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1・悪役令息に転生しちゃった僕

 「ちょっと聞いてるの?デイビスは僕の婚約者だよ!それなのに、しれっと近付いてさぁ。そもそも男爵家の令息なんかが声を掛けてもいい人なんかじゃないんだよ。分かってる?」


 僕は目の前の男爵家の令息であるアンジー・ホワイトにそう言い放つ。

 由緒あるアンダーソン侯爵家の次男である僕ロビンは、自分を怒らせたらこの社交界に居られない…っていうのを教えてやってるのさっ!

 今お城で開かれているパーティーの真っ最中で、並み居る参加者達はそんな状況を遠巻きに見ていて…


 そしてアンジーはその可愛い顔をビクつかせ、ぶるぶると震えている。僕は、なんて小動物みたいで可愛いの!?って内心悶え苦しんでいた…

 だけどそれを何とか隠して、冷たい表情をしてアンジーを睨みつけている。それはもちろん、ある状況を期待してなんだけど…おかしいな?


 (だけどまだなの?まだ来ないのかなぁ…早く来てって~)


 「そもそもさ、そんな平凡な顔でデイビスに似合うと思ってる?そんなに可愛いと思ってる訳…ハッ、笑っちゃうね!鏡見て出直して来いよ?」


 そんな僕の言葉にアンジーは、目に涙をいっぱいに溜めて押し黙っている…


 (ちょっとー!早く来いってさぁ。そんなどうでもいいモブと話し込んでる場合じゃないだろ?ほら!早くぅ~)


 そんな険悪な雰囲気に、そこに居合わせた人達は「イジメ?酷い…」「あんな言い方、可哀想過ぎるよ…」「何様なんだろうね?全く」などと口々に呟いている。だけどね、侯爵家令息の僕に正面から意見を言えるヤツなんて、王族か公爵家くらいしかいないのよ?貴族の身分社会万歳!


 「グスッ…ウッ、ン…」


 とうとうアンジーは耐えきれなくなって、顔を真っ赤にして俯き泣き始める。それに内心僕は「マズいな…」って動揺し始めて…


 (ほら、泣いてるってー?こういう時にサッと現れて僕を断罪しなきゃ!「何だか騒がしいな!また君か…ロビン」とか何とか言っちゃって僕を注意しないとさーっ。もーう、早くして~。それにしてもそこのモブ!邪魔だってばぁ。ハァ…もうダメか)


 「ア、アンジー?んーっと、僕も…誤解があったみたいだ。だからね、泣くのはやめて欲しいな~ハハッ。もう来ないみたいだからさ、泣いても無駄だよ?なんつって!」


 僕は嫌な汗をかきかきしながら、アハハハッって誤魔化し笑いを浮かべて、アンジーの手に持っていたハンカチを握らせる。そして…


 「ごめんなさーい!」


 そう叫んで、その場から一目散に逃げ出す。生まれて初めてこんなに早く走ったんじゃね?くらいの速さで会場を走り抜けて、大きな柱の陰まで来てホッと息を吐く。


 「もう何だよ…デイビスのヤツよぉー。どんだけモブとの話が面白いんだ?あっ!あれ公爵家の令息だったか?それなら攻略対象揃い踏みだったのね…」


 よく見れば、この社交の場で人気のツートップの二人が揃っている。おまけに仲良さそうに喋っていたりして…。それならさ、今回の僕の悪役令息ターンなんて意味なかったじゃん!なんて考えるけど…


 僕は今、異世界転生ってやつを経験している。

 実はこの世界、『綺羅綺羅(キラキラ)ロマンスタ!』というBLゲームの中なんだ。


 なんの因果か、僕はそのBLゲームの中の攻略対象人気No.1、デイビス王子の婚約者である悪役令息に転生してしまっていた!


 僕の前世は、何の特色もない日本人の男の子で、おまけにこのゲームをプレイしたこともなかった。じゃあ、何故知っているのかというと…妹が物凄くこのゲームに嵌っていたから。

 僕自身は全く興味ないのに、そんなのお構い無しでプレイ内容を話して来る妹に辟易していたけど、刷り込みって恐ろしいよね?何故か大まかな流れ程度は理解してしまっていたんだ。だからあの時気付いた…この世界がゲームの中だってことを。


 僕だってさ、生まれて直ぐから前世の記憶があった訳じゃない。きっかけは僕がこの国の第一王子、デイビスの婚約者として選ばれた事だ。

 この世界は前世とは違って、男だけど子供が産める事実。そんなとんでも設定があるから、同性婚も当たり前になっていて…

 それ何でだって?知らないよ…そんなの神の領域じゃん!細かい事は一切考えない…それが異世界転生のお約束だろ?

 そんなこんなで婚約者として初めて顔合わせした時、僕らはまだ十歳になったばかりだった。


 「デイビス・フォン・ガルシアだ。この国の第一王子だよ」


 (はぁっ?マジで…)


 そうデイビスから名前を告げたれた瞬間、頭の中で聞き覚えがあるテーマソングが突如鳴り響く。


 『チャララ~ララ!ララ!キラキラ~ロマンスタ!』


 (うん…待てよ?ハァっ!もしかして僕って、転生者?それもよりによって悪役令息のロビン・アンダーソンじゃーん!そんな馬鹿なぁ~)


 「ヤダーっ!ロマンスター!」


 僕は余りのことに、謎の言葉を吐きながら(周囲談)泣き出した!

 だけどさ、あん時の鳩が豆鉄砲を食らったようなみんなの顔、ホント面白かったなぁ~

 父上も母上も、王様も王妃様も騎士達もポカンとしちゃってね?あんなんでよくこの婚約が成立したもんだ!普通あの時点で婚約破棄にならない?実はその方が手っ取り早かったんだけどね…


 でもさ、幼くして自分のポジションに気付いてしまった僕は、その後は気負いなく過ごしていくのに成功する。だってさ、王様や王子にお会いするのだってどうせ婚約破棄するんだよ?だから緊張したって無駄だよなぁって。だからその後は思いっ切り本音。それが逆に良かったのかどうか…凄く仲良しになっちゃったけどけどね?王家のみなさんには無茶苦茶可愛がられてますわ!

 

 そもそも僕が前世で死んだのは、まだ高校生の時。アニ研の会合終わりに歩いていると、突然道路に飛び出して来た白い犬。その犬を咄嗟に助けようとした…それで車に跳ねられて。その後はどうなったのかな?死んだから全然分かんないや。その犬だけでも助かってくれていたら、死んじゃった僕も救われるんだけどね~

 だから一寸先は闇!そう思って一生懸命生きなきゃな~って。今世のテーマはズバリそれですっ!


 だけど僕だって自分の役割は分かってるよ?来たるべき時期には悪役令息としての役を果たそうと。だからこうして頑張ってるつもりなんだけど…

 ここかな?っていうタイミングで、それとなく動いているんだけど全然上手くいかない!これ、イベントじゃなかったのかな?ということが続いていて…

 だから未だに僕は、デイビスの婚約者のまま…攻略はどうなってるの?


気に入っていただけたら評価をよろしくお願いします!

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