クトゥルフ神話TRPGシナリオ「オカエリナサイ」
本作は、「株式会社アークライト」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』シリーズの二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
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PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」「新クトゥルフ神話TRPG」
【クトゥルフ神話TRPG「オカエリナサイ」】
【はじめに】
こちらのシナリオは探索型のシナリオになっております。SAN値がとても重要になりますので、TRPG初心者の方はPOWが多めになるよう設定することをお勧めします。
◾︎プレイ人数:2人固定(KPを除く)
◾︎推奨技能:目星、図書館、芸術(必須)
◾︎推定プレイ時間:5時間
◾︎神話生物:イスの偉大なる種族
◾︎新規キャラを使用すること(推奨というだけなので例外はあり)
◾︎PCは2人とも中学生であることが固定です。学年とクラスも同じにしておいてください。
◾︎PCは友人同士であることが固定(親友、恋人、幼なじみ等でも結構です)
◾︎PCは2人ともピアノを弾くことができる設定です。少なからず芸術の技能にポイントを振っておいてください。
◾︎持ち物の所持は認められません
【舞台設定】
本シナリオの舞台は探索者たちの中学生の頃の母校です。しかし、現実ではありません。ここは昏睡状態になっている探索者たちの精神世界であり、探索者は何らかの方法でその過去にタイムスリップしたということです。
【背景】
今回のシナリオの重要な部分は、自分たちは肉体がタイムスリップしているわけではなく精神のみがタイムスリップしているということに気づくことです。しかし、完全な過去へのタイムスリップではありません。過去の時間軸の2人は、現実では生死を彷徨っています。その精神世界へのタイムスリップと捉えてもらって結構でしょう。
まず、PC1は既に亡くなっています。PC2はPC1を生き返らせるために、禁断の術に手を出してしまいました。この時、現代のPC2は年老いており、年齢はおおよそですが70〜80歳くらいを想定してください。もちろん、PLかKPが細かく設定しても構いません。(老人という根本的な設定は固定です。)
「イスの偉大なる種族」による精神のみを過去に戻す方法を見つけたPC2は中学生の頃に遡ります。この時点で、精神に負荷がかかったPC2は自分の目的や現代のことを忘れてしまいます。本シナリオではその記憶を取り戻し、PC2はPC1の精神を生き返らせるために、自分の精神を殺して生者の器を渡すかを選択します。もちろん、PC2もそれを受け入れるかの選択をすることが可能です。
(生者の器とは、精神を入れておくための肉体という認識で構いません。もしPC2が生者の器を渡せば、PC2が生き残ったという事実が書き換えられPC1が生き残ったことになります。もちろん、PC2の精神は消失し、元の生きてきた記憶や時間も消失されるでしょう。)
☆PC1とPC2は友人同士で、同じ高校へ受験する予定でした。しかし、受験を目前にPC1とPC2は不慮の事故にあってしまいます。そのうちのPC2だけが生き残ってしまったのです。PC2は友人を失った悲しみに暮れ、PC1を取り戻すため、様々な禁術に手を出すようになります。それが「イスの偉大なる種族」の「精神のみの時間跳躍」です。
PC1はPC2を庇って亡くなったことにすれば、ラストのシーンがもっと盛り上がるかもしれませんね。
今回は戦闘要素は少なく、ほぼ探索と言えるでしょう。ただ、その探索にも時間制限があります。精神を時間跳躍させているわけですから、PC2は徐々に疲弊します。探索開始が昼過ぎだとすると、日が落ちるまで…つまり、約5時間以内に真実を見つけなければいけません。(実際に時間という概念は学校内では存在しません。これは現実世界、PC2のいる時間軸の時間経過の話です。)PC2の精神が削れ切るまでに思い出し、選択をすることが重要ですね。時間経過はKP側に考えてもらっても構いませんが、目安としては1つの場所の探索につき約30分くらいでしょうか。時間経過についてはKPにお任せします。足止めや対抗ロールがその時にあれば、時間をさらに経過させてもいいですね。時間経過はPC2の精神状態から判断しましょう。2時間半を過ぎると、分かりやすく疲弊している様子が見られます。4時間経過すればぼーっとすることが多くなるでしょう。KPはPLに時間経過によって、PC2が疲れ始めていることをそれとなく伝えることが大切です。
【※重要な記憶について】
(※重要な記憶)とは、探索者たちが全ての記憶を思い出すための手掛かりのことを指します。探索者が(※重要な記憶)を全て(それぞれ計4つ)集めることで、教室に「イスの偉大なる種族」が開発した装置「時間通信機」が出現します。
☆片方でも思い出せれれば「時間通信機」は出現するので、ご安心ください。
