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ゴマすり三下クソ野郎と美少女留学生の馴れ初め 〜2

 ドーモ。ゴマクソ第二話、始まります。留学生アニエスと出会った一。その放課後、帰宅中に小腹がすいた一は、寄り道をするのだが……?

「えっ?呼んでない……ですか?」


 予想外!!


 それは、美少女留学生アニエスにとってまったくの想定外!


 彼女はクラスメイトの少年から担任の大森が自分を職員室に呼んでいるという話を聞き、急ぎやってきたのだ!


 ……が!!


「いや~、私は呼んでないけどねぇ〜……。きっと、何かの間違いだろう」


 まったく身に覚えのなかった大森担任!


 それもそのはず!担任が呼んでいるというのは、アニエスにそう伝えた少年、永野一のまったくのデタラメなのだ!!


 訝しみながら職員室を後にするアニエス……そこへちょうど、永野一がやってくる!!


「あ〜、アニエスさん。ごめんね……もう分かってると思うけど実は、大森先生が呼んでるっていうの、あれ嘘なんだ……」


 一の言葉に、当然の如く頭に疑問符を浮かべるアニエス……。


 何故……?と彼女が切り出すよりも早く、一が矢継ぎ早に口を開く。


「いや……余計な御世話だったかもしれないけど、さっきクラスのみんなに勝手に予定決められそうになって、アニエスさん、困ってそうに見えたから……」


「えっ………私の……ために?」


 アニエスにとっては予想外の理由……!


「いや、やっぱり余計な御世話だったよね……本当に申し訳ない!」


 頭を下げる一。これにはアニエスも困惑……!


「い、いえ、そんな……!謝らないで?」


 一の対応に、逆に畏まるアニエス……。


 一は頭を上げながらも、腰はやや低めのまま続ける。


「そう言ってもらえると、有り難い……。あ、それともう二つ程、良いかな?まず、クラスのみんなは、あれで悪い奴らじゃないんだ。ただちょっと、フランスからはるばるやってきてくれたアニエスさんに対して、浮足立っちゃっただけで……どうか彼らに対して、気を悪くしないでやってほしいんだ……」


 それから、と言うと一は、申し訳なさそうな顔で頭を掻きながら続ける……。


「実はさっき、アニエスさんがいない間に今度の期末テスト明けに打ち上げを兼ねてアニエスさんの歓迎会をやろうって、勝手にみんなで予定決めちゃったんだ……。重ねて、申し訳ない!」


 二度目の謝罪……!!


 その打ち上げを兼ねた歓迎会を提案したのは、他でもない一自身!


 尤もそれは、クラスメイトが誘いに乗り気でなかったアニエスに対してヘイトを向けないようにするためのヘイト管理が目的であったが、何にせよ勝手に予定を決めたことは、紛れもない事実!


「何度も言うようだけど、本当にごめんね?もしも何か、テスト明けは予定があるとか、そもそもあまり行きたくないとかあれば、俺の方からそれとなくクラスのみんなに角が立たないように伝えとくんで……」


「あっ、いえいえ!別に嫌とかじゃないよ?その日ならたぶん、大丈夫。今日は偶々、用事があっただけだから……」


 そう言うとアニエスは、ぽつりぽつり、語りだす。


「実は私弟がいて……今年で6歳になるんだけど、今日はその子を私が幼稚園に迎えに行かなきゃいけないの」


 6歳の弟!かわいい盛り!


「あーそっか、アニエスさん弟いるんだ?6歳って言ったら一番かわいい時期じゃない?ウチも弟がいるんだけど、こいつが15歳の反抗期真っ盛りで、もう可愛気が無いのなんの……」


「ふふ、そうなんだ」


 互いに弟持つ者同士、弟の話題で一時の歓談。


「それじゃあ私、もう行くね?色々とありがとう。ええっと……」


「あ、永野っていいます。どうぞよろしく」


「こちらこそよろしくね、永野くん!それじゃあね!」


 教室へと戻っていくアニエス。


 この瞬間、一はアニエスの花が咲くような笑顔に、思わずドッキリ!


(……いやいや。調子乗るなよ、俺)


 一、直ぐさま(かぶり)を振る……。


 ゴマすり三下クソ野郎の身分で、美少女留学生に恋慕するなど、あってはならぬ愚行!!


 刹那の煩悩を振り払い、一もまた、教室へと戻っていった……!







―――――――――――――――――――――――――――――







 放課後___!


 一の家は学校の最寄り駅から下り方面へ一駅跨いだ先の駅から徒歩10分の、集合住宅の一室。


 だが、一は電車を利用しない!!それは何故か!?


 (はじめ)宅の最寄り駅の路線は朝、通勤途中のサラリーマンとOL、果ては通学途中の学生達が群れを成し、とても混み合う!


 ならばいっそ、自転車でいい……否、自転車()()()!!


 自転車……それは、人類の叡智の結晶!


