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連載版  疑い深い伯爵令嬢  作者: 有栖 多于佳
ジェマイマ編

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10/24

王立貴族学院でのアンタッチャブルその2

そんなイザコザがあった関係から、それ以降の貴族学院の入学試験はより難しく、また礼儀作法にも厳しい点数を振り分けられるようになった。



そして、ヘンリー世代は王女の入学があった為、学院側はより緊張感のある対応を余儀なくされた。




特に王女とその側近たちが居るAクラスはより厳格な運用となり、婚約者の居る者はその婚約者との仲を歪めるような行いはしない、婚約者の居ない者は婚約者の居るものには近寄らない、と言った誓約書が交わされたのだ、王女を含めた全員が、である。




初め学院側が誓約書の提出を求めたのは、王女とその取り巻きの令嬢たちには婚約者が居たので、婚約者の居ない2名の女子、ジェマイマとアマベルだけだった。


クラス分けの発表の前に2人は別室に呼ばれ、嘗ての反省から誓約書の提出を義務付ける旨の説明を受けた。




説明を聞いたジェマイマは、


「勿論、誓約書にサインすることは吝かではありません。しかし、それでは些か問題の抑止力には足らないのでは?」


と言い放ち、


「実際、その男爵令嬢が誰彼構わず男漁りをしたことが発端とは言え、この誓約書には、婚約者が居るにも関わらず不埒な思惑で親密になった者、つまり男性側へ罰則の言及が無い、これはどう言った了見でしょうか。




例えば、わたくし、いえお隣の彼女とわたくしたち、と複数形で問うても宜しい?


そう、ありがとう、ではわたくしたちが、その気がなくても、婚約者のいる不埒な愚か者が粉をかけてきたら、秋波を送ってきたら、しかも爵位を盾に、なんせ我が家はしがない伯爵家ですから、あら、貴女の御宅は男爵家、じゃあよっぽどね、そう言う訳で、高位貴族に爵位を盾に迫られた時、この宣誓書だと無理やり迫られた挙げ句、責任を取るのがわたくしたち、となってしまうのは、これは常識的にみておかしな話。




だいたい、その令嬢イザコザ問題の当事者が、婚約者のいる第1王子殿下なのですもの、どんな爵位の者でも楯突くことは容易じゃないことなど、先生方こそそうお思いでは?




たまたま同学年に、従姉妹の公爵令嬢が在籍していたからこそ、王子殿下にも意見出来て、先生方も対処に至ったのでしょうけど、わたくしたちのような、吹けば飛ぶような爵位の小娘になど、何ができるでしょうか。




そう言った困った事態に陥った時、どう対応し、誰が判断し処罰を決め、責を負うのが誰なのか、もっと明確にして頂いて、書面でわたくしたちに一部ずつ頂きたいものですわ。




もし、それを頂けるのでしたら、わたくしたちは書面を肌身離さず持ち歩きつつ、それ相当の自衛を致しますし、それを担保に宣誓書にここで署名を致しますけれど」



そう詰め寄ったと言う。



その後、粉をかけたり秋波を送るような不埒な者が現れたらすぐに教師にしらせること、対処は学校側で行うこと、責任は不埒な愚か者が負うことを明記した書面を2人に交付したのだった。




その書面を使う場面はすぐにやって来て、男爵令嬢のアマベルは見目の可憐な少女であったから、Aクラスの侯爵家の次男が王女殿下のご学友の婚約者がありながら、アマベルを裏庭に呼び出し関係を迫ってる所を、ジェマイマとその婚約者に見咎められ、婚約者の令嬢はあろうことか、アマベルに対して、ひどい言葉で詰め寄った。




「貴女、男爵令嬢の立場で婚約者のいる男性に迫るなんて、」


ひどい剣幕で怒鳴りつける令嬢の言葉を遮って、ジェマイマはアマベルを背中に庇うと、


「その発言を訂正して下さいませ。侯爵家の威光をチラつかせて、アマベルに関係を迫っていたのは、見ていた通り侯爵令息の方だったでしょう。わたくしとご一緒に反対側から見ていましたわよね。



だいたい、わたくしたちは、そちらのチームに近寄らないように、普段から自衛をしておりますのよ。


教室の半分以上前には行かない、出入り口は後ろだけを使用する、ご不浄へ向かう途中で邂逅しないようにBクラスのご不浄まで遠征して使用する、昼休みに邂逅しないようにランチボックスを持参して食堂は使用しないなど、日々皆様に近寄らないようにしております。




こちらに来たのは、アマベルの無くなった教科書をこの場所で受け渡すという、匿名の手紙を受け取ったからですわ。さあ、では学校側から明示された手続きに従い、職員室へと参りましょう」




そう言って、2人で首から下げた袋の中から教師から受け取っていた不埒者対処に関する誓約書面を取り出して、侯爵令息とその婚約者に掲げて見せたと言う。




結果、その侯爵令息は、第1王子と同じく停学と反省文の手紙を家族、親戚、傘下貴族、その他に出すことで、自分の愚かな行いを広める罰を受けたのだった。


勿論、各所から一生分叱られたのは言う迄もない。




王女含めた他6名の女子たちは、


「そんなご不浄までBクラスまで遠征などせずとも、ご利用なさいませ」


「いえ、行く道すがらどなたに邂逅しないとも限りませんので」


「王女殿下の行くご不浄の回りに男子生徒が侍っていたら、それこそ大問題ですからご利用なさいませ」




そんなやりとりも有り、2人にだけ誓約と自衛を強いてきたことを後悔し、結局、当初ジェマイマが言ったように、婚約者が居る者が不貞な行いをすることが問題で、学院がジェマイマとアマベルの2人にだけ理不尽な誓約を迫ったのも宜しくないと、クラス全員が正しく宣誓することが決まった。



そして、この騒動によって、ジェマイマとアマベルはクラスでアンタッチャブルな存在となってしまい、婚約者の居ないヘンリーのような者も気安く2人に声をかけることが出来なくなったのであった。



この時ヘンリーは、いやクラスの婚約者のいない男子たちは、この侯爵令息の短慮で不埒な行動を、心の底から憎々しく思い、結果、彼はクラス全員から嫌われ、王女の取り巻きからも外され、結局婚約も白紙にされてしまったのであったが、自業自得であった。



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