【精神の共鳴】
今回のシナリオは少し特殊です。探索者が別行動をとることは不可能となっております。なぜならこの世界は2人が創り出した精神世界であり、2人一緒だからこそ精神世界が安定するからです。もし、別行動をとりたいと発言するPLがいれば別行動はできないことを伝えましょう。それでも無理やり離れようとするPLがいれば、CON30の対抗ロールが始まります。失敗すれば1d20のダメージです。普通に考えれば死んでしまうと思うので、HPが0になる前に戻りましょう。
【導入】
探索者たちは同じ教室で目を覚まします。どうやら眠ってしまっていたようです。季節は春のようで、教室は暖かい空気で満ちています。
窓の外は昼のように明るいですが、時間帯は不明のようです。なぜならこの世界に時間という概念がないからです。PLがKPに時間を尋ねた場合は不明だと答えましょう。
探索者たちはどうして学校で寝てしまっていたのか不思議に思いながらも、互いが顔馴染みであることに安堵しました。
☆KPは先に起き上がるか、声を相手にかけた方をPC1と設定してください。後に目覚めるか、相手に声をかけられた方はPC2になります。もし同時に目覚めるか声をかけあった場合は、SAN値の高い方がPC1。低い方がPC2としましょう。(全て同数であればDEXかPOWでも構いません。)
(探索者たちは中学生の姿をしていますが、それに関しては疑問を持ちません。現在進行形で自分たちは中学生であると思い込んでいるからです。もちろん、PC1は何も覚えていません。しかし、後々の探索で自分が事故に遭ったことに気づくでしょう。PC2は精神の時間跳躍について忘れているわけですから、自分が現在中学生であることにも疑問も持たないでしょう。)
そして探索者たちは微かに違和感を覚えます。ここでアイデアを振りましょう。
成功すれば、今の季節は春ではなかったことを思い出します。冬でも夏でも構いません。とにかく春ではなかったことのみを覚えています。
失敗であれば、特にその違和感に対して何も感じません。
探索者たちは「ここにどうしているのか?」という疑問を抱えることでしょう。教室の扉を開けて廊下に出ると、学校はがらんとしていて誰もいません。もし、誰かいないか声を上げる探索者がいれば、誰も返事をしないことが分かります。
どういう成り行きであれ、探索者たちは帰ろうとします。
しかし、玄関に手をかけてもピクリとも動きません。探索者たちは窓からの脱出や扉の破壊を試みようとするかもしれませんが、全て無効果になります。
自分たちが学校に閉じ込められた、と理解した探索者たちは戸惑うことでしょう。では、閉じ込められたことを理解したところでアイデアを振ってください。
成功すれば、職員室に行けば先生に会えるかもしれないことを思い付きます。
失敗すれば、閉じ込められた恐怖と不安から0/1d4のSAN値が減少するでしょう。もちろん成功の情報を得ることはできません。
【探索の開始】
学校に閉じ込められたことを探索者が理解した時点で、探索が自由にできるようになります。KPは探索者に探索できる場所を教えてみましょう。その際にマップを提示するとスムーズに行えるかもしれませんね。
【教室】
教室の中には誰もいません。扉を開けようとしても開くことはないでしょう。探索者は自分たちが目覚めた教室以外は開かないことに気づきます。
残念ながら、鍵開けの技能も無効になってしまいます。もし、鍵開けがクリティカルで成功したとするならば鍵穴が開かない仕様になっていることに気づくでしょう。その仕組みは不明ですが。
自分たちのいた教室に戻ると、探索者たちはここに見覚えがあると感じます。そこは探索者たちのクラスの教室だったのです。
ここでアイデアを振り、成功すると自分たちの机の中に所持品があるのではないかと思い、調べることができます。失敗すると、この情報は得られません。
しかし、探索者が所持品がないか調べたいと発言すれば目星を振ることが可能になるでしょう。成功すれば机の中を調べてください。失敗した場合は、机の中から何も見つからなかったことにしましょう。
机の中を調べることに成功した探索者は、以下のような紙切れを発見します。(※重要な記憶1)
『■■を■■■■■は精神を■■する■■■。
貴殿の■■と■■はしかと受け取った。
精神の消耗が■■■■へと招くため、■■■後には戻れ。』
これを目にした探索者たちは言葉にならない不安に襲われるでしょう。1/1d6のSAN値が減少します。
もしPC2がファンブルで失敗した場合はこれ以上ない恐怖に襲われ、2d6のSAN値が減少します。
この紙切れに目星を振ると、PC1とPC2によって得られる情報が異なります。
失敗ですと何も情報は得られませんが、PC2が成功した場合は自分の精神が危ないと直感します。PC1が成功した場合は焦燥感に駆られるでしょう。そして、この情報は《秘匿》として扱います。もちろんPLが共有したければ、することは可能です。
