第三話 感染症には気を付けよう
どうもこんにちは。桂木壮馬です。
今日はね、1学期中間テストの
順位付けされた総合得点が貼り付けられているっぽいんで、
暇つぶし(冷やかし)ついでに覗きに行こうかと思います。
ガヤガヤガヤ(ざわつく廊下)
おっと。もう廊下にはこんなにモブが群がっているではないか。
全く仕方がない。全科目(9科目)9割5分以上の俺が通る。
道を開けろ!!
「にしても凄いな一位の夏空螢って人。
全科目で満点取ったの、この学校では彼女が初めてなんだってさ」
は?
どういう事だ?
一位 夏空螢 900
二位 桂木壮馬 887
三位 太田一 875
「いっちゃんスゲーー!
今回のテストだけ見ても、非の打ち所がないっすね!」
「ふふふ、だろ?俺は天才肌っつうか?
勉強してなくてもそこそこ点は取れるわけよ」
うるさい。今は黙ってろいっちゃん。
お前の事など眼中にないが突如俺の前に障壁として出現した
忌むべき存在。そして....
「おはよう壮馬!朝から何でこんなに騒がしいの?」
「アレ、アレ....」
「何でカタコトなのか分かんないけど。あぁ
この前のテストの結果ね!やった1位だ!!」
「ハハハ。ヨカッタネ!オメデトウ!」
「ありがとうって言いたいとこなんだけど。
なんか全然祝われてる感じがしないわ......。
あっ、壮馬は2位じゃない?おめでとう!」
「エヘっ。ガクネンイチイニホメラレルナンテ、コウエイダヨ」
『うぉおおお。見てあれ!この学校のTOP3が同じ空間に居るぞ!!』
あぁ、不貞腐れてうじうじしていたら、周りのモブが騒ぎ出した。
もう一々モブが騒ぐと表現するのもどうかと思うから、
今後は”モブり出した(モブが騒ぐの造語)”の一言で済まそうと思う。
まぁとにかく、俺は注目を集めるのと、人混みの中にいるのが
大嫌いな性質なので、逃げるように教室内に逃げ込んだ。
何故かは知らないが、螢も後ろをついてきた。
「良いの?あの歓声を浴びてこなくて?」
「何それ嫌味?第一私は目立つ為に勉強をしてるわけじゃないの」
「ふーん。じゃぁ何の為に?」
「それはね、この学校の生徒会長になるためよ!!
毎年9月に候補者演説があるんだけど。会長に立候補するのは
大体2年生だから、彼らに勝つには今から色んな方面で実績を
残さないといけないの!」
しょうもな。
「なるほどね。確かに生徒会って、漫画とかアニメだと
青春とか権力の象徴として書かれてる節があるけど。
実際は無能な教職員が自己保身と現状維持のために
あれはダメこれはダメとか色々口出ししてきてさ。
結局何も出来なくて次年度の候補者にやってる事が不透明
とか立会演説で言われるのがオチなんだよ。
まぁそれでも自己満足でやるってんなら、どうぞご自由に」
以上中学校時代の実体験。
当時演説で話した内容が、今でもたまに夢に出てくる。
何とか当選はしたがもはや黒歴史でしかない。
螢に同じ轍を踏ませるのは少し可哀想だ。
「じゃあやる」
え?
「話聞いてた?」
「うん。細かい事はよく分かんないけど。
私は楽しそうだと思ったから、やる」
「あ....」
ここで彼女に否定の言葉を投げかけるのは、
何だか失礼な気がした。愚直に、
そして一途に目標に向かっていける人間は美しい..と
「ちょっと、何で顔赤くなってるの?」
「え??」
あれ??確かにさっきから妙に暑い。
汗も尋常じゃないくらい出るし、頭も痛い。
テストの件で忘れていたが、
今日は確かに起床した時から体調が悪かった。
「ごめん。熱あるっぽいし、先帰るわ」
「え??え???」
当日、病院に訪れたものの結果はただの風邪。
頭痛薬と解熱剤を処方され、
2、3日安静にしろとのお達しが下された。
初日で症状は軽くなったので2日目に勉強をしまくったが最後、
その日の夜に再び重症化し、結局3日休む羽目になった。
4日後
「螢が休み!?どういう事だよ茜?」
今朝、いつもみたいに背後から生のオーラを感じなかったので
可笑しいと思ってはいたが案の定欠席していた。
そして現在、螢の友達?の本田茜(誕生日パーティーの人)
に、事実確認を求めている。
「何か風邪引いてるっぽいよ。
それよりさ、何でいつも勉強しかしてない君が、
そんなにがっついてんの?」
まずった。と思った。
茜さんは明かに警戒するような顔でこちらを見ている。
俺の一挙手一投足を隈なく監視するような。
というかそれ以前に、何で俺はこんなに必死になっていたんだろう。
他人が休んだとかどうでも良いだろ。
「ごめん。やっぱなんで..」
「なーんてね?」
は?
「螢から君の事は良く聞いてるよ。
ガリ勉で理屈っぽいのに、メンタル豆腐で
意外と抜けてるとこがあるって」
は?は?
「やっぱ気になる?家教えてあげるから、
お見舞いにでも行ってあげたら」
「い、行かねーし..」
「照れてるー!可愛い!!」
屈辱。俺は今、耐え難い屈辱にさらされている。
腹の奥からドス黒い怒りが湧き上がってきた。
まずい。早くこの場から立ち去らないと、多分俺は泣く。
ピロン
「あれ....」
着信音は、俺のスマホからした。
と同時に目を疑った。通知の主が、今日欠席している
人からのものだったからだ。
『壮馬に風邪うつされた。
学校終わったら家きて看病して
(アドレス)』
まぁ何だろう。俺のせいでっていうのなら話は別だ。
次回、ハラハラ(ドキドキ)魔境(螢の家)探索編スタート
生徒会の話は実話?それとも妄想?