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ゴマすり三下クソ野郎と美少女留学生の馴れ初め 〜4

 ドーモ。ゴマクソ第四話、始まります。アルバイトの給料日、一は口座から下ろしたバイト代を片手に、意気揚々と街へと繰り出し___。

 休日___!!


 本日は一にとって、待ちに待ったコンビニバイトの給料日!!


 これまで商品の品出しと陳列をし、トイレを隅々まで清掃し、常にニコニコと笑顔を絶やさず接客、レジ打ちを行ってきた!!


 その成果が今日、給与明細となって表れるのだ!!


「フフフ……」


 給与明細を見て、思わず笑みを漏らす一。


 一のコンビニの時給は992円!それを1日4時間!


 一は周の内3日、月でおよそ12日をアルバイトに費やしているため、一の給料は992×4×12=47616円也!!


 早速口座から振り込まれた給料を下ろし、一は街へと繰り出す。


 社会人であれば、住民税や電気代、水道代などの生活費を考慮した上で使わなければならない。


 しかし、一は未だ未成年!


 アルバイトの給料を全額、好きな事に使えるのは、未成年の特権!!


(さぁ〜て、どうしたもんかね……)


 街に出たはいいものの、この金を何に使うか、一はまったくのノープラン。


 欲しいものを買うも良し!少し贅沢なランチに舌鼓を打つも良し!


 ただし!友人を呼んで遊ぶのは論外!


 一がバイトの給料日であることを知られてしまえば、奴らは容赦無く一にタカるだろう。下手をすれば、バイト料が1日で飛びかねない!


(せっかくのバイト料を、あんな奴らのために使ってたまるかってんだ)


 ではどうするか?


 バイト料を手にした一が、真っ先に選んだ使い道は……!!




 ネットカフェ!!




 ともすれば一部の読者には、意外な使い道に思われるかもしれない……!


 しかし、ネットカフェというのは存外、居心地が良い!


 まずネットカフェは別名、漫画喫茶と呼ばれる程、数多くの漫画を置いている。


 往年の名作から、話題の最新漫画……場合によっては知る人ぞ知るマイナー作品まで、その種類、ジャンルは多岐に及ぶ。


 更にネットカフェは、通常のカフェと違い飲み物も飲み放題!


 コーヒー、お茶、ジュースに加え、場所によっては味噌汁やソフトクリーム等が置いてある店も存在する。


 更に、店によっては食事メニューの販売やスナック菓子の販売、ブランケットの貸し出しやシャワー室の設置、ダーツやビリヤードのできるアミューズメントエリアなど、そのサービスは様々!


 ブースは仕切で区切られていて、空調設備も整っている、正に理想のお一人様空間なのだ!!


 一の行くネットカフェは、シャワー室完備のフリードリンク、ソフトクリーム有り、スナック菓子やフードメニュー等の販売は行っていないが、持ち込みは自由といった店。値段は利用時間ごとにパック料金が設定されている!


 コンビニで唐揚げ弁当とおにぎりを二つ、そして味の違うポテトチップスを二袋買った一は、コンビニ袋片手にネットカフェに入店。


 6時間1500円のパックでフラットシートの席を取ると、まずはじめにフリードリンクコーナーへと向かう。


 備え付けの電子レンジで唐揚げ弁当を温め、その間にドリンクを数種類、これまた備え付けのトレーの上へと乗せていく。


 一度ブースに飲み物とコンビニで買った食べ物類を置いた一は、ブースのパソコンの電源をつけた後、今度は漫画を取りに漫画コーナーへと赴く。


 本日は、近年アニメ化もされもうすぐ完結間近の人気サッカー漫画を、1巻から最新巻までぶっ通しで読み耽る予定。


 手始めに1巻から10巻までを手に取った一は、ブースへ戻って、まずは食事を摂る。


 先程温めた唐揚げ弁当とおにぎり二つをお茶で流し込み、5分で食べ終える。


 次に一は、パソコンのヘッドフォンを装着して動画サイトで適当な音楽を流し、弁当に使った箸で手を汚さないようにポテチをつまみながら、早速漫画を読み始める。


 一はフラットシートに寝っ転がって漫画を読みながらポテチをつまみながらパサついた口内をジュースで潤す。


 気が向いたらドリンクコーナーへソフトクリームを取りに行き、漫画を読み疲れたら気分転換に動画サイトで適当な動画を閲覧しながら、時を過ごした。


 ___6時間後!!


 ネットカフェを出た頃には、時刻は午後4時半!