また、紙切れにオカルトを使いたいとPLが発言した場合は、文字の消失により技能が2/1に減少した成功率で振ることになるでしょう。失敗すれば情報は得られません。成功すればPC2はこの記述に見覚えがあり、自分の命を握る重要な情報であることに気づくでしょう。PC1で成功した場合は、PC2の存在に対して不安感を抱きます。何かよくないことが起こる兆候を感じ取ったことで0/1d6のSAN値が減少します。
【職員室】
探索者たちは職員室に向かいます。
職員室の扉に聞き耳を振った場合、教師の話し声が聞こえますが何を言っているのかは分かりません。
扉に手をかけると簡単に扉は開くでしょう。しかし、そこに人の姿はありません。どれだけ探しても誰もいないことに探索者たちは気づきます。ここで聞き耳を最初に振り、教師の声を聞いた探索者は0/1d4のSAN値が減少します。
探索者たちは担任のデスク、書類の入った棚、小型冷蔵庫を調べることが可能です。
〈担任のデスク〉
目星を振りましょう。成功した場合は引き出しから生徒の名簿表を発見します。開くと、そこには生徒の名前と出席番号が記載されており、探索者たちの名前も載っています。探索者たちは自分たちの学年が何年だったのか、またクラスはどこだったかの情報を得ることができます。
☆PC1とPC2の学年とクラスは必ず同じです。あらかじめPLに設定しておいてもらいましょう。
〈書類の入った棚〉
ここでは図書館か目星を振りましょう。成功した場合は『保護者会のお知らせ』と書かれたプリントを発見します。
これにさらにアイデアを振ると追加情報を得ることができます。アイデアが成功した場合は、追加情報としてプリントに記載された『スクールカウンセラーの配属』について知ることができます。PC1はこのお知らせに対し、身に覚えがないと感じます。しかし、PC2は覚えているようです。PC2はなぜ覚えているかの原因は不明ですが、これを読んだときに激しい怒りが込み上げました。また、PC2はこのプリントに対して怒りをぶつけるかもしれませんね。
☆PC2が怒りをぶつけたのは、学校側が助かった方のPC2に強くカウンセリングを進めたからです。友人を失った悲しみを大人のエゴでどうにかしようとされた記憶が強く残っているのでしょう。
〈小型冷蔵庫〉
冷蔵庫を開けるとプリンが1つだけ入っていることに気づきます。探索者はそれを食べることが可能です。しかし、KPは探索者に1つのプリンを分け合って食べることは難しいと伝えましょう。
ここでは話し合いでプリンを譲ることもできますが、逆に食べないという選択もあります。また、どうしても分けたいと探索者が発言した場合は、PC1とPC2で幸運をそれぞれ振りましょう。両者とも成功した場合のみ、分け合って食べることが可能になります。失敗した場合はプリンが崩れて食べられなくなってしまったことにしましょう。
プリンを食べた探索者は心が落ち着き、1d3のSAN値が回復するでしょう。
【保健室】
探索者たちは保健室へ向かいます。
KPはどちらが先に保健室へ入るかを尋ねましょう。もし、PC1が入った場合はPC2が幻覚を見ることになります。PC2が先に入った場合は何も起こらないでしょう。
次に、PC2が見る幻覚についてです。
PC1が先に保健室に入った瞬間、PC2はPC1の身体が引き裂かれるようにしてバラバラになるのを目撃します。PC2は唐突な悪夢に吐き気が込み上げ、その場に崩れ落ちるでしょう。心の奥が掻き回されるような感覚にPC2は1d4/1d10のSAN値が減少します。
PC1は保健室の扉の前で苦しむPC2に気づき、助け起こすかもしれません。しかし、PC1が保健室から出ない限りPC2の幻覚は終わりません。PC1が保健室から出ない状態で行動した場合、ターン制でPC2に1/1d10のSAN値チェックが入ります。
PC2が先に入った場合だと何も起こりませんが、保健室の薬品の臭いを酷く不愉快に感じます。ここには特に何も手掛かりはありませんので、ハズレの部屋ということになりますね。一応、棚に目星を振って成功すれば精神安定剤(1d3)を1錠獲得することができます。
【音楽室】
探索者は音楽室へと向かいます。
扉の前に立ったところでアイデアを振りましょう。成功した場合、探索者たちは『学校の怪談』について思い出します。ここは学校の怪談の一つ、『ひとりでに鳴るピアノ』で噂されている音楽室なのです。そのことを思い出した探索者たちは背筋がゾッとするような感覚を覚えます。
失敗した場合だと、失敗した探索者にのみピアノの音色が聞こえるようになります。どこかで聞いたことのあるような音に探索者は0/1d4のSAN値が減少するでしょう。
☆ここで聞こえるピアノの音色は互いの演奏です。つまり、PC1にはPC2のピアノの演奏が。PC2にはPC1のピアノの演奏が聞こえるようになります。なので、似ているようで2人の聞こえる演奏は全くの別物なのです。PLが同じ曲なのか聞いてきた場合はPC1は遅く滑らかな演奏、PC2は強く感情的な演奏が聞こえると教えましょう。もちろん聞こえる演奏がどんなものなのかは、探索者の性格に合わせて変更しても結構です。
