エピローグ
ジェマイマは、その後も大袈裟な二つ名で語られたが、侯爵夫人として程程に、商会のオーナーとしては積極的に活動して暮らした。
ヘンリーは約束通りジェマイマの活動の応援を精一杯行い、それが巡って侯爵領の利益となり程程に繁栄したので、女宰相となったメアリーに
「ジェマイマを泣き落としで落としたのが、あんたの唯一の功績ね」
と言われたのだが、気にもならなかった。
ジェマイマは結婚式の支度をしている時、いつも付き添ってくれている侍女に、
「結局、ヘンリー様は鼻の大きな女が好きだったのかも知れないわね」
と言ったとか、言わないとか。
侯爵夫人となっても、運が良かっただけと思い驕ることの無いジェマイマは、今日も言葉の裏を読むため能面微笑の下で、脳内を世話しなく働かせて、合ってたり間違ってたりの推測をし続けているのである。
「世の中には色んなフェチがいるって本当ね、旦那様が鼻フェチだったなんてね」
「奥様、それは無いかと思われますわ」
毎朝、身支度を整える鏡を見ながら、侍女とそんな会話が繰り返されていることを、未だにヘンリーは知る由も無いのであった。




