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ゴマすり三下クソ野郎と美少女留学生の馴れ初め 〜3

 ドーモ。ゴマクソ第三話、始まります。スマホの地図アプリを見ながら一とロジェが辿り着いた、お婆ちゃんのいる場所……それは意外な場所であった___。

 お婆ちゃんの住む家を目指して独り、見知らぬ土地を彷徨っていた外国人の男の子、ロジェと出会った一!


 二人は肉のマサハルの牛ミンチコロッケで腹ごしらえを済ませ、自転車で目的地へと向かう。


 ロジェにヘルメットを被せて自転車の後ろに乗せ、一は時折足を止め、スマホの地図アプリで道を確認しては、また自転車を漕ぐ。


 それを繰り返している内に、辿り着いたその場所は……!!


「……あの…………ここ?」


 一は思わず、スマホの翻訳アプリを起動しないままロジェに訊ねる。


 ロジェを自転車の後ろに乗せた一が辿り着いたその場所……!




 それは正しく、霊園!!それも墓の形を見るに、俗に言う外国人墓地!!




 予想外!正に虚を突かれた一!!


 だがその一方、考えてみれば確かに伏線はあった!


 まず、ロジェが持っていた花。


 最初こそ、それについて思うことは特になかったが、良く考えれば花はお供え物の定番!


 さらに!ロジェはお婆ちゃんの家に行きたいではなく、お婆ちゃんの()()()に行きたい……そう言っていた!


 てっきり一はそれを、翻訳アプリによる独自の単語の解釈か、或いは子供特有の拙い言い回しによるもので、特に深い意味はないと考えていた。


 しかし、違った!お婆ちゃんのところとは、お婆ちゃんの住んでいる家ではなく、お婆ちゃんの()()()()()()()()……つまり、墓のことであったのだ!!


 自転車を敷地の駐輪場に停め、ロジェを降ろす一。


 正直、ロジェを彼の祖母に預けたらさっさと帰ろうと思っていた一だが、こうなるとそうもいかない。


 何故なら、ロジェの祖母は墓の下で眠っているから!


 墓参りを済ませたら、その後は近くの交番まで行って彼を預けなければならない!


 ロジェは祖母の墓を探して霊園内を歩き回り、一はそんなロジェの後をついて回る。


 やがてロジェは、一つの墓の前で立ち止まる。


「……これが、お婆ちゃんのお墓?」


 一が翻訳アプリ越しにそう訊ねると、ロジェはこくりと頷く。


 ロジェは祖母の墓をじっと見つめた後、手に持っていた花をゆっくりと墓の前に供える。


 そしてまた、墓をじっと見つめるロジェ……小学生にも満たない彼は、祖母の墓に果たして何を思うのか……?


 ロジェの心境を思いながら、一は墓石に刻まれた名前を見る。


 【Julie Castaner】


「ジュリー・カスタネール………ん?カスタネール……??」


 カスタネール……!


 どこかで聞き覚えのあるファミリーネームに、眉をひそめる一!


 その時!


「ロジェ!!」


 突如として聴こえてきた女性の声が、ロジェを呼ぶ!


 一とロジェが振り返ると、そこにいたのは……!!


「……………アニエスさん?」


「……え………永野……くん?」


 アニエス・カスタネール!!


 本日一の通う西城学園高等学校にやってきた留学生!!


 まさかの人物との遭遇に、一とアニエスが互いに面食らっていると、ロジェが呟く!


『お姉ちゃん』







―――――――――――――――――――――――――――――







 一とアニエス……!


 二人はロジェを間に挟んで、霊園内の一角にあったベンチに座る。


 ロジェはここに来るまでで沢山歩いて疲れたのか、アニエスに身体を預けるようにしてぐっすりと眠っている。


「……ありがとう、永野くん。弟を連れてきてくれて」


 そう言って、アニエスは眠るロジェの頭を優しく撫でる。


 そう!読者の皆様もお察しの通り、アニエスとロジェは姉弟だったのだ!!