音楽室に入ると、ピアノの演奏はピタリと止みます。アイデアが成功した場合はそもそも聞こえていないので、そのまま何も起こらない状態で大丈夫です。探索者たちはピアノとロッカーを調べることが可能です。
〈ピアノ〉
ピアノに目星か芸術を振ることができます。
目星を振った場合、成功するとピアノの調律がめちゃくちゃになっていることに気づきます。その後、探索者がピアノを演奏しようとしても、ピアノの音は鳴らなくなるでしょう。
目星に成功していない状態で芸術に成功すると、探索者はピアノをスムーズに弾くことができます。そして、扉の前で演奏が聞こえた探索者が相手のピアノでもう一度同じ曲を聞くと、とても懐かしい気持ちになります。自分が扉の前で聞いた演奏は相手の演奏だったのだと気づき、1d4のSAN値が回復するでしょう。もし、扉の前で聞こえていなかった場合は良い演奏だと思うだけにしておきましょうか。
〈ロッカー〉(※重要な記憶2)
ロッカーには聞き耳を使うことができます。
聞き耳に成功した場合、ロッカーの中からガタガタという音が聞こえるでしょう。ロッカーを開けると知らない老人が飛び出し、扉を開けた探索者の肩を掴んで詰め寄ってきます。
『君は帰るんだ、家に。帰るんだ!』
そう叫ぶと、老人は煙のように溶けて消えてしまいました。それを目撃した探索者は奇妙な現象に0/1d4のSAN値が減少するでしょう。老人が現れたロッカーに目星を振り、成功すると『推薦書』を発見します。探索者はどちらもこの推薦書に見覚えがあります。ここで2人は同じ高校を受験する予定だということ、そのための推薦を譲り合って喧嘩をしていたことを思い出します。
【コンピューター室】
コンピューター室に行きましたが、どうやら鍵がかかっているようです。鍵開けを振ることができますが、探索者たちは嫌な予感がすることを察知します。KPはそれでも開けるのかPLに尋ねましょう。
鍵開けに成功したうえで開けることを選択した場合、突然目の前がぼんやりと見えなくなります。意識が段々と遠のき、お互いがどうなっているのか分からなくなるでしょう。
目を覚ますと、どのくらいの間寝ていたのか。探索者たちはコンピューター室の入り口で起き上がります。コンピューター室を調べようとする探索者がいるかもしれませんが、ここには何もないことが分かります。この部屋はハズレでタイムロスのための罠だったようですね。ここで眠ってしまうと、1時間が経過してしまいます。
【理科室】
探索者は理科室へと向かいます。
理科室では人体模型、棚に入れられた薬、水道を調べることが可能です。
〈人体模型〉
目星、生物学を振ることができます。どちらかに成功すると、人体模型の心臓がないことに気が付くでしょう。探索者がさらに目星を振って成功すると、人体模型の片目がないことにも気づきます。さらに目星に成功すると、左腕がないことにも気づきます。さらにさらに目星に成功すると、大腸が床に落ちていることに気づきます。さらにさらにさらに目星に成功すると、人体模型がPC1の姿をしていることに気が付きます。突如幻覚を見てしまった探索者は驚きによって固まり、冷たい汗が背中に滲み出てくるのを感じます。1d4/1d10のSAN値チェックです。
また、この現象に遭遇したのがPC2だった場合《秘匿》として、これは本当に起こったことなんだと思い出します。そして、このPC1の姿を目の前で見たのは紛れもなく自分であるということも。
もちろんこの情報を共有するかはPL次第です。
〈棚に入れられた薬〉
薬学か化学を振りましょう。
成功すれば何の薬なのか調べることができます。探索者はその瓶のラベル(C1H8O7)に見覚えがありました。「クエン酸」です。これに対し、さらにアイデアを振って成功すると錆を溶かせるのではないかと思います。
〈水道〉
探索者は水道の蛇口をSTR18の対抗で捻ることができます。水道は錆び付いており、とても固いです。「クエン酸」を探索者が所持していた場合は利用することが可能です。しかし、使用した「クエン酸」はその1回で無くなってしまいます。
探索者が何らかの方法で蛇口を捻ることに成功した場合、蛇口からは水ではなくどこかの鍵が出てきます。それはどこの鍵なのかは不明ですが、持っていくことができます。
☆この鍵は図書室の鍵です。シナリオに大きく関係する重要な鍵なので、蛇口を捻りきれないPLには先に棚の薬を調べることを勧めましょう。
【家庭科室】
探索者は家庭科室へと向かいます。
しかし、鍵がかかっているようで開きません。鍵開けを振りましょう。成功すれば扉を開くことができます。
扉を開けると、強い刺激臭が探索者を襲いました。何かが腐っているかのような目に染みる腐乱臭です。探索者はこの臭いの発生源がどこなのか目星を振って調べることができます。成功した場合、家庭科室の1番奥の机の上に何か蠢くものが置いてあることに気づきます。それは赤黒い肉塊のようで、大きさは探索者の頭くらいあります。目的もなく蠢き続ける生物とは言い難いものを見た探索者は、0/1d6のSAN値が減少します。
