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第4話 まさかの総理就任!? 怒涛の引っ越し始まる!!

 その日、教室の空気がざわざわしていた。テスト返却でも地震速報でもない。いや、もっと国家的な話題だ。


「おい、速報出たぞ! “久遠成臣、党総裁に選出”だって!」


 森下の声が、まるで国会中継のナレーションみたいに響いた。……ん? なんかうちの名字呼ばれた?

 黒板にチョークを走らせていた先生の手が止まる。教室の視線が、見事なまでに一点集中。そして一瞬の沈黙を挟んだあと、「マジ!?」「ほんとに!?」「総理の娘誕生!?」の大合唱。

 もはや授業どころじゃない。先生は頭を抱えながら、「久遠さん……じゃなくて久遠“首相”のご息女は、静かに……」と言いかけて噛んだ。“首相”って言っちゃったよ先生。まだ就任前だから。見込みで呼ぶのやめて。あとなんで私が怒られてんの? 授業中にスマホ見て騒いだ森下を注意しろ。


「玲花〜〜〜総理の娘ってどんな気分!?」

「いや、普通に午後の小テストが心配です!」


 その日の私は、人生で初めて“拍手されながら帰る高校生”になった。何の表彰式? しかも帰宅部なのに。


 ──数日後。父は内閣総理大臣に就任し、久遠内閣が成立した。



「というわけで、玲花様。本日よりお住まいは首相公邸となります」


 結城のその一言で、私の“普通”が粉砕された。いや、待って。私は家にいちゃダメなの? どうせお父さんとほぼ顔合わせてないんだが⁉︎

 気がつくと家の前には引越しトラック……じゃなくて、内閣府の車列。

 ドアを開けると、SP、SP、SP。三段活用。

 私:「父はまだ帰宅していませんが……」

 結城:「あなた様のお迎えですよ」

 私:「ちょっと待って、まだ何も準備できてない!」

 結城:「ご安心を。お荷物は全て今日中にお運び申し上げます。」

 私:「え⁉︎ 私の汚い机の中とか汚いクローゼットの中とか開けるの? マジ勘弁して‼︎」



 首相公邸。外観は立派、内装は豪華、Wi-Fiは異常に速い。けど、まったく落ち着かない。階段を上るたびにSPとすれ違い、洗面所には警備用のカメラ(しかも4K)。なんで歯磨きまで国家レベルの解像度で見守られなきゃいけないの。


 バルコニーに出ると、上空を報道ヘリが旋回していた。テレビをつけると「久遠新首相、きょうから公邸入り」とテロップが出ていた。いや、別に生中継する必要はないだろ! しかも本人は今ここにいない!



 夕方。気を紛らわそうとテレビをつけると、またお父さん。

「久遠成臣新首相、亡き妻の墓前で就任を報告」

 その字幕が出た瞬間、胸の奥がひゅっと冷たくなった。画面には、お父さんが静かに花を手向ける姿。記者の声が続く。

「7年前に亡くなった妻・久遠澄香さん。生前は成臣氏の議員生活を献身的に支え──」

 ……そう、知ってるよ。私の母のことなのに、まるで他人のニュースみたいに流れていく。

「お墓参り行くなら、私も連れてってよ……」

 わたしはボソッと呟いた。お父さんは画面の中で“政治家の顔”をしていて、家族の表情はどこにもなかった。




 夜。ニュースを見ると、やはりお父さんが出ずっぱり。しかも、やたらセットで私の話題まで。

「久遠新首相の一人娘・玲花さん。“清楚で気品あふれる令嬢”と話題」

「ネット上では“新時代のプリンセス”との声も──」

 ちょっ、誰そんなこと言い出したの⁉︎ 私は風呂上がりにパンツ一丁で腰に手を当てて牛乳飲んでる女だぞ! “気品”と“プリンセス”って言葉は似合わないから!


 詩音からメッセージが届いた。

『ニュース見た!すごいね玲花!……でも無理しないでね』

『うん、ありがとう。公邸、Wi-Fiだけは最強』

 送信して、スマホを伏せた。静かすぎるリビングに、時計の針の音だけが響いている。



 しばらくして、結城が控えめにドアをノックした。

「玲花様、総理がお呼びです」

 え、こんな時間に? もうすぐ日付変わるけど?

 書斎の扉を開けると、スーツ姿のお父さんが窓際に立ち、外を眺めていた。そして私が来たことに気づくと、ゆっくりと振り返った。テレビの中と同じ、あの“政治家モード”の顔だ。


「玲花。お前にも、政府の一員としての自覚を持ってもらいたい」

「……え?」

「公務の場で、時に“母の代わり”として同席してもらうことになる。つまり──」

 そこで一拍おいて、重々しく続けた。

「ファーストレディの代理を務めてもらう」


 ……え、何その展開。私、頭の中カフェとパンケーキのことしかないんだけど!? 「テッテレー! ドッキリ大成功〜!」と誰かが突入してくるのを待ったけど、その様子はまったくない。


 父の背後のテレビでは、ちょうど“新政権スタート”のテロップが流れていた。その明るい音楽の中で、私の頭の中だけが真っ白になっていた。


 ──こうして私は、史上最年少の“ファーストレディ代理”に任命された。

 ちなみに、本人の意思は聞かれていない。


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