(やっぱアニメ化した話題作なだけあって、結構面白かったな。さて、帰るか)


 たっぷり漫画を読んで満足した一は帰路へつく。


 この季節だと、外の明るさも正午と変わらない……まだ遊ぶ時間も充分あるが、帰って少しテスト勉強もしたいので、今日はこの辺りで一旦お開き。駅へと向かう。




 そんな折、事件は起こった!!




「や、やめてください!」


 大通りの脇から入る人気の無い裏路地から、聞き覚えのある少女の声!


 妙に切迫したその声に、一は裏路地を覗き込む。


「ねぇ、いいじゃ〜〜ん」


「俺らとイイコトしようよ〜〜♪」


 コッテコテ!!


 そこにあったのは、男性二人からナンパされる少女という、コッテコテなアクシデントの現場!!


 男性二人は、金髪&茶髪に腰パン、チャラチャラしたシルバーのアクセサリーというチンピラ風!ネットスラングで言うところの D・Q・N!!


 しかも、ナンパされているのは……!!


「で、ですから!!私、門限までに家に帰らなくちゃいけないんです!!」


 アニエス……!


 ナンパされているのは、アニエス・カスタネール!!


 一、街で偶然見かけた知り合いがDQNにナンパされているという、レアアクシデントに遭遇!!


 物語においてはありがちなアクシデント……しかし!現実で遭遇する可能性は極めて低い!


 ……が、一方であり得なくもないと、一は思う!


 アニエスがどこに住んでいるのか一には分からない。


 が、西城学園に通う以上学園の最寄り駅から一本の路線で繋がり、かつ乗り換えの起点であるこの駅周辺は、彼女にとっても生活圏の範囲内だろう。


 加えてこの辺りは、昭和や平成初期と比べれば比較的治安は良くなってはいるものの、それでもガラの悪い輩は稀に見かける。


 そんなガラの悪い連中がアニエスのような美少女を見かければ、放ってはおかないだろう……!


(やべーやべー!!)


 一は直ぐ様スマホで警察に電話!!


 そののち、警察が来るまでの時間稼ぎのため、アニエスとDQNの間に割って入る!!


「な、永野くん……?」


 予想外の顔見知りの登場に、アニエスは驚いたような表情を見せる。


「あ?なんだお前?」


「オレらになんか文句あんの??」


 DQN二人が一に凄む!


 すると一!目にも留まらぬ速さで地べたに額をつけ、土下座をする!!


「どうかお見逃しください!!この者は(わたくし)の友人でございます!!」


 躊躇いなど微塵もない堂に入った土下座に、DQN達はゲラゲラと笑い出す!


「ギャハハハハ!!こいつマジで土下座しちゃってるよ!!」


「おもしれ〜〜!!写真とっとこ!!」


 茶髪のDQNがスマホを取り出そうとしたタイミングで、一は彼に縋り付く!


「お願いします!どうかお見逃しを……お見逃しを!!」


 ちなみに、この行動はただ赦しを乞うたわけではない!スマホで写真を撮られるのを阻止したのだ!


 一の行動は世間的に、特に非のある行いではないが、それでも万が一ネットに写真が流出すれば、後々の就活に悪影響を及ぼしかねないからだ!!


「ちょっ!?てめー離せやごらぁ!!」


 茶髪のDQNが一を蹴りつける!


「永野くん!!」


 心配して寄り添おうとしたアニエスを手で制し、一はDQN達が再びスマホを取り出そうとする前に、次のアクションを起こす!