また、家庭科室の調理棚に目星を振ることもできます。成功した場合、探索者は刃渡り16センチほどの家庭用包丁を発見します。もちろん、持っていくことが可能です。この包丁は4のダメージを受けることで壊れるでしょう。
【体育館】
探索者は体育館へ向かいます。
体育館の扉はすんなりと開くでしょう。探索者は体育倉庫を調べることができます。ステージは真っ暗で何も見えません。ステージに上がるための階段もないので、ステージ上に行くことはできないようです。もし、2人で力を合わせてステージに上りたいと発言する探索者がいれば、途端に見えない壁がステージの前に現れるでしょう。見えない壁に触れた探索者は非現実的な現象に0/1d4のSAN値が減少します。
〈体育倉庫〉
探索者は扉に聞き耳を振ることができます。成功すれば、遠くから車の走る音が聞こえるでしょう。
扉を開けると、そこは体育倉庫ではありませんでした。何やら見覚えのある景色が広がっています。探索者はアイデアを振ってください。これに失敗した場合、瞬時に目の前の景色はかき消され、いつも通りの体育倉庫が現れるでしょう。残念ながら体育倉庫にはなんの手がかりもないようです。
成功した場合、探索者は自分たちの通学路であることに気づきます。ここからはPC1とPC2で渡される情報が異なりますので注意してください。
〈PC1〉(※PC1の重要な記憶3)
PC1はいつの間にかPC2と正面向かいになっていました。PC2は怒った表情を浮かべています。そして、PC1が何を言っても反応してくれません。背を向けるPC2をPC1が追いかけようとした瞬間、映像が途切れたかのように全てプツリと消えてしまいました。
〈PC2〉(※PC2の重要な記憶3)
PC2はいつの間にか横断歩道の真ん中に座り込んでいました。そして、瞼の上を赤く温かい血液が流れていることに気づきます。触れれば、頭が切れていることが分かるでしょう。不思議と痛みは感じません。PC2が立ち上がろうとすれば、足が動かないことにも気づきます。足を確認してみると、つま先が上を向き、関節はありえない方向に曲がっていることが分かります。PC2は混乱するかもしれません。冷静に周りを調べる可能性もありますが、そうしている内に遠くからサイレンの音が聞こえてくるようになり、突然、映像が途切れたかのように全てプツリと消えてしまいました。
成功の情報を得た探索者たちは、いつの間にか元の体育倉庫に戻っていました。先ほどの映像は2人とも共有されています。つまり、PC1が見た映像はPC2にも見えていたということです。もちろん逆も同じように映像が見えています。探索者たちは自分たちが見た映像に対し、混乱と恐怖心がわきあがってくるでしょう。1/1d6のSAN値が減少します。
【図書室】
図書室には鍵が固くかかっています。鍵開けの技能で開けることも可能ですが、本来の方法は鍵を見つけて使用することです。それ以外の方法でこじ開けようとすると、探索者は首を締め上げられるような感覚に襲われます。鍵開けの技能は成功した瞬間からこの感覚が始まります。探索者はPOW20の対抗ロールでこの感覚から抜け出すことができます。失敗した場合、1ターンずつ探索者のSAN値が1d10減少するでしょう。
図書室には本棚がずらりと並べられており、窓からは暖かな日差しが差し込んでいます。図書館の技能で探索者は目的の本を探すことが可能です。ただ、PC1とPC2によって得られる情報が異なるので注意したください。
〈PC1〉(※PC1の重要な記憶4)
あなたはひとつの新聞記事を発見します。その日付は乱れており、読むことができません。
記事の一面に注目してみると以下のような記述が目に入りました。
『中学生2名はねられる 信号が見えなかった 不注意か』
あなたはこの記事にどことなく既視感を覚えます。そして、この記事を読んではいけないような不安感に覆われます。0/1d6のSAN値が減少するでしょう。
〈PC2〉(※PC2の重要な記憶4)
あなたは黒い背表紙の本を発見します。
それを手に取り、開いてみると以下のような記述が読み取れました。
『「精神のみの時間跳躍ー研究日誌」
私は長年、精神を交換することで様々な文明の研究に没頭することができた。しかし、私が交換した肉体の元の精神は寿命が短いため、長期にわたる記憶の喪失には耐えられないようだ。
………(長々しい研究の記述が続いている。)………
…私は若い肉体と精神ほど優秀なのだと考えていたが、それは間違いだったかもしれない。ソレは私を人間でないと見抜くことができたからだ。非常に興味深かった。研究を重ね、遂にはこれまで試したことのない、未知の実験を行うことになった。精神が崩壊しても取り戻したいものがあるらしいが、それよりも私は研究の結果が待ちきれない。』
これにオカルトを振ると、あなたは「精神のみの時間跳躍」ができる種族がいることを思い出すでしょう。
【最後の記憶】〈秘匿〉
PC2が(※PC2の重要な記憶1、2、3、4)を取り戻した時に進めるようになります。突然、激しい頭痛がPC2を襲い、その場に倒れました。
