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連載版  疑い深い伯爵令嬢  作者: 有栖 多于佳
ジェマイマ編

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ジェマイマのアンテナショップ

ジェマイマは、学院入学当初は官士試験を突破して王宮へ女官として出仕しようと思って貴族学院にやって来たのだが、近くで見る上位者たちの雑な振る舞いに呆れ、いや嫌気がさして、いや、言い方、えっと、そう自分の気質と合わないなと思い直して、女官の夢は早々に手放し、仲良くなったアマベルの男爵家を見習って、キャンベル伯爵領地の特産品を扱う商会運営していきたいと考えを改めた。



それならば、下手に嫁入りするより生涯独り身でもかまわないと決め、婚約など持ってこないようにと両親と兄に告げた。


兄は学院卒業早々、得難い伴侶と縁を結び、すぐに後継になる子宝にも恵まれた為、ジェマイマの婚姻に特別必要性は無いと、すんなりと家族の許可が下りたのでそれ以降、気楽に過ごしてきた。




キャンベル領地内では、ジェマイマは伯爵家始まって以来の才媛である。




その上、商売上手な男爵家のご令嬢と友好を築き、学生時代に、歴代領主が見出せ無かった領地の特産品を見つけ出し、量産し販路開拓もやってのけた、大変優秀で将来有望な、キャンベル伯爵家希望の星(領地限定)だ。



なので、両親にしても兄にしても、本人がそう希望するのであれば、折角の才能を婚姻で他領に持っていかれることも無いな、領地の為に自分自身で商会運営をしようだなんて、なんと健気で優秀な娘(妹・ご令嬢)なのか(領地限定)と、家族親族は勿論、話を聞いた領民たちも諸手を上げて賛同したのだった。




特産品を見つけたというが、それは何のことはない、元々領地で細々作られていた栗から作られる蒸留酒で、まあそこそこ珍しく、美酒だとかで、アマベルが遊びに来た時に、父男爵への土産に持たせた物を父親が気に入って、自分の商会での独占販売を持ちかけてくれただけなのだが。




作り方のノウハウを持つ領民を雇用して、ジェマイマが小さな蒸留所を造ったので、試飲と栗拾い観光をと、これまたアマベルとその家族を招待したところ、それもいいツアーになると、また父男爵が、男爵領に商売でやって来る他国の旅行者を接待として連れ来た所、そこそこ良い評判を貰ったことで、男爵領に来る裕福な商人や取引先の家族なんかの周囲に広まって、ちょっとしたキャンベル領ブームになったのだ。




牧歌的なだけで、観光地にはほど遠い、風光明媚な場所など皆無な、至って普通のキャンベル領に、観光客が、しかも他国の観光客がわざわざやって来ると話題になって、ある程度の格式ある宿屋やら接待に使える飲食店やらの出店が相次ぎ、それに伴う都市インフラの整備を伯爵家としても急ピッチで整えなければならず、嘗て無いほどの公共事業を手掛けたり、治安維持の為に私設騎士団を充実させたり、民間の冒険者をガードマンとして雇い入れたりと、キャンベル家は一族縁者、それに連なる者、領民たちもみな寝る間も惜しんで、フル稼働で頑張った。




お陰で、ジェマイマが卒業する頃には王国で経済成長が著しい領地へと変貌を果たしたが、だからと言って大資産家に成った訳ではない。


基礎インフラの資金は、寄り家の侯爵家からの借款で賄ったので、儲けた分から返済している最中である。

だけど、まあそれを差し引いても領地は少しは潤った。領民も増え、みな生き生きとしている。


そんなみんなの活躍で、キャンベル家は伯爵家ランキング、5位かもしかしたら4位かな?と言われる位にはちょびっとランクアップしたのだった。



特産品を見つけるという当初の願いを早々に叶えて貰ったジェマイマは、キャンベル伯爵家と付き合いがある、寄り家の茶会にアマベルを伴って参加したり、夜会に一緒に行ったりして、少しでも男爵家に貴族との縁を繋ごうと積極的に社交を行った。

ちなみに、夜会のエスコート役は当然兄か父親である。

たまに、従兄弟や再従兄弟に頼むこともあったが、親族以外とは出席しない、だってジェマイマは結婚しないから。

一貫して、領地の発展を願って活動する、キャンベル家の星(領地限定)である。周囲からの批判は一切聞かれなかった。



まあ、ジェマイマの紹介の甲斐あってか、3年経った頃には新興男爵家と侮るよりも、やり手の商会を持つ男爵家とは上手につき合った方がお得だという雰囲気になり、新興貴族風情がなどと言う侮りも聞か無くなったので、まあアマベルの希望に少しは貢献出来たであろうと思った。




さて、そんなジェマイマとアマベルの有意義な学生生活は卒業パーティーを以て恙無く終えた。

アマベルは子爵令息と彼の領地へと戻り、半年後に婚姻をした。


勿論、ジェマイマも招待を受け大いに感動して、

「おめでとう、アマベル!絶対幸せにしてくださいませね、もし彼女を泣かせるようなことがあったら、わたくしが拐いに来ますから、努々お忘れなく!」

と、感涙咽ぶ中堂々とそう宣ったのは、アマベルとの間で今では笑い話である。



親友と呼べるほど一緒にいたアマベルが婚姻し、一人になったジェマイマは王都とアマベルの男爵領にキャンベル領の特産品や観光誘致を行うアンテナショップを開いた。


王都の店は長くて社交シーズンの3ヶ月ほど、後は男爵領とキャンベル領の領都を行ったり来たり。

たまにアマベルの両親が商品の仕入れに他国に行くのに同行したり、と忙しく働いた。


お陰で、25歳になった今、アマベルは一端のやり手オーナーと呼ばれる経営者へと変貌を遂げたのだった。


そんなジェマイマに、突然、嘗ての同窓の公爵令息からキラキラしいご招待を受けたのである。

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