 最初はそんな偶然が有り得るのかと呆気にとられる一だったが、よくよく考えれば有り得ない話ではない!


 特に観光地でもないこの街に、フランス人が二人……。


 これが観光地であったならば、そういうこともあるだろう。


 しかし、何の変哲もない住宅街にフランス人が二人は、果たして偶然足り得るか!?


 否……とも言い難いが、それでも二人の関係性を疑うには充分な要素である!


「いえいえ……むしろ、交番に連れて行くでもなく、勝手な判断でここまで連れてきちゃって申し訳ない……あっ、それと」


 一は少しバツが悪そうに、頭を掻く。


「ロジェくんさっき、お腹が空いてたみたいだったから、コロッケ食べさせちゃったんだよね。夕食前に、余計なことしちゃったかな?」


「ううん、そんなこと……。何から何まで、本当にありがとう。今コロッケのお金を……」


 そう言って財布を取り出すアニエス。


「いやいや、そんなぁ〜……いいのいいの。そんな大した額でもないから、気にしないで」


 それより……と一は切り出す。


「アニエスさん、ロジェくんを迎えに行ってたんだよね?」


 今日の昼休み、アニエスは弟を幼稚園まで迎えに行かなければならないと語っていた。間違いなくロジェのことだろう。


「……うん。幼稚園に着いたら、ロジェが居ないって大騒ぎになってて……。それで、きっとここだと思って」


 アニエスの返答に、しかし一、疑問が残る……。


「ロジェくんは、なんでわざわざ幼稚園を抜け出したんだろう?墓参りがしたいなら、アニエスさんが来るまで待って、二人で行けば良かったのに……」


 一の言葉に、アニエスは少し俯いて答える。


「……ロジェはきっと、行きたいって言っても連れて行ってもらえないと考えたんだと思う」


 そう言うとアニエスは、ロジェが持っていた手紙を手に取る。


「私たちのお父さんね……お婆ちゃんと、仲が悪かったんだ。この手紙も、お父さんがゴミ箱に捨てたのを、ロジェがこっそり手元に残してたんだね……」


 このタイミングで一、自らの失態を悟る!


 聞いてしまった……深い話!


 踏み込んでしまった……家庭事情!!


 他意は無かった!


 ただ!咄嗟にパッと気の利いた会話が思い付かず、何の気なしに訊ねてしまった!!


 迂闊であったと悟るも、時すでに遅し……アニエスが事情を語り出す。


「私たちのお婆ちゃんね?学生時代から二十代の前半を、日本で過ごしたそうなの。その頃には、日本に好きな人もいたらしいんだけど……ひいお爺ちゃんがその人との交際を許さずに、フランスに連れて帰っちゃったんだって」


 アニエスの口から語られる祖母のドラマ!一もこればかりは、流石に途中で帰れない!


「その後お婆ちゃんは、ひいお爺ちゃんの決めた相手と結婚して、お父さんが産まれて……あ、でも!お婆ちゃんがお爺ちゃんや私たち家族のことを疎ましく思ってたとか……そういうことは無いよ?」


 ただ……と、アニエスは続ける。


「お婆ちゃん日本に移住する前、私たちにいつも言ってた。日本は私の青春時代を過ごした、大切な場所なんだって。だから、せめて最期の時は日本で過ごしたいって……」


 それはまるで、記憶の中の祖母を懐かしむかのように……。


 どこか遠くを見つめながら、アニエスは語る。


「でも……お父さんはきっと、それが納得いかなかったんだと思う。だからお婆ちゃんに、勝手にすればいい、なんて突き放すようなことを……」


 彼女の瞳に、哀しみの色が浮かぶ。


 正直一はこのようなヘビーな話に対して、気の利いたことを言える自信など全く無い!


 ……が!それでも尚、慎重に言葉を選んで発言する!