しばらくすると、暗い空間に立っていることにPC2は気づきます。暗闇を進んでいくと、深く帽子をかぶった老人が白衣の男と暗い部屋で会話をしているところを発見します。あなたはそれを遠くから眺める形になっているでしょう。2人にあなたの存在は見えていないようです。
老人「実験のデータさえ取れればいいのだろう?」
男「ええ、ご協力感謝いたします。」
老人「……ひとつ、聞きたいことがある。」
男「はい、何でしょう?」
老人「もし、精神が崩壊した場合はどうなる。」
男「ああ、ええ、はい、不明ですね。」
老人「不明だと?」
男「まだ試したことがない事例ですから。いえ、どこかの同胞が既に試しているかもしれませんけどね。それでも私には分かりませんよ。私は私自身で得た結果しか信じませんから。それよりも、本当によろしいのですか?」
老人「……ああ。もう決めたことだ。」
男「彼(彼女)と接触する時間には限りがあります。必ずここへ戻るように。」
老人「………。」
会話はここで途切れました。あなたはこの男を知っています。そして、この老人があなた自身であるということも。あなたはPC1と推薦入試のことで喧嘩をした帰り道、交通事故に遭ったのです。その事故でPC2だけが生き残りました。あなたはひどく後悔し、PC1を取り戻すために様々な禁術に手を出すようになりました。どれほどの時間を研究に費やしたのでしょうか。あなたはすっかり歳をとってしまいました。しかし、遂にその努力が報われる時が来たのです。あなたはある種族と出会い、時間を逆走できる方法を知りました。それが「精神のみの跳躍」…つまり、あなたの現在の肉体はずっと先の未来に存在するのです。そして、今ここにいる過去の2人の精神は肉体が昏睡している状態。あなたは「精神のみの時間跳躍」で事故直後の精神にタイムスリップしていたということです。今、目の前にいるPC1が亡くなってしまう未来をあなたは知っています。あなたの目的は未来を書き換えることです。ここであなたの精神を消失させて、PC1の精神を現実に送り還せば未来が変わる。全てはこの時のために費やしてきた。あなたの全ての願いはここに込められてきたのです。それを今、全て、あなたは思い出しました。
気がつくとPC2は先ほどまでいた場所に戻っていました。数秒間ですが意識を失っていたようです。倒れたPC2をPC1は心配するかもしれません。しかし、もう頭の痛みも苦しさもないようです。全ての記憶が戻ったからでしょうか。もし、PC2が狂気に陥っていた場合はそれも解消されているでしょう。
記憶を取り戻したあなたはPC1に教室に戻るべきだと提案します。PC1を連れて教室へ行きましょう。
【忘れていた記憶】〈秘匿〉
ここにはPC1が(※PC1の重要な記憶1、2、3、4)を取り戻した時に見ることができます。
気がつくと、PC1はいつの間にか教室の前に立っていました。周囲を見てもPC2の姿はありません。PC1は教室の扉を開けるべきだと感じました。扉を開けると眩い光が差し込み、PC1は思わず目を瞑りました。
次に目を開いた時、目の前に広がるのは教室ではなく見たことのある交差点でした。PC1は辺りを見回して周囲を確認するかもしれません。あなたは遠くにPC2の姿を見つけます。声をかけてもいいですが、PC2には聞こえていないようです。あなたは振り返らないPC2の腕を掴みました。
すると、あなたのすぐ横からつんざくようなブレーキ音か……はたまたアクセル音なのか。とにかくクラクションを鳴らされていることだけはハッキリと分かりました。それは歩道を歩いていたあなたたちに突っ込み、あなたは為す術もなくそれに押し潰される感覚がしました。不思議と痛みはありません。しかし、意識は段々ぼやけていきます。あなたは様々なことを思い浮かべるでしょう。この記憶は何なのか、PC2はどうなったのか、自分は死んでしまうのか。
そしてあなたはやがて理解しました。これは現実なのだ。自分はこの事故で本当に死んでしまった。どうしてこんな大切なことを忘れていたのだろう。あなたは推薦のことでPC2と喧嘩をし、その帰り道で事故にあったことを思い出しました。あなたは死を理解し、不安定な意識を手放そうとするでしょう。だって、もう自分は死んでいるのだから。
……しかし、あなたの意識がなくなる寸前、誰かの声が聞こえてきました。あなたはこの声にひどく懐かしさを覚えます。
「……ああ。もう決めたことだ」
あなたの遠い遠い潜在意識の中で、杖をついた老人が箱型の機械に入っていく様子が浮かび上がります。あなたは嫌な予感がしました。老人を止めなければならないという焦燥感に駆られ、何か声をかけるでしょう。しかし、老人は振り返らずに箱の中へ姿を消してしまいました。あなたは直感するでしょう。この老人はPC2なのだと。そして、PC2は自分を救うために……あなたが死んだ過去を変えるために命を投げ出しているのだと。そう感じた瞬間、手放そうとしていた意識が覚醒していくのを感じるでしょう。暗かった視界が少しずつ光に照らされ、あなたは光に向かって歩いていきます。思い出した、全ての記憶と向き合うために。
