、跳ね飛ばした。

「!」

 ふと気配を感じてルドゥルが頭上を見上げた。タカオがすぐ側まできており、その風の剣を振り下ろした。ルドゥルはぎりぎりでその剣を避ける。剣が宙を切った。

「むかつくぜ」

 べノイは地面から体を起こし、タカオを見ながらそうつぶやいた。


 ルガーの前にレンとフォンが、フィーナの前にアクアとカーナは立ちふさがった。そしてルドゥルにはべノイとタカオが対峙した。


 ケンジとユリはその様子を見つめていた。

 止めることもできずに、参加することもできなかった。


 カナエやガルレン、そしてタカオ達に殺された人々を生き返らせるためにはルガーとフィーナと契約する必要があった。でもウェルザの思いを知り、ウェルザを二度も助けたこの魔族と戦う気になれなかった。


 タカオは風の剣を構えた。その横でべノイも同様に構えを取る。そしてお互いに視線を交わした。べノイはタカオが嫌いだった。タカオも松山シンスケに似た雰囲気をもちカナエの側にずっといたべノイが好きではなかった。 しかし、ひとつの目的のため、二人はうなずく。

「カーナ、フォン」

 タカオは二人の名を呼んた。

「わかってるわ」

 カーナはそう言って、手の平を宙に向けた。フォンもうなずいて手の力を溜め始めた。

「ケンジ……」

 レンとアクアはじっと戦局を見つめているケンジに顔を向けた。ケンジは迷いながらもうなずいた。

「援護を、武田係長とべノイの援護をお願い」

 魔族とは戦いたくない、でも二人をみすみす危険な目に合わせるわけにはいかなかった。


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