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連載版  疑い深い伯爵令嬢  作者: 有栖 多于佳
アマリア編

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20/24

ハリエット王太子妃

ウィリアム第1王子とハリエット・サザーランド公爵令嬢は王立貴族学院を卒業すると直ぐに結婚式を挙げた。

これに伴いウィリアムは王太子となり、ハリエットも王太子妃として国を支える礎となるべく行動を始めた。


のだが、この二人の評判は結婚直後であるのに芳しくない。


それもこれも、貴族学院在学中に、ウィリアムがエマ・パール男爵令嬢のハニートラップにまんまと引っ掛かり、それに纏わる大騒動を引き起こしたからだった。


騒動の中心は、ハリエットの学友であり王宮のマナー講師を代々務めるマクドネル家の娘アマリアと騎士団長の息子のブライアン・ボンソビーの婚約破棄に端を発していた。


ブライアンはウィリアム同様、いやウィリアムよりもより深くエマに嵌まっていて、婚約者のアマリアを蔑ろにしていた。

正統なる次期当主であったボンソビー家の長男が国王陛下を庇って大ケガをして騎士が続けられなくなった為、本来は成るはずの無かったブライアンが跡継ぎに据えられた。


しかし、貴族らしいマナーも立ち振舞いも出来ない男が騎士団長兼伯爵家当主など出来るわけが無い、彼の尻拭いをしつつボンソビー家が侮られないように睨みを効かせられる伯爵夫人が必要だと、頼み込んで国王に王命まで出して貰って、マクドネル家の次期当主に内定していたアマリアと無理矢理婚約したのは、王都の貴族中が知っていることであった。


それなのに、当のブライアン本人が、どういうことでそう思い込んだのか、アマリアがブライアンに惚れて強引に婚約に持ち込んだと思い込んでいて、周囲に人が居ようとも、いや人前でだと尚の事、

「お前が勝手に、俺と婚約したくて頼み込んだんだから、もっと俺に気を遣え」

なんて事を大声で言い放ったりして、開いた口が塞がらないとはこの事か!と思ったりした。


そんな勘違いブライアンが、貴族学院の食堂で、エマに請われてお肉を『あ~ん』なんてしたので、衆人環視の中流石に注意しないとと思っていた所、アマリアが立ち上がって、正しく注意の苦言を呈してくれた。


本来ならば、隣で太股をエマに撫でられてデレデレしていたウィリアムが自分の側近候補であるブライアンを窘めなければならない場面だったのに。


注意を受けたブライアンが盛大にぶちギレて、不貞者のくせに婚約破棄を告げ、何を思ったのか王都追放などと言う信じられない放言まで飛び出した。


わたくしが、暴言を吐かれたアマリアを、学友として、上位貴族令嬢として護らなければならなかったのに、余りの事に驚きすぎて咄嗟に何もすることが出来なかった。


王弟の娘であるメアリー公爵令嬢が飛び出してきてウィリアムにも苦言を呈し、エマとブライアンを叱責した後、職員室へと連行したのでその場は何とか治まったようだったけれど。


当事者のアマリアが席を辞して、知らぬ間に学院から帰宅しそのままなぜかキャンベル伯爵家に、マクドネル女伯爵と一緒に向かって王都から居なくなってしまうだなんて、思いもしなかった。


勿論、ブライアンが全部悪いでしょう。

ウィリアム様だって、エマに嵌まってデレデレして、本当に公妾にするつもりだったかもしれないと未だに疑っているわ。


でも、わたくしは被害者でしょう?

それなのに、その場を治められなかったと父公爵にも、王妃様にも叱られて。

王妃様が叱るのは、ウィリアム様でしょうに、わたくしが不出来だと言わんばかりに。


ブライアンがマクドネル家のことも貶していたことも、その家門中に知れ渡って、全てのマクドネル家に繋がるマナー講師や侍女侍従が職務を放棄してしまったものだから、貴族中パニックの様相となって。


責任を取って、ボンソビー伯爵は騎士団長を辞任し、伯爵位を親族に譲って、西辺境伯領の雇われ騎士となったし、マクドネル家に自家有責での婚約破棄と言うことで、鉄鋼山と銀山を含む膨大な慰謝料を払って謝罪をしたけれど、マクドネル家が許すことは無かった。


ブライアンに至っては、ボンソビー家から籍を抜かれ、慰謝料として支払った金が借金となった為に、鉱山労働者として一生働かなければならなくなったし、エマはその鉱山付近の娼館に売られてしまった。

パール男爵家も、王子や高位貴族にハニートラップを仕掛けたことで国家転覆を目論んだと見なされ、爵位と財産没収され、秘密裏に処刑されてしまった。


いつまで経っても王都へアマリアとマクドネル女伯爵が戻って来ないので、何度も手紙を出したし、王妃様も北辺境侯爵に仲裁を願ったのだけれど、NOと回答されてしまった。


それと言うのも、ブライアンの婚約破棄やボンソビー家の事だけでなく、王命で他家の次期当主を勝手に変な所に嫁入りを命じた国王に対しても、北の辺境侯爵家の家門のご夫人方が一致団結して批判的な声を挙げたからだった。


北辺境侯爵家に連なる一族は、真面目で礼儀正しく、中立で一族の団結力が凄い。

特に、キャンベル伯爵家は中立派のど真ん中であって、滅多に貴族間のいざこざに首を突っ込まないし、口も出さない。

そのキャンベル家が稀に動く時、それは時代が動く時と言われているらしく、それが今回のエマブライアン騒動に当たると、父公爵からも王妃様からも言われた。


アマリアと学友ならしっかり立ち回りなさいと叱責されたとて、キャンベル領に籠ってしまったアマリアとどうやればいいのか。

王妃様だって、マクドネル女伯爵とご学友なんだから、それこそ上手く立ち回れば良いでしょうに、王妃様からの謝罪の手紙も受け取り拒否されてそのまま返されているとか。


時間だけが無情に過ぎて行く中、それに反比例するように王家も我が公爵家一門が所属する王族派も評判が下がり続けていった。

このままでは、クーデターか独立戦争か、そんな雰囲気が漂い始めた頃、キャンベル伯爵家の嫡男トマスがウィリアムと話し合いを持ち、マクドネル家との仲を取り持って、アマリアとマクドネル女伯爵に正式に謝罪する場を設けてることが出来て、それでやっと手打ちとなったのだった。


本当はその奔走をわたくしがすべきだったと父も家門の者たちも責めるのだけれど、上手くいったのだから良かったじゃないの。


でも、その後はアマリアはわたくしの学友にもAクラスにも戻らず、キャンベル家の嫡男と婚約して同じCクラスで残りの学生生活を楽しそうに行っていた。


正直に言うと、トマス・キャンベルは見た目は派手な所もなく、落ち着いた雰囲気の地味な青年なんだけれど、アマリアに対して温かな態度や目線、二人の幸せそうな様子を遠くから眺めていて、羨ましい気持ちに少々なったわ。


だって、わたくしだって同じ被害者なのに、ウィリアムも王家もわたくしには謝罪が無いのだから。

こんな醒めた心が人に伝わるのか、ウィリアムもわたくしも貴族からも国民からもあまり支持されていないのも当然なのかも知れないわね。


卒業後、キャンベル家は社交を行わないから、アマリアに会う機会は失われてしまった。

きっと、一族の、トマスの庇護の下、幸せに暮らしているのだろうと思うと、やっぱりちょっと羨ましい。


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