気がつくと、あなたは元いた場所に立っていました。PC2は数秒間ですが突然無言で立ち尽くしたPC1を心配しているかもしれません。もしくは、その場に倒れているPC2をあなたは発見するでしょう。そして、あなたは教室に戻るべきだとPC2に提案します。PC2を連れて教室へ行きましょう。
【教室ー変化後】
ここには【最後の記憶】か【忘れていた記憶】を見ることで来れるようになります。(もちろん両方見ても行けます)
最初に目覚めた自分たちの教室へ戻ると、その内装は変化しています。壁や窓がぐるぐると赤く濁っており、教室の机はめちゃくちゃになった状態で端に追いやられていました。そして、何よりも目立つのはブロンズ製の箱のような機械が教室の中央に堂々と設置してあることです。表面は精巧な彫り物が施されています。探索者が教室に足を踏み入れると、それは音を立てずにゆっくりと開くでしょう。その中の壁は様々なスイッチやパネルで覆われており、天井には赤く大きな宝石が埋め込まれています。しかし、宝石の色は暗く、輝きが失われているようです。
☆【最後の記憶】を見たPC2はこれが「時間通信機」であり、自分はこれを利用してここへやってきたことを思い出します。
探索者たちはこれにどちらが乗って現実に戻るのかを話し合ってください。残念ながら、2人で乗ることは不可能です。精神を戻す器は1つしかないからです。もちろん時間制限があるのでKPはPLに注意するよう伝えておきましょう。もし、話し合いでけりがつかないようでしたら強硬手段を取ることも可能です。自殺をしたいと発言するPLがいれば、命の消失になるのでこの世界そのものが崩壊してしまうことになると教えてください。それでもいいと言われれば、エンドにはたどり着けずロスト扱いとなります。
探索者は互いの思い出した記憶について話し合っても構いません。ただ、思い出していない状態で相手の話を聞くと混乱からSAN値チェック1/1d10が入ります。
☆重要なのは精神(SAN値)です。HPが0になると精神世界を創造する人そのものが亡くなってしまうのでしまうので2人ともロストしてしまいます。つまりは現実世界で昏睡状態に陥っている2人が死んでしまうということです。強硬手段に出るときもHPは0にさせないよう注意してください。
【結末】
ここからはマルチエンディングになっております。
以下の条件が満たされた場合、それぞれのエンディングにたどり着くでしょう。
■エンドA(PC1・PC2のSAN値が0になる/2人とも記憶を取り戻せないままタイムオーバーになる)
■エンドB(記憶を取り戻した状態でタイムオーバーを迎える)
■エンドC(PC2が「時間通信機」で現代に戻る)
■エンドD(PC1が「時間通信機」で現代に戻る)
【エンドA】(PC1のSAN値が0になった場合はPC2との立場が逆転します)
もうそこには正常なPC2はいませんでした。
PC2は目の焦点が合わない状態で、口元は笑みを浮かべています。PC1はその狂気的なPC2の素振りに恐怖心を抱きました。しかし、既にPC2の精神は限界を迎えていました。もう二度とPC1の言葉は届かないでしょう。閉ざされた校内にPC2の笑い声が響きます。それは泣き叫んでいるような悲痛な笑い声です。PC1は完全に正気を失ってしまったPC2に対して何を言うのでしょう。もう楽にしてあげるべきでしょうか?KPはPC1にPC2を楽にさせてあげるかどうか聞いてください。
しかし、どのような選択をしても結末は変わらないでしょう。PC2の精神もまた、限界を迎えてしまったのです。PC2は「あの日常を返してほしい」と願いながら意識を永久に失うでしょう。
(エンドA:「お返りなさい」)
【エンドB】
PC1とPC2は記憶を取り戻しましたが、どちらかを犠牲にすることなんてできませんでした。PC2は歪む景色の中で、遂に精神が限界を迎えたのだと悟ります。PC1とPC2は互いに最後の言葉を交わします。未来はきっと変化してしまうでしょう。しかし、その方がよかったのかもしれません。あの時に事故で2人とも一緒になれれば、残された片方が苦しむことはなかったのですから。精神が崩壊して終わるかと覚悟をしていたPC2でしたが、心は不思議と落ち着いています。PC1も穏やかな表情を浮かべているでしょう。そして、静かに2人の精神世界は消失していきました。
(エンドB:「お変えりなさい」)
【エンドC】
PC2が「時間通信機」に入ると、天井の赤い宝石がたちまち輝き出し、精神がぐちゃぐちゃにされるような不快感を覚えます。意識が途切れる寸前、PC1の表情が見えたような気がします。それは笑っていたのか泣いていたのか。あなたには分かりませんでした。
気が付くと、暗い部屋にいました。あなたは箱のような機械の中で眠ってしまっていたようです。箱から出ると、暗い部屋が実験室のような造りになっていることに気づきます。足取りはおぼつかなく、あなたは何か杖のようなものが欲しいと思いました。
「ああ、もうお戻りになられたのですね。」
すると、どこからか人の声が聞こえます。あなたが声のする方へ首を向けると、白衣を着た男が立っていました。……いえ、あなたはこの男に見覚えがあります。あなたはゆっくりと先程まであった出来事を思い出しました。
