タカオの過去
「こんな関係やめないか」
カナエはベッドの上からタカオを見つめてそう言った。
「お前にはいくらでも、きれいな、かわいい女の子が寄ってくるだろう。なんで私なんだ?」
カナエはブランケットにくるまって体を丸くした。
体を見られるのは嫌らしく、カナエはいつもそうしていた。
目の前のタカオはお風呂上がりなのか腰にタオルを一枚巻いているだけだった。
最初のキスから数カ月してこういう関係が始まった。
誘ったのはタカオだった。
「僕は上杉がいいんだ」
そう言ってタカオはカナエを抱きしめた。
「ずっと僕の側にいて」
そしてタカオはカナエの唇に自分の唇を重ねた。
薄暗い部屋でタカオは眼を覚ました。
窓から三日月が見える。
ベッドで寝ている女はその辺で見つけた女だ。
面倒だから殺そうかな。
心がないはずなのに、上杉の夢をみた。
馬鹿らしい夢だ。
武田タカオのくだらない思い出だ。
光の噴水といえども完全に心を取るのは無理みたいだ。
でもこんな感情があるのもあと少しだ。
石さえ揃えれば僕は完全に魔王になれる。
そうしたら、こんな馬鹿な夢をみることもなくなる。
タカオはベッドの横に立ててあった、剣を鞘から抜くと
ベッドの上の女に向かって降り降ろした。
返り血がタカオにかかる。
女は寝たまま死んだようだった。
タカオは脱ぎ捨ててある女の服で返り血を拭うと、自分の服に着替える。
服から血の匂いがした。
「新しい服見つけないと」
タカオはそう呟くと部屋を出て行った。