「へへへ……お兄さんたち、もちろんタダでとは言いやせん」


 一は地べたに両膝をつけた体勢のまま、ヘラヘラと笑みを浮かべながらDQNらにある物を差し出す。


 それは、虎の子のバイト料4万円!!


 これが同じ学校に通う人間であれば、これを期に金銭目的での日常的なカツアゲの標的にされかねない。


 しかし、所詮この二人は街で偶々出会っただけの、二度と関わることのない人種!故に一過性の出費で事足りる!


 手痛い出費だが、この際背に腹は代えられない!!


「こちら、些少ではございますが……今回は何卒、こちらの方でお目溢しいただけましたら……」


 ヘラヘラとした笑顔を崩さぬまま、低姿勢で金を差し出す一!


 DQN達は顔を見合わせたのち、ニヤニヤと笑いながら言う……。


「……まぁそこまで言うなら?オレらも鬼じゃねえし?」


 そう言って金を受け取ろうとする金髪のDQN。


 その時!!




「ダメです!!」




 アニエスが声を張り上げる!


「あ"?」


「アアン??」


 DQN達がアニエスを睨むが、アニエスは構わず続ける!


「こんな人たちに、永野くんがお金を渡す必要はありません!!そんなの……間違ってます!!」


(バッッッおまッッッ!?)


 一の全身から、どっと冷や汗が噴き出す……!!


 悪手……アニエスの言動は正しいが、それはあまりにも悪手!!


「誰がこんな人たちだおぉぉおん!!?」


「てめ〜ちょっとカワイイからってチョーシこいてんじゃねーぞ!!」


 DQN達がアニエスに詰め寄ろうとしたところで一は立ち上がり、彼らを押し留める!!


「お、お待ち下さい!!彼女はただ、世間知らずなだけなのです!!どうかお赦しを……!!」


「ジャマだごらぁあ!!」


 金髪のDQNが一の顔面を殴りつける!!


「っっ!!?」


 思わず口元を両手で覆うアニエス……!


 一の身体はぐらりと揺らぐが、地面に倒れないようにグッと踏ん張り、絶えずDQNを押し留める!!


「お願いします!どうか!どうかお赦しを!!お願いします!!」


「て、てめこのやろ……!!」


「あんまチョーシ乗ってっと……!!」


 DQN達が再び手を出そうとした、その時!!


「こら、お前達!!そこで何をやってる!?」


 到着!国家権力!!


 DQN達は「ヤベッ!?」と口走り、一目散に逃げ出していく!


「通報を受けてまいりました!お怪我はありませんか?」


 警官が一とアニエスに声を掛ける。


「あ、俺は大丈夫ッス。えっと、アニエスさんは……?」


「私は大丈夫。永野くんが守ってくれたから……それより永野くん、血が……!!」


 気付けば、一の口の端からは一筋の血が垂れている……どうやら、先程殴られた拍子に口の中を切ったようだ。


「あ〜、大丈夫大丈夫。ちょっとね、口の中軽く切っただけだから……」


 心配するアニエスを宥めつつ、結果的に虎の子のバイト料を奪われずに事を収められ、一は心の中で安堵していた……!




__続く!!

 ゴマクソ第四話、いかがでしたでしょうか?


 今回はヒロインが街でチンピラに絡まれるという、恋愛モノではコッテコテの定番、まさに手垢がついたようなイベントでした。


 世間一般で言えば、チンピラに土下座をしながらお金まで差し出そうとした一は、男らしいとは言えないかもしれません。


 しかし私は、嫌な奴に頭を下げ、お金を渡してでもアニエスを守ろうとした一の行動は、これも一つの男らしさだと考えます。


 傍から見れば情けなくとも、結果的に一はチンピラ達をアニエスに近付けず、最後まで守りきったわけですから。


 カッコイイ人というのは、暴力が強い人ではなく、誰かを守るという目的を果たすもの。よくある暴力で解決するのも、結局はその手段の1つに過ぎないのです。


 そんなわけで、次回で一とアニエスの馴れ初め編は完結です。

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