「ええ、ええ、そうです。あなたのお陰で素晴らしいデータが取れましたよ。ああ、あなたには杖が必要でしたね。さあ、どうぞ。」
あなたが精神世界での話をすると、男は満足そうに頷きながらあなたに感謝の言葉を述べるでしょう。男に何か恨み言を言う探索者もいるかもしれませんが、男はにこにことした表情のまま「それもまた運命なのでしょう。」と適当な返答しかしません。話がひと段落すると、男は笑顔を張り付けたままの表情で静かに言いました。
「いえ、私は少し気がかりだったのです。……あなたが何か良からぬことをするのではないかと。安心しました、あなたがあなたのままでいたことに。改めまして……お帰りなさいませ。」
その発言に探索者はどのような反応を見せるのでしょうか。男は探索者の反応を気にも留めない様子で、次の実験にも付き合ってほしいと言うのでした。探索者はそれに対し、何か答えてシナリオは終了します。
(エンドC「お帰りなさい」)
【エンドD】
PC1が「時間通信機」にに入ると、天井の赤い宝石がたちまち輝き出し、精神がぐちゃぐちゃにされるような不快感を覚えます。意識が途切れる寸前、PC2の表情が見えたような気がします。それは笑っていたのか泣いていたのか。あなたには分かりませんでした。
何かの電子音があなたの耳に届きます。ゆっくり目を開けると、白い天井が見えました。どこなのだろうとあなたが動こうとすれば、身体が動かないことに気づきます。声も枯れているのか何も言えません。あなたは何が起こったのか理解できないまま戸惑うでしょう。帰り道でPC2と喧嘩をし、その交差点を曲がったところで記憶が途絶えています。しばらくそうしていると、女性の声が聞こえました。
「えっ!?先生、先生!PC1さんが意識を取り戻しています!」
ドタドタとたくさんの足音が響き、あなたの家族や友人が心配そうな顔で駆け寄ってきました。あなたの家族は涙を流しながらあなたの身体をそっと抱きしめるでしょう。しかし、あなたが一番気がかりになっている人物が見当たりません。あなたは最後に一緒にいたPC2がどこにいるのか尋ねます。
「………PC2さんはね……昨日、亡くなったって……。」
「お前、信号無視した車にはねられたんだよ。覚えてないのか?」
「昨日までは2人とも危険な状態だったんだ。……そして、お前だけが無事回復できた。」
「PC2が亡くなったのはPC1のせいじゃないよ。」
「お前だけでも助かって良かったと思ってる。」
あなたは家族や友人から励ましの言葉をもらいますが、納得できませんでした。あの日、喧嘩なんてしなければ向かってくる車に気づけたかもしれない。背を向けるPC2の腕を掴まなければ、交差点付近で立ち止まらずに済んだかもしれない。様々な後悔があなたの脳内に押し寄せ、ぐるぐると渦巻いていきます。あなたは退院してからも学校に行けず、家に閉じこもるようになりました。家族や友人が心配して声をかけてくれましたが、あなたが耳を傾けることはありませんでした。やがてあなたはPC2にもう一度会いたいと願うようになりました。あなたは禁術と呼ばれるものに手を出すようになり、その研究を積み重ね、気づけば有名な学者として名を知られるようになりました。
____そして、今日はあなたの人生を捧げた願いが報われる日なのです。
「本当によろしいのですか?」
「………ああ。もう決めたことだ。」
「彼(彼女)と接触する時間には限りがあります。必ずここへ戻るように。」
「………。」
あなたは杖をつきながら箱型の機械の中へ入ります。箱の外では白衣の男がにこにことした表情で立っています。目を瞑り、心を落ち着けたあなたは機械のスイッチに手を伸ばしました。スイッチが起動した瞬間、天井の赤い宝石が輝き出し、視界がぐるぐると暗転します。ここでKPは探索者に何か一言、呟いてもらいましょう。これから起きることへの不安でも覚悟でも構いません。そして、精神がぐちゃぐちゃにされるような不快感を覚えたのち……意識が遠のいていきました。
(エンドD「お還りなさい」)
■最後に
今回はクトゥルフ神話TRPG「オカエリナサイ」を遊んでいただき、誠にありがとうございました。
このシナリオは初めて書いたTRPGのシナリオです。なので、分かりにくい場面が多くなってしまったかもしれません。「こういうことするPLいるんだけど、シナリオに書いてないよ!」っていうことがあれば、そこはKPたちにお任せします。
このシナリオのテーマについてですが、「自己犠牲」だと分かると思います。シナリオの構成上、PLは自分が犠牲になるよう動かなければいけませんからね。え、そういうのしたくない……と思うPLもいるかもしれませんが、それも全然ありだと思います。全体を見たら気が付きますかね?この「自己犠牲」、なんとなく「エゴ」っぽいんです。ようは命の押し付け合いですね。生き残った方は結構辛い感じになっていると思います。生き残ることが辛いと分かっているくせに、相手に生きることを強要させているんです。そう思うと、ちょっとこのシナリオの見方が変わるんじゃないでしょうか。
リプレイの投稿は許可しております。
シナリオの大幅な改変はご遠慮ください。