「たぶんだけど……アニエスさんのお父様も、もう怒ってないんじゃないかな?」


「……えっ?」


 キョトンとするアニエスに、一は自身の考えを言う。


「お婆様が日本に行ったことが本当に許せなかったなら、そもそも日本に来るって発想自体無かったと思うんだ」


 一は更に続ける……。


「まぁ、仮に仕方なく日本に来たのだとしても、お婆様が本当に許せなかったのなら、そもそも自分たちの生活圏をお婆様のお墓のある場所の近くには置かないんじゃないかな?」


 確かに……!


 アニエスの留学先の西城学園も、ロジェの幼稚園も、いずれもお婆様の墓のある霊園から電車ですぐに行ける距離にある!


 祖母を嫌っているのであれば、アニエスの父はなぜ、日本での生活圏にこの場所を選んだのか……?


「とにかく、一度お父様と話し合ってみることをおすすめするよ。家族だから言葉にしなくとも分かり合えるなんて言うけど、俺に言わせればあんなのは嘘だからね」


 そう!


 言葉にしなければ駄目!


 家族であっても……否!家族だからこそ!!


「永野くん……」


「次こそは幼稚園を抜け出したりしなくても、堂々と家族でお墓参りに来れるといいね」


 一のその言葉に、微笑むアニエス。


 その笑顔はまるで、天使のようでいて……!


(ッッ!!イカンイカン!!)


 危うく惚れるところであった一!


 一は自らの頬を叩いて戒め、そんな彼をアニエスは不思議そうに見つめるのだった……!







―――――――――――――――――――――――――――――







 その夜___!!


 ここはカスタネール家が日本での仮住まいにしている、都内にある高級マンションの一室!


「何故幼稚園を抜け出したりしたんだ?」


 カスタネール家の主、ロラン・カスタネールが、息子であるロジェに詰める。


 ロランは物静かでありながら、一家の大黒柱としての威厳を兼ね備えた……正に、当主!!


 姑息なゴマすり人間である永野一とは、対極に位置する男である!!


 そんなロランに詰められ、怖くて何も言えない息子のロジェ……。


 普段であれば、姉のアニエスも厳格な父には口は挟めない。


 しかし!この時は違った!!


 アニエスは、一の言葉を思い出す!


『家族だから言葉にしなくとも分かり合えるなんて言うけど、俺に言わせればあんなのは嘘だからね』


 そう!


 言葉にしなければ伝わらない!


 家族だからこそ!!


「………お、お父さん!」


 アニエスが口を開く!


 ロランは一瞬だけ、意外そうな顔をしたものの、直ぐ様いつもの調子で「なんだ?」と訊ねる……。


「ロジェは………お婆ちゃんに会いに行ってたんだよ」


「……っ!」


 アニエスの一言に、ロランの顔が強張る。


「……今度は……家族みんなで行こう?……お婆ちゃんに会いに。……私も、みんなでちゃんとお墓参りしたいから……」


 アニエスの言葉に何かしら思うところがあるのか、ロラン、少し押し黙る……。


 やがてロランは短く溜め息を吐くと、ロジェに向かってこう言った……。


「……今後、一人で勝手に外出するのは控えなさい。墓参りがしたい時は、ちゃんと言うんだ。いいね?」


 父の言葉に、ロジェとアニエスの表情はパァーッと華やいだ……!




__続く!!

 ゴマクソ第三話、いかがでしたでしょうか?


 アニエスとロジェの祖母は、青春時代を日本で過ごした過去がありました。


 その過去を本編で詳しく描写するかどうかは未定です。


 現在書き上げている残り二話の先も、ある程度エピソードのプロットは頭の中にあるのですが、お婆ちゃん関連の話を掘り下げる予定は正直、現段階では予定がありません。


 いずれ掘り下げるかもしれないし、掘り下げないかも……?結構行き当たりばったりで作成しているので。(笑)

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