 徒歩よりも数段速く、自動二輪のような免許も要らずリーズナブル!かつ、程良く健康的!!


 強いて難を言うのであれば、西城学園の校門手前の100メートル余りの坂道が登校時には堪えるが、そこはまぁ御愛嬌!


 急勾配を何度も上下するような道程でもなければ、自転車はまさに、最適解!!


 今日も一は、颯爽と自転車を漕ぎ、悠々と帰宅するのだ!!


(………む)


 西城学園の最寄り駅から1つ隣の駅に差し掛かったところで、ふとペダルを漕ぐ足を止める一……。


(ふむ……腹が減ったな)


 今日の5時限目の授業は体育!


 一達2年B組の男子生徒は、地獄の獄卒の如き鬼体育教師、輝村(てるむら)の指導により、悪夢の校庭耐久マラソンを敢行されたのである!!


 男子生徒一同は思った……今日が曇りで助かった、と!


 これがもしも、太陽燦々、日の光が肌を焼く真夏日に行われていたら……!?


 阿鼻叫喚!楽しいはずの体育の時間は、教育委員会への通報一歩手前の、拷問時間へと様変わりしていただろう……!!


 ともあれ、今日の5時限目の体育ではそのようなことがあったため、一の身体は兎角早急にエネルギーを欲していた!


 とはいえ、時刻は15時52分!ガッツリと食事を摂ってしまっては、夕食の時間に響く……。


 よって、できれば何か軽いものが望ましい。そんな時、一の脳裏に浮かぶ1つの選択肢!


(肉のマサハルの牛ミンチコロッケ!)


 肉のマサハル!


 線路沿いから少し離れた通りにある、老舗肉屋!


 そこにある、国産和牛のミンチ肉をジャガイモに混ぜ込んだコロッケが絶品なのだ!


 コロッケなどコンビニレジ横のホットスナックコーナーにも置いてある……が!


 肉のマサハルの牛ミンチコロッケは、レジ横ホットスナックのコロッケとは一線を画す旨さであると言っても、過言ではない!!


 それほど、一にとってイチオシの逸品なのだ!!


 一、直ぐ様進路変更!線路沿いを離れ、大通りを道なりに進み、向かうは肉のマサハル!


 程なくして、大通りの向かいの歩道沿いに、肉屋の看板を目視!信号を渡れば、肉のマサハルは目と鼻の先!


 そんな折だった!


 ふと一の視界の端に映ったのは、歩道の隅に蹲る、ブロンドヘアーの人影!


 横断歩道を目前にして、一は思わずペダルを漕ぐ足を止める。


 蹲っているのは、一輪の花を握りしめた外国人の男の子!


 園児服を着ているので、まだ未就学児。しかし、周辺に幼稚園教諭や保護者らしい姿は無い!


 そもそも通りに人影自体疎らで、男の子を気に掛ける者はいない……!


 これは流石に素通りできない!迷子かもしれないし、この物騒な世の中、放っておけば男の子が何か事件に巻き込まれてしまう可能性もなくはない!!


 小さい子供とはいえ、見ず知らずの外国人に話しかけるのは些か緊張するが、一はここ最近英検二級を獲得した自らの英語力を武器に、果敢に男の子に話しかける!


『どうしたの、ボク?迷子?お父さんかお母さんは?』


 一応読者に断っておくが、今一が話している『』内の言葉は全て英語である。


 ただ、外国語の文章を調べながらスマートフォンで入力するという手間を省くため、この作品では敢えて外国語は『』内に日本語の文章を打つという表現をさせてもらう!


 英語を含め外国語に対して苦手意識のある作者の事情を、どうか汲み取ってほしい……!


 一が話しかけると、男の子はビクリと肩を震わせながら一を見つめ、恐る恐る口を開く……。


 が!!


 解らない……一には男の子の言葉が解らない!!


 断っておくが、一はこれでも英検二級!


 たとえネイティブな発音の早口な英語であっても、ある程度聞き取れる自信がある!


 その一が聞き取れない!


 それもそのはず、男の子の話す言葉は英語ではない!


 ヨーロッパ圏の言葉ではあるが、それが果たしてどこの国の言葉なのか、一には皆目見当もつかない。


 しかし一、意外にも冷静!


 相手が英語圏の人間でない事など、想定内。


 一にはこういう時のための、秘策がある!


 一はポケットからおもむろにスマホを取り出し、とあるアプリを起動。


 外国語翻訳アプリ!!


 そう!現代の技術革新によって産み出されたスマートフォンは、最早ただの携帯用通信端末に非ず!


 地図情報の取得、公共交通機関の利用、果ては飲食店や小売店での決済に至るまで!


 この僅か6インチ程度の電子機器の中に、ありとあらゆる機能が搭載されているのである!!


 この外国語翻訳アプリもまた、その機能の1つ!


 一は男の子に向かってスマホを向け、もう一度英語で彼に語りかける……。


『もう一度、ゆっくり、これに向かって喋ってみて』


 一の意図を察した男の子は、スマートフォンに向かってゆっくりと喋る……!


