恋が消えてしまった世界。
この世界に恋はなかった。
正確には、「恋愛」は法律によって管理されていた。
女は希少で、男は余っているからだ。
今より100年前、魔王の呪いにより男性が多く生まれるという事態が続き、男女比20対1という極端な偏りが生まれてしまったことが理由である。
人と魔族との戦争において最終盤。人類があと少しまで魔族を追い詰めた際に魔王が世界にかけた呪い。
それは人類の女が生まれ無くなる呪いであった。
その呪いがかけられた1年後、赤ん坊の男女比は2000対1と極端な差であった。
人類は魔族との戦争を中断してでもその呪いの解呪に全力を注がざるを得なかった。結果として呪いを弱めることはできたものの戦争は100年経っても続き人類の男女比も20対1と余談を許さない状況が続いていた。
そんな現在女は国家により管理され、恋などは不平等を招く感情として、禁止されていた。
男は貴族や実績あるものしか女に会うことが許されず、平民が会話をすることはほぼなくなってしまっていた。
女は神聖で、遠くて、触れてはならないもの。誰もがそう信じていた。いや、信じさせられていた。
そんな世界で禁書に指定されてしまった恋愛小説を偶然読んだ男の憧れが呪いを解く鍵になる事を今は誰も知らない。