 すると、スマホの翻訳アプリが早速男の子の言語を解析し、日本語の音声に直す!


 翻訳された内容はこう!



『お婆ちゃんのところへ行きたい』



 お婆ちゃん!


 どうやらこの男の子は、祖母に会いに行く途中であったようだ!


 ついでに、翻訳アプリの機能により、男の子の話す言葉が()()()()()であることが判明!


 一は、翻訳機能を日本語→フランス語に切り替え、スマホに向かって話す。


「お父さんとお母さんは?」


 翻訳アプリが、一の日本語をフランス語へと変換し、男の子に伝える。


 以降、一と男の子は翻訳アプリを通じて会話する。


『パパはお仕事……ママはまだフランスにいる』


「じゃあ、一人でここまで来たの?」


『うん……』


 翻訳アプリを通じて、一は男の子の事情を少しずつ紐解いていく……。


 一は思い切って訊ねる。


「幼稚園はどうしたの?」


 そう!園児服を着ているということは、この男の子は先程まで幼稚園にいたということ!


 一の質問に、男の子は少しだけ言い辛そうに視線を落としたのち、観念してこう答える。


『抜け出してきたの』


 思った通り!


 いくらお迎え時間を過ぎているとはいえ、幼稚園側が未就学児を一人で家に返すはずがない!


 どうやらこの男の子は、中々のわんぱくボーイのようだ!


「お婆ちゃんのおうちはどこか分かるの?」


 一が訊ねると、男の子は一に一通の手紙を差し出す。


 それはフランス語で書かれていて、一にはほとんど読み取れない。


 しかし、男の子が指差す一文を見ると、そこにはTokyoの文字に続いてこの街の名前のローマ字綴り、更には詳しい番地まで書かれている!


 この男の子は、この住所を手掛かりにたった一人でここまできたようだ!


「どうやってここまで来たの?」


『駅の大人の人に手紙の住所を見せて、お小遣いを渡して切符をもらったの』


 どうやら男の子は、駅員から手紙の住所の最寄り駅を、身振り手振りで教えてもらったようだ。


 未就学児とは思えぬ行動力!あっぱれ!!


 しかし、降りるべき駅は教えてもらえても、そこから先へは案内してはもらえない。


 幼稚園をこっそり抜け出したということは、親に知られずに祖母に会いたい、何らかの事情があったということ。


 つまり、交番などで道を尋ねれば保護者に連絡が行く可能性があるため、警官を頼るわけにもいかない。


 ともなれば、これはもう道行く人に尋ねる他ないが、この時間帯はこの辺りも人は疎ら。


 加えて、いくら行動力のある男の子でも、言葉も通じないであろうただの通行人に話しかけるのは、些かハードルが高かったのであろう……!


 結果男の子は、ここで立ち往生していたのだ!


 ある程度事情を察した一は、しばし考え込む。


 普通に考えれば男の子を交番へ連れて行くのがセオリーだが、それでは両親に内緒でここまで来た男の子の決意を無駄にしてしまう。


 そこに果たしてどういった事情があるのかは解らないが、未就学児がたった一人でここまでやって来ることがどれほど勇気のいることかを考えれば、その事情は察するに余りある!


 加えて、手紙に書かれている住所はここから程近い……スマホの地図アプリを使えば、すぐにでもたどり着ける距離。


 会いに行くのはお婆ちゃん!男の子の親族であるのだから、引き渡しても問題は起こらないだろう!


「よし、分かった。お兄さんがそこまで連れてってあげる」


 一のその言葉が翻訳アプリで変換され、その音声を聞いた男の子の目が輝く!


『ほんとう!?』


「もちろん。さ、このヘルメット被って。そんで、お兄さんの自転車の後ろに乗って」


 一は、自らの被るヘルメットを男の子の頭に被せる。


 予備のヘルメットなど当然持っていないので、ここはもちろん男の子優先だ!


 その時!ぐぅぅ〜、と男の子のお腹が鳴り、彼は恥ずかしそうに自身のお腹を押さえる。


「……まずは腹ごしらえをしようか。この先に、美味いコロッケを置いてる肉屋さんがあるんだ」


 そう言って、一旦翻訳アプリを閉じようとする一。当然だが、自転車を漕ぎながら翻訳アプリは使えないし、地図アプリも使わなければならない。


 しかし一、ここで思い出したように、男の子に訊ねる。


「お兄さんは永野一っていうんだ。ボク、お名前は?」


『ロジェ』


「OKロジェ、行こうか」


 互いに自己紹介を終え、一はロジェを自転車の後ろに乗せた!




__続く!!

 ゴマクソ第二話、いかがでしたでしょうか?


 余談ですが、ゴマクソ本編は語尾に『!』を多用することで、ところどころナレーションの圧を強めにしています。


 日常モノと圧の強いナレーションって、地味に相性良い